悪趣味大会
ゲオルクとラーダ、オジさんの三人は、クラーマーをはじめとする兵士達に囲まれて、別室の尋問部屋に通された。
そこは城内の角、城壁沿いの一角に作られた部屋。中には小さな空気孔があるくらいで、昼でもかなり薄暗く、松明やランプの灯りがないと全ては見渡せないような場所だった。
そして部屋はたいして広くもないので、兵士達は部屋の外で待機となった。
問題はその部屋の中央、天井から太い縄がぶら下がっており、尋問を受ける人間は、その縄に両手を縛られて、鞭打ちをされるのが通例だった。
ゲオルクは当然その事を知っている。
そして、この縄を縛られるのが誰になるのか? それが気がかりになっていた。
「さあ、どなたを縄で縛りましょうかねえ~♪」
クラーマーは満面の笑み。
着いてきた大司教と補佐司教は、その顔を見て苦い顔をし、ゲオルクは困った顔を見せ、ラーダは完全に怯えきって腰が引けてしまっている。オジさんは変わらない。
「まあ~……僕が縛られましょう」
ゲオルクは自分から志願した。それを待っていたかのように、クラーマーは悪魔の笑みを更に深めた。
「いやいやいや、ワタクシの思ったとおり! ゲオルクさんが、そこの女をかばって自ら志願するとね! でもそうなった場合、あなたはどれだけ鞭打ちをされたトコで、何も言わないでしょう! という事で縄に括られるのは、そこの女ーーーーっっ!」
クラーマーはそう言うと、思いっきりラーダを指差した。
「ヒイイイイイイっっ!」
ラーダは思わず悲鳴をあげ、泣き始めた。その時、プッツンした大司教がクラーマーの顔面を思いっきり殴り、その衝撃でクラーマーは壁まで吹っ飛ばされた。
「テメエ! 黙って見てればさっきから気持ち悪いんだバカヤローッッ! 女にそんな手を出して楽しいかコノヤローッッ!」
さすがにまずいと思った補佐司教が「落ち着いて落ち着いて」と大司教を押さえに入った。
「あ、ああ~~っっ! 二度もワタクシを殴りましたね? このドミニコ会異端審問官のこのワタクシを!」
「知るかバカヤローっっ! こんなのただの悪趣味大会じゃねえか!」
大司教はもう堪忍袋の緒が切れまくって止まらない。しかしこのままではホントにまずいと補佐司教が宥めに入った。
「まずいですよ大司教。本当にここは押さえて。もう同席するのはやめましょう。さあこちらへ」
補佐司教は半ば強引に大司教と尋問部屋から出ていった。
「テメエ! 女に手ぇ出したら、ただじゃおかねえからなあーーっっ!」
大司教の怒号は、尋問部屋を出た後からも聞こえたが、その後は静かになった。
こうして尋問部屋は、クラーマー、ゲオルク、ラーダ、オジさんの四人となった。
「はあ~~……っっ。大司教があんなに激昂するなんて、全くっっ」
顔の右頬は真っ赤になり、鼻血も出始めたクラーマーは、フラフラになりながらも何とか体勢を整えた。
そんなクラーマーを見たラーダはオジさんにしがみついて怖がり始めた。オジさんは変わらない。
ゲオルクもかなり冷静で、
「なあクラーマーさんよ。しばらく休憩した方が良くないですか?」
と声をかけた。
「いや、いや、大丈夫。できます。できます」
「でも、目も虚ろだよ?」
「大丈夫です! やります!」
クラーマーは半ば意地になって答えた。
「じゃあ……ほれ」
ゲオルクは平常心で両手をクラーマーに差し出した。
「ま、まあ、そうですね。あなたを縛りましょう」
そういう訳で、ゲオルクは両手を縄で縛られ始めた。その間、ラーダとオジさんは心配そうにゲオルクを見つめた。
ゲオルクは両手を差し出しながら、空気孔を眺めていた。
なんか、暗くなったな……もう夜なんじゃないのかな?
今回もここまで読んで頂き、本当にありがとうございます!
現在のホーエンザルツブルク城では拷問部屋と拷問道具の展示を行っているそうですが、どうやら実際には使われなかったらしいです。
では次回も尋問部屋の続きですので、宜しかったら是非読みに来てくださいませっっ。
では今回も本当にありがとうございました!!




