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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第二章 アウレリア、二度目の人生

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嫁ぐ前に

 魔石工房マジリトス・ワークショップを使ってみよう。

 まず、どうやってつかうのかが問題である。

 ひっくり返してみたところ、裏面に古代語で使い方が書かれていた。

 そこには〝これは、この世に存在するすべての物質から、魔石を生成する奇跡。物質を中に入れたあと『形成フォルマーレ』と唱えよ〟とある。

 やはり、ただ入れただけで魔石を作れるわけではなかったようだ。

 ひとまず、真珠の首飾りを使って魔石を作ってみよう。

 蓋を開くと、ベルベットの内張がなされていて、底に魔法陣が描かれていた。

 そこに真珠の首飾りを置いて、蓋を閉じてから呪文を唱えてみる。


形成フォルマーレ!」


 箱全体が輝き、一瞬魔法陣が浮かび上がる。

 蓋を開くと、純白の魔石があった。

 キラキラ輝いていて、高品質の魔石であることがわかる。

 鑑定魔法で調べてみたら、もっと詳しくわかりそうだ。


「――見定めよ、鑑定アナライズ!!」


 呪文を唱えると、魔石についての情報が浮かび上がった。


 アイテム名:魔石

 属性:無

 ランク:★★★

 説明:高品質の魔石。高値で取引される。


 やはり、品質のよい魔石だったようだ。

 逆に、その辺で集めた石をかき集めて魔石を作ってみよう。

 先ほどと同じように魔法陣の上に置いて、蓋を閉めて呪文を唱えた。


形成フォルマーレ!」 


 ほんのわずかに光ったあと、魔法陣が浮かんだ。

 箱を開いてみると、砂粒のような物があった。

 これも鑑定で調べてみよう。


 アイテム名:魔石粉

 属性:無

 ランク:☆

 説明:魔石のなりそこない。たくさん集めたら魔石になるかも?


 なんでもかんでも魔石になるわけではないらしい。

 きっと物質に含まれる魔力が重要になるのだろう。

 ひとまず勉強になった。


 ◇◇◇


 継母は父が私のために用意していた持参金に手を付けてしまったらしい。

 父の怒りを買い、継母は離縁を叩きつけられていた。

 私は家令と手を組み、持参金については、わざと目に付く場所に保管していたのだ。

 それを、継母はまんまと使い込んでしまったわけである。

 あっさり離婚は成立し、継母は修道院に身を寄せることとなった。

 娘であるカーリンは他人事のようで、心配する素振りも見せていなかったという。

 薄情な娘だ、としみじみ思ったのだった。

 何はともあれ、今後、実家の財産が彼女に使い込まれるような事態を回避できた。

 父の体調は順調に回復しているようで、退院できる日も近いという。

 念のため、父には女性関係には気をつけるように、と言っておく。

 父は今後再婚などはせず、しっかり財産を守ることを誓ってくれた。


 ◇◇◇


 リンブルフ