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暁の銀嶺と黄昏の蒼  作者: 天野原 唯
51/110

051 帰還


 ラウドラチャクリンと何やら言葉を交わしていたイェライシャが黙り込んでしまったのにはすぐ気が付いたが、その理由には思い当たらないまま……俺達は自分達の目的地を目指していた。

 じきに大通りから少し外れた所にあるアルマンスール商会の看板を見つけ、やっと着いたという感慨に短い溜め息を漏らす。

 今回の旅は思ったよりも長くなってしまっている。

 予想外に随分といろいろな事があったので、戻ったら待っているであろうデスクワークに少しばかり嫌気が差して、思わず先程とは違う意味で再びため息が漏れた。


 大通りから一本引っ込んだ通りに、看板のある店舗部分がある。

 それを通り過ぎ、角を曲がった突き当たりが、裏庭兼厩に通じる木戸になっている。

 いつも通り、俺達の到着にあわせて解放されているそれをくぐったのは午後も遅く、間もなく夕闇が迫ろうと言う頃合いだった。

 この隊商の全ての馬を納めるにはとても足りない広さの厩に、今夜ここに留まる予定の者達の馬を優先的に入れ、残りの馬はその外側に繋ぐ。


 イェライシャが馬から降りるのを手伝い、ついでに彼女の荷物を降ろしていると賑やかな声に応じるかのように屋敷の扉が開き、見慣れた姿が現れた。

 ラトー・イズイード、普段から留守がちな俺とラウの代わりに実質的にこのアルマンスールの店を取り仕切らせている中年の男だ。

 自分達の馬の荷物を降ろしたり、鞍を外したりと賑やかな中を気にとめるふうもなく、ゆったりとした彼独特の歩み方で俺達の所までやってくる。


「お帰りなさいませ、お二人とも。ご無事なようで何よりですが……予定を過ぎてもお戻りではなかったので流石に案じておりましたよ」

 言葉の割りにはさして案ずるふうもないその男の言葉に、ラウドラチャクリンが笑みを返す。

 歯に衣を着せぬ彼の言動と立ち居振る舞いは、やんちゃな主の息子達に手を焼く監督役の使用人としてこの界隈では通用しているものだ。

「ただいま、ラトー。留守番ご苦労だったな」

「ファドラーン様もご無事で何よりですわい、さぁ中へどうぞ。おや、そちらのお方は?」


 労いの言葉をかけると、ようやくラトーは俺の隣に立っていたイェライシャに気付いたようだ。

 流石に彼女の異国の顔立ちを無遠慮に眺めるような事はしなかったが、明らかに興味を持ったという表情。

「バーラート経由の御客人だ。暫くはこちらに滞在して頂く事になると思うから、客室の準備を頼めるか? 改めて後ほどお前やサヤにも紹介しよう」

「お二人がお客人をお連れになるとは珍しい事ですな、早速用意いたしましょう。それまでは応接室の方でお待ち下され」


「俺が案内するよ」

 ラウドラチャクリンにそう請われたラトーがうなづいて、客を導くような素振りを見せたのですかさず俺が名乗りを上げる。


 瞬間俺に向けられたラトーとラウドラチャクリン、2人の視線が少しばかり痛い。

 一方は訝し気に、そしてもう一方は予測通りとでも言うような、いつもの微笑み付きだ。

 けれど街中に入って以来妙に黙ったままのイェライシャが気になってしまっていたから、敢えてそれを受け流す。

 馬から降ろしたばかりのイェライシャの荷物を肩に担いで、まだ事態に対応し切っていないイェライシャに手招きすると、屋敷の中へと扉をくぐった。



 幕間な感じで、短くてすみません。

 これを書いた時の自分、何考えてたのかな????

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