特訓
1ヶ月前の夜の事
【俺にスナイパーのすべてを叩き込んでくれないか】と頭を深々と下げてお願いするオッフル。真剣な表情を浮かべている。
【ええよ〜】と軽く返答するディーテル。
あまりの軽さにオッフルが困惑する。
【いいのか? 俺が言ってるのは《《ライバルに手の内を明かしてくれ》》と言っているようなものだぞ】とオあッフルはディーテルに伝える。
実際そんなつもりは一切ないが、側から見たらそう見えてもおかしくないと俯瞰してみるオッフル。
【将来的には味方として戦うことになるかも知れへんやんか。それに、ライバルは強い方が訓練になるからなぁ】とディーテルは返した。
言っていることは何も間違えていないが、手の内を晒せと言われて即答でOKするのは彼女の懐の深い証拠であろう。
【ありがとう。なんとお礼すれば】とオッフルが言うが、ディーテルは【ならうちのこと狙撃で落としてくれるのが最高のお礼やな〜】と言う。
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それからオッフルは訓練後にディーテルとスナイパーの練習をするようになった。
【基本中の基本やけど、まずは撃ったら狙撃地点を変えること。スナイパーは居場所が知られると弱いから、狙撃地点を数発ごとに変えるんや】とディーテルがオッフルに説明する。
【なるほど……教官も言っていたけど、やはりそうなんだな】とオッフルは納得する。
【後は危険な状況で狙撃しないことや。近くに誰かいるのに狙撃したらすぐ倒されてまうからなぁ】と続けてディーテルが説明する。
【まあ、物は試しや。模擬戦しようか】とディーテルが模擬戦を提案してきた。
【模擬戦ってどうやってやるんだ?】とオッフルが疑問に思う。1発でも当たったらネクサス体が解除されてしまう。
【教官に模擬戦闘訓練用の洞窟使わせてもらえるように頼んだよ〜。だから何回撃たれても平気や】とディーテルが言う。
……これ、俺がやるべきことだったな……と反省するオッフル。そんなオッフルを【気にせんでいいで〜。うちもやりたかったし】と返すディーテル。心が広い。
【じゃあ、始めるで〜】とディーテルが合図し、模擬戦を開始した。
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模擬戦の感想を一言でまとめると、基礎ができていなかった。
言われたことを意識していても、癖が残ってしまう。
【まあ、最初にしては上出来や。これを続けていば一人前のスナイパーになれるよ】とディーテルが言ってくれた。
本当かなぁ……と思うオッフルだが、弱気になっている暇はない。数をこなすまでだ。
【もう一戦頼む】とオッフルが再戦を申し込む。
【そのつもりや。時間はあるし、いっぱいやろうや】と言ってくれるディーテル。
お人よしだなぁとか思いつつ、すごく感謝しているオッフルである。
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それから毎日、訓練の後は模擬戦をしていた。
一週間ほど経ったときのことである。
ディーテルの潜伏ポイントがわかるようになってきた。
【ここだ!】とライフルの引き金を引くオッフル。
しかし、ディーテルの『シールド』で防がれ、逆に狙撃されるオッフル。
【うちの狙撃ポイントを絞れるようになったのは成長やなぁ。でも、オッフル自身の狙撃ポイントがわかりやすすぎるのが問題や】とディーテルはアドバイスする。
あれからオッフルは一度もディーテルを狙撃できていない。
【くそ。でも、自分で言うのもあれだが、かなり良くなってきている気がする】とオッフルは自分の行動を思い返しながら言った。
【実際、かなり良くなっているで。うちの狙撃ポイント絞れてるんやし】と素直に褒めてくれるディーテル。
【もう一本付き合ってくれ。次は勝ってみせる】とオッフルがディーテルにお願いする。
この日もディーテルに一発も当てることはできなかった。
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2週間目の終盤のこと。
オッフルはディーテルの狙撃地点を割り出していた。
(今撃っても多分防がれる。動きがわかりやすい。多分誘われている)と冷静に判断するオッフル。狙撃地点を変えることにした。
