嫁ぐ準備をしよう
ひとまず、必要な品物を揃えてからリンブルフ辺境伯に嫁ぐ前に揃えておきたい。
ただ自由になるお金はないので、魔石を売ってみよう。
魔石不足とはいえ、どれくらいになるのか。
家にある宝石や調度品から、いくつか魔石を作ってみたのだ。
ただ、私みたいな小娘が売りに行っても、足下を見られるだけである。
家令に頼み、魔石を買い取る商人を呼んでもらう。
やってきた商人は、魔石を見て驚いていた。
「これは、すばらしい品質の魔石です! このレベルは、あまり流通していません!」
十個くらいの魔石を金貨三十枚で買い取ってくれるらしい。
「魔石がありましたら買い取りますので、どうかいつでもお呼びくださいね」
「ありがとうございます」
この金貨三十枚をもとに、いろいろ買い揃えてみよう。
メイドと共に向かったのは魔法商店。
ここにはさまざまな魔法が付与されたアイテムが販売されている。
店内には所狭しと、アイテムが並んでいた。
羊の角が生えた獣人の店員がやってきて、どういった品を探しているのかと聞いてくる。
「収納袋と、鑑定アイテムを探しておりまして」
「いいお品がございますよ」
収納袋は大量のアイテムを収納できる魔技巧品である。
「持ち運びに便利な、ポシェット型が入荷しておりまして」
五百アイテムほどが収納できるという。値段は金貨十枚。
なかなかするが、アイテムを持ち運ぶのに便利なので購入を決めた。
「鑑定アイテムについては、腕輪型と指輪型、眼鏡型がございます」
鑑定魔法は習得しているものの、いちいち展開させるのは大変なので、魔技巧品頼りにしたい。
魔法の制度が高いものは高価だという。
ここでお金を惜しんであとから悔やむ可能性があるので、高性能の鑑定アイテムを購入することにした。
「でしたら、こちらの腕輪型をオススメします」
魔力の充填は魔石でできるという。
その辺も便利だと思い、購入を決めた。
「こちらは金貨五枚です」
高い買い物になったが、のちのち役立つはずだ。
あとは、中央街で行われている蚤の市に向かった。
メイドは怪しんでいたものの、魔石の素材となるアイテムを入手する必要がある。
銀行商で金貨を細かくしてから向かった。
蚤の市ではありとあらゆる古い品物が安価で販売されている。
その中に、安価な掘り出し物があるのだ。
買ったばかりの鑑定腕輪で情報を常時展開させる。
いい魔石になりそうなブローチに耳飾り、スプーンやフォークなどの銀製品を次々購入し、収納鞄に入れていく。
百品目ほど購入しただろうか。
今日のところはこれくらいにしておこう。
帰宅後、魔石作りを開始したのだが、ある問題が発生した。
なるべく小さなアイテムを買ったつもりだったが、魔石工房に入らない大きな物もいくつかあった。
どうしたものか、なんて考えていたら、呪文の手引きが浮かんだ。
――自動吸収。
試しに使ってみよう。
「自動吸収・形成!」
すると、目の前にあったアイテムが魔石工房に吸収されていく。
なんて便利な機能なのか。これさえあれば、いちいちアイテムを入れて呪文を唱えるという作業を続ける必要がない。
魔石は箱から溢れていた。
目論み通り、すべて品質がいい魔石ばかりだった。
これらの魔石を再度商人に売って、金貨百枚を得る。
思っていた以上に、お金を得ることができた。
これらの資金で、魔技巧品を買っておく。
魔物避けのお香に、攻撃魔法のスクロール、守護魔法のスクロールに、魔法薬などなど。
あとは寒くないように毛皮製品を買っておいた。
リンブルフ辺境伯一家へのお土産も忘れない。
リンブルフ辺境伯ハルトヴィヒ様には、必ず命中する弓矢を購入した。
叔父夫妻には、魔石で灯りを点す魔法のランプ。
双子の姉妹には、王都で流行っている化粧品の詰め合わせに決めた。
喜んでくれるといいのだが……。
結界魔法の習得も、なんとか出発前に間に合った。
急遽、伝授してくれた魔法使いには感謝しかない。
そして――出発当日。
退院し、元気になった父が見送ってくれた。
「アウレリア、達者でな」
「はい……。お父様も、どうか健康にだけは気をつけて」
「ああ、わかっている」
リンブルフ辺境伯領より迎えがやってくる。
王都からリンブルフ辺境伯領まで、馬車で一ヶ月ほど。
長旅を覚悟していたのだが、やってきたのは車体を吊したワイバーンだった。
庭に下り立ったワイバーンの背中から、騎士が下りてくる。
すらりと手足が長く、マントを翻しながら着地した。
長い金髪を高い位置で結んだ、見目麗しい青年である。
カーリンが嫁いでいくときは、たしか馬車だったと言っていたような。
事情が変わったのだろうか?
騎士は私の目の前に片膝を突き、頭を垂れる。
「初にお目にかかる。私はリンブルフ辺境伯ハルトヴィヒ・ド・リンブルフだ」
なんと、あろうことか、夫となる男性がわざわざ迎えにきてくれたらしい。
父と共に驚くこととなった。




