四章 戦闘魔法解禁
基礎訓練を続け3か月がたった。訓練兵のみんなは最初のころより比べ物にならないこと成長していた。
今日も同じ訓練をこなし、さらに成長をしていくんだろうとみんなが思っていた。しかし、教官が発した言葉でみんなの考えが一変する。
「今日から魔法を使った訓練を行う。一般教養テストの後、魔法の座学を行う」とザイゲン教官は発した。
周りがざわめき始めた。何せ、今の今まで全く魔法に関係ない訓練を行っていたからである。
「まずは座学からだ。みな、教室に行くように」と教官が指示を出した。
「魔法の訓練なんてワクワクするわね!」とサクリが楽しそうにしていた。新しいことに触れることが楽しみなのだろう。
「いままで体験したことがないから余計に面白そうだよね」とアパルが告げる。アパルはとてもうずうずしているのが見ていて分かった。楽しみなのだろう。
「そうだな。難しそうだけど、すごく面白そうだよな」とオッフルは返した。どんな訓練か想像なのかが想像がつかなかった。
☆
一通り魔法の座学を行ったのち、全員グラウンドに出るように指示があった。実際に魔法を使った訓練を行うらしい。
みんながそわそわしているのを感じる。いつもクールな人たちでさえ、わくわく感を隠せずにいるほど楽しみにしているのがわかる。
「ジーニアス、めっちゃワクワクしてるやん」とジーニアスに声をかけるのはディーテルだった。
「……あなたのほうがワクワクしてるじゃない」と返すジーニアス。照れ隠しもあるのだろう。
「二人ともワクワクしてるの隠せてないぜ」というのはカムラッドだった。全員、お前には言われたくないと思っただろう。
「みんなワクワクしてるね」と呟いたのはフリューゲルだった。
「あなたもでしょリューゲ」とラピスラズリが返す。
「みんなワクワクすると思うわ!」とシャレルが言う。実際みんなわくわくしている。
ラピスラズリが「そうよ」と返した。
「私も楽しみです!」とヒューレンが3人に向かって元気よく返事をした。
とまぁ、みんな魔法の訓練をするということで浮かれているのがわかる。経験したことのないものはみんなワクワクするもんだ。
「では魔法の訓練を始める。全員これを受け取りなさい」と全員にあるものを渡す。きれいな水晶だった。
「これをどうするんすか?」とレクエルドが教官に質問する。みんなも同じことを思っただろう。
「これを持った状態でこう唱えるのだ【ネクサス・アクティベート】とな」と教官が返した。
刹那、ザイゲン教官から光を放ち瞬く間に武装をしているザイゲン教官がいた。右手には魔法使いの持ちそうな杖を有していた。
【これがネクサス体である。生身の体をその水晶に格納し、君たちの魔力でネクサス体を形成する。このネクサス体で戦闘を行うのだ】とザイゲン教官が述べる。
一同ざわついている。それもそうだ、俺もびっくりを通り越して何も言えずにいるのだから。
「すごい!」とサクリが口を漏らす。
「これで魔獣と戦うのか……」とアパルも興味津々そうだった。
【まずはみんなネクサス体に換装しろ。ネクサス体は生身とは少しちがう感覚だからそれに慣れる事だ】とザイゲンが言う。「はい!」と一同揃っていい、「ネクサス、アクティベート」唱えた。
☆
今日はネクサス体でいつもの基礎訓練をしただけだった。
しかし、驚く事に疲れが少ない。そう、生身と違ってネクサス体は疲れにくいのだ。
しかも、運動性能が上がっており、山道もいつもの倍以上の速さでゴールした。
……その分、いつもの訓練が3倍くらい量が増されていたが。
「ではネクサス体を解け。これから訓練中はネクサス体でおるように。それ以外は生身でいなさい。今日の訓練は以上だ」とザイゲンが言い、今日の訓練を終わるように告げて去っていった。
「すげーなネクサス体! めっちゃ疲れにくいし早く走れる!」俺は興奮していた。
まだ武器や魔法などはなかったので、外見は普通の見た目である。
「ネクサス体でも私の方が早いけどね!」とサクリは言う。
「うるせぇ、俺は運動ができねぇんだよ」とオッフル返す。
「それ、自慢になってないよ……」とアパルは言う。
ふとおかしくなって3人は笑ってしまった。
「相変わらず仲いいなお前ら」と声をかけるのはカムラッドだった。
「あなたとも仲良いわカムラッド!」と笑顔で答えるサクリ。
「ありがとうな。嬉しいぜ」とカムラッドは嬉しそうに返した。
「なんだよ~、私も混ぜろよ~」とだる絡みしてくるのはレクエルドだった。