ディーテルはあえてわかりやすい動きをして狙撃を誘っていたが、狙撃が来なくて考え直す。
(狙撃してこーへんか。成長したな)と考えるディーテル。
そして何よりの変化はディーテルがよく使う狙撃ポイントをオッフル自身も使うようになったことである。
(オッフルは何度も倒される度に成長しとる。うちも狙撃ポイントを変えた方が良さそうやな)とディーテルは狙撃ポイントを変えるために移動する。
お互い、『ステルス』を使いながらの模擬戦なので、相手を直視しないと位置がわからない。そんな中での戦闘のやり取りが行われている。
狙撃ポイントにつくディーテル。スコープから状況を俯瞰する。
あらかた狙撃ポイントを見たが、オッフルの姿が見えない。
(どこや?もしかしてさっきのポイントか?)と自分がさっきまでいた狙撃ポイントをみる。そこにはオッフルがいた。同じく戦場を俯瞰している。
ディーテルはオッフルを狙撃した。
狙撃されたオッフルは石板の前に戻され、ディーテルも一度自分を撃ち、石板の前に戻った。
【うちの使ってた狙撃ポイント使うようになってるやん。めちゃくちゃ成長したなぁ】と素直に褒めてくれるディーテル。ディーテルの本心である。
【いけると思ったんだけど、甘かった。すごい悔しい】ととても悔しそうな顔をするオッフル。今回はいけるかもと思ったのだろう。
【実際、かなりいけてたよ。見つけるの苦労したもん】と労いの言葉をかけるディーテル。本当に苦労していたので、素直に褒めた。
【ありがとう。もう一戦付き合ってくれ。次は負けない】とオッフルが再戦を申し込んだ。
【OK! ほな、いくで!】と意気込むディーテル。ディーテルもこの時間を楽しんでいる。
ここまでの勝敗はオッフルの0勝546敗である。
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特訓を始めてから1ヶ月が経った頃のこと。
オッフルが狙撃ポイントにつく。戦場を俯瞰する。
(ディーテルがいそうな場所にはいない……移動中か?)と狙撃ポイント以外にも目を向けるオッフル。ディーテルの姿を見つけた。
(これは誘われてるな。片手をすぐ使えるようにしてある。一旦様子をみよう)と考えるオッフル。かなりスナイパーとしての腕が鍛えられていた。
ディーテルが狙撃ポイントについたのを見て、撃つかどうか判断する。
ディーテルはスコープを覗いている。こっちにはまだ気づいていないだろう。
オッフルは引き金を引いた。それに気づいたディーテルだが、『シールド』では間に合わないと察し、ライフルで弾を強引に弾き飛ばす。
(そんなんアリかよ?!)とオッフルは思いながら狙撃ポイントを変える。
……フリをして同じ狙撃ポイントの近くで待機していた。
(オッフルが見当たらへん。どこや?)とディーテルが困惑する。
次の瞬間、ディーテルは狙撃され、石板の前に転送された。
オッフルも戻ってきた。
【やるやんオッフル! 初めて負けたよ! すごいよ!!!】とテンションが爆上がりのディーテル。負けの悔しさよりも、オッフルの成長に感極まっている。
【やっと勝てた……実感がないけど、勝てたんだ】とオッフルはキョトンとした感じで言う。
【1624戦もしたんやで!最初の頃とは比べ物にならないくらい成長しとるよ!!!】とディーテルがオッフルを褒める。
1624戦1勝1623敗。とても誇らしくはない。だが、これだけ負けた相手に、戦えるまでに成長している。
【そんなにしたのか……夢中になりすぎて覚えてないや】とオッフルは漏らす。
【それだけ本気だったってことや! うちは嬉しくてたまらんよ!】とディーテルが誰よりも喜んでいた。
【味方撃っちゃうとかはまだ克服してないかもやけど、スナイパーとしては一人前! これからの模擬戦闘訓練楽しみやわぁ!!】とまだ興奮がおさまらない様子のディーテル。
この1ヶ月間、献身的に教えたからか、オッフルの成長が自分の成長のように嬉しいのだろう。
【ありがとう。次の模擬戦闘訓練からスナイパーもやってみるよ】とオッフルがいう。
【今は別のスタイルやもんね!両方できると強いと思う!】とディーテルは言ってくれた。
オッフルの長くも短い1ヶ月はこうして幕を閉じた。




