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暁の銀嶺と黄昏の蒼  作者: 天野原 唯
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041 気付くこと


「っ……まぶし……」

 ファドラーンに手を引かれてと言うよりは、半ば支えられるようにして簡易テントから出ると、既に太陽は高い所へと登っていた。

 ここ暫くは確かに恵まれた好天だったが、今日はそれよりも更に一際太陽がまぶしく見えるみたい。

 午前中だからなのかまだいつもの風は動いていないけれど、普段ならとうに出発している時間だわ。

 それでも私達が出てきたのが合図だったのか何人かが背後でテントの解体を始め、私は手慣れた手つきで片付けられてゆくそれを少し呆気にとられながら見つめていた。


「ゆっくり休ませてあげられなくて悪いね……今夜はきちんとした宿に入れるから、もう少し我慢してくれるかい?」

 そう声をかけられて振り向くと、いつも通りの笑顔のラウドラチャクリンが居た。

 確かにいつも通りのようなのだけれど、その微笑みの影に私を癒してくれた疲れの余韻、のようなものが感じられる気がして。

 申し訳なくて彼に頭を下げていた。

「ありがとう……ラウ。私なんかの為に……」

「なんか、は余分だよ。皆君の事を心配していたんだ……回復出来て良かったよ」

 後ろに立っていたファドラーンを見ながら彼はにやりとする。

 その如何にも意味在りげなラウドラチャクリンの微笑みに、すこしばかりふて腐れたような表情を見せて対するファドラーンを見ていると、どっちが年長なのか正直判らない。


 そして私は自分がラウドラチャクリンの「若い」外見に惑わされていのだと、ようやく思い当たったの。

 世の噂に曰く……『フィルダウスの民は不思議の力を持ち、……不老不死を得たる』と言うではないの。

 殆どは普通の人間だとファドラーンは言った。

 感情の動きや他の人を思いやる事の出来る優しさも、確かに私達と何の変わりも有りはしないわ。


 でもそれだけであんな伝説のような噂が一人歩きするものかしら。


 不老不死というのが大げさな表現だとしても、何かそれに匹敵する程の何かが有るのでは、と思えた。

 大国だと言われるクァーナが探索者を送り出そうとする程の。


 ふと顔を上げると、ラウドラチャクリンが私を見詰めているのと目が合う。

 彼にこの疑問をぶつけたとしても今はまだ答えてはくれないのだろうな、と思い付き何となく肩をすくめると、いつもの彼の優しい微笑みが肯定の意のようだ。

「イェライシャ!」

 そんなラウドラチャクリンの背後からファドラーンが呼んでいる。

 視線を向けると荷物を積んだ馬の脇で待っている彼が目に入った。他の者も荷造りを終えて馬の様子を見たり、既に跨がっている者も居る。 

 それに笑みを返すと、彼の待つ馬の方へと歩きはじめた。

 今日はもう彼の手助けを拒む理由も、その気もない。

 つまらない意地を張る必要は無いのだ。


 それが今は何より嬉しかった。


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