「あなたとも仲良いわ! 心配しないで!」と元気よく返すサクリ。かわいいなと思ったオッフルだった。
「みんなと仲良いもの!」と恥ずかしげもなく宣言するサクリ。こういうところがサクリのいいところである。
その日はみんなでお風呂上りに牛乳を飲みながら、今後の訓練について話し合った。みんな楽しみにしているのがすごく伝わってきた。
☆
翌日、先日と同じように一般教養のテストを行った後、魔法についての講義を受けた。
オッフルやジーニアスなどは真面目に聞いていたが、勉強が嫌いなアパルやその他数名は退屈そうに聞いていた。まあ、アパルは体を動かすのが好きなので、実戦で覚えるタイプだと思う。
一通り魔法について学んだあと、ザイゲン教官が「百聞は一見に如かずという。皆グラウンドに出て実際に試してみなさい」とザイゲン教官は訓練兵に伝えた。
訓練兵たち、特に座学を退屈そうに受けていた者たちは、それはもう楽しそうにしていた。座学をまじめに受けていたものも楽しみな表情をしている。要するに、みんな楽しみなのだ。
☆
ザイゲン教官に連れられ、グラウンドに出た訓練兵21名。これから行われるのは実際に使う戦闘用の魔法である。
「まずはネクサス体を形成しなさい」と指示があった。皆口をそろえてこう告げる。【ネクサス、アクティベート】と。
刹那、周囲が激しく光りだす。21人同時にネクサス体に換装したのだ。
【よし、換装したな。今は訓練用のネクサス隊だ。全てのアビリティが入っている】とザイゲンが告げた。
【教官! 全部ってセットできるのは8つまでじゃなかったでしたっけ?】と質問するのはカムラッドだった。オッフルもそう思ったみたいだ。
【鋭いなカムラッドよ。そう、本来アビリティは右手に4つ、左手に4つの計8つしかセットできん】とザイゲン教官は説明する。
【訓練用のネクサス体は全て装備できる代わりにネクサス体への影響がない。つまりいくら攻撃しても相手のネクサス体を傷つけない仕様になっている】とさらに説明した。なるほど、ネクサス体への干渉を無くすことで全て装備できるだけの余裕を持たせていると言うわけか。
【とりあえず好きにやってみるといい。気に入ったものを後に使うと良い】とザイゲン教官は訓練兵に告げた。
訓練兵達は講義で習った魔法や武器を気になったものから試し始めた。
☆
【プリマーヤ!】とオッフルが叫ぶと、手のひらサイズの魔法の珠が出現した。
【おぉ! これはすごいな!】とテンションを上げながらオッフルが言う。
【えぇっと、ここから珠を分割するのをイメージして……せい!】と座禅の訓練を思い出しながら珠を分割する。次の瞬間、珠は4分割になり、四方へ飛んでいった。1つは自分に当たった。
【ちょ! まってくれ!】と慌ててしまうオッフル。これが訓練用じゃなかったらダメージを受けているだろう。
爆笑するサクリと笑わないように顔に手をやるアパル。
【お前ら笑ってるけどできるんか?!】とちょっと怒り気味に言った。
アパルもやりたかったのだろう。すぐに取り掛かる。最初はみんなこんな感じだろうと思っているので、そうしたら笑ってやろうと思っていた。
【プリマーヤ!】そう唱えると顔くらいのサイズの珠が現れた。アパルは何も言わずに4分割させ、正面方向の4箇所に弾を射出させる。弾は木に目掛けて飛んでいき、着弾する。
【うーん、狙ったところより少しずれてるかな】と少し首を傾げながら言う。こいつ、完璧に使いこなしてやがる。
アパルは頭こそあまり良くないが、運動能力やセンスが抜群にいい。いわゆる天才肌ってやつだ。軽く触っただけでプリマーヤの性質を理解し、ものの見事に使いこなしてみせたのだろう。
【次は私がやるわ!】とサクリが楽しみそうに言った。やりたかったのだろう。
【プリマーヤ!】と叫ぶサクリ。すると、サクリの体より大きい魔法の珠がサクリの背後に出現した。【【でっか!!】】とアパルと俺はハモった。いや、俺やアパルのと比べてデカすぎるだろ!
周囲でもざわつく声が聞こえる。みんなあんなでかい弾は出せてないのだろう。心なしかザイゲン教官すら驚いてるように見える。
【えっと、これで分割……とりあえず4分割でいいわよね!】と言い、綺麗に分割させてみせた。
【次は発射ね! 目の前にどかーん!】というと一箇所に目掛けて綺麗に分割された弾が飛んでいった。
【やったー! できたわ!】と誇らしげな顔をするサクリ。こいつも1発で成功させやがった……。
【お前らなんなの?】と普通に言ってしまった。いやほんとなんなの?
【でもこれ難しいよ。僕にはちょっと合わないかもね】とアパルは言う。
【完璧に使いこなしてたじゃねーか!】と俺は言う。
【使えてた方だとは思うけど、これ頭使いすぎて僕向きじゃないと思う。銃とかの方がいいし、なんなら二刀流の剣の方が体動かせるから合ってそうだなって思う】と言った。
確かに頭めっちゃ使うし、センスで使いこなせたとしても考えることはあるだろう。アパルには剣で戦う方が向いているのかもしれないなと納得してしまった。
【私はこれ面白いから使ってみたいわ! けど、剣と合わせて戦ってみるのも面白そうだと思うの!】とサクリが言う。
【魔法剣士みたいな感じか。魔力量やばいし魔法で死角とか消しながら戦うのは確かに強そうだな】と冷静に分析するオッフル。
オッフルはどうしようかな……と悩んでいた。運動が苦手だから剣は向いていない。なら魔法使いが向いているのかもしれないが魔力量も微妙な数値だ。まいこと折り合いをつけられるものはなんだろう……。
【僕は小型剣のアビリティを試してみるけど2人はどうする?】と提案するアパル。
【私も剣が欲しい! 西洋剣使ってみたいわ!】と楽しそうに言うサクリ。こう言うところが可愛いんだよな。
【オッフルはどうする?】とサクリがオッフルに聞いていた。オッフルは自分に合う武器はわからないが、近接は合わなさそうだなと分析していた。となると……。
【俺は銃を使ってみたいからライフルとハンドガン使ってみるよ】とオッフルは返した。
【銃の成績良かったもんね!】とサクリがオッフルに言った。オッフルは訓練で銃の扱いに関しては人並み以上にはできていた。
【なら、一緒に試してみようか】とアパルが提案し、2人とも納得した。
☆
ライフルは俺の戦闘スタイルに合ってるかもしれない。とオッフルは思った。
スナイパーは特別運動ができなくても務まるポジションだ。身を隠し、撃つべきタイミングで撃つ。これなら俺でも務まるかもしれない。オッフルそう思った。全体の状況把握とかも必要になるが、努力すればなんとかなるだろう。
ハンドガンは小型の剣と合わせることで魔力の消費を抑えながら戦うことができるのでそちらもありだが、近接戦は運動ができない人の領域ではないと考えた。
連携はチームの下の部分に合わせて行われるものだ。俺が近接で足を引っ張れば引っ張られたところで合わせることになる。それはチームに迷惑をかけるということになる。それならスナイパーとして戦況を把握し、撃つべきところで撃つのが自分には合っているのかもと思った。
サクリは西洋剣と盾の組み合わせに弾で隙を殺す戦術が気に入ったみたいだった。サクリの弾は異常にでかいので、分割数次第では隙は殺しやすいだろう。
アパルは小型剣2本のフルアタックって感じのスタイルを考えているらしい。アパルは運動能力がずば抜けて高い。その選択は合っているだろうと個人的にも思う。
2人はどんどん仕上がっている。俺はどうするか早く決めなければな……。
【よぉ、オッフル! 順調か?】と誰かから声をかけられた。振り返ってみたらカムラッドだった。
【練習中じゃないのか?】とオッフルは返した。
【今は小休止してんの。お前らが気になってな】とカムラッドは言う。
【カムラッド! 私はめっちゃ順調よ! 見て!】とサクリが切り込みながら後ろに作っていた魔法弾を横に射出している。
【クルヴァ!】そう唱え、弾を横に射出した。弾は弧を描くように目の前の木に目掛けて飛んでいった。衝撃が強すぎて、木が轟音をたてて倒れた。
【あれ?! さっきアパルが木にやった時は倒れなかったのに!】と困惑するサクリ。
【……お前の魔力が強すぎるんだと思うよ……】と返した。ザイゲンは手を顔に当てながら困惑している。アパルは小型剣をもう扱えていた。
【お前さん以外は順調そうだなオッフル】とカムラッドが言う。
【そう言うお前さんはどうなんだカムラッド】とオッフルが返す。
【俺は魔法使いへなることにしてな、弾の種類を確かめていた。数が多いから覚えきれん。難しいな!】とカムラッドは言った。
カムラッドが【クルヴァ!】と言いかなり大きい魔法の珠を作り出し、割って射出させた。
次に【プリマーヤ!】と言い同じく射出させ、【メテオ!】と叫んで前に飛ばした。着弾したときに爆発した。【アングル!】と叫び発射させる。弾は複雑な軌道をして飛んで行った。
【とまあこんなもんかな?】と言うカムラッド。だいたいできてんじゃねーか!
【お前、もう戦えんじゃね?】とオッフルは返す。
【そうか?まだまだ研究の余地はあると思うけどな】と言ってた去っていった。嵐のようなやつだ。
俺はスナイパースタイルでいいのかなと思いながら今日1日はライフルとハンドガンをひたすら練習した。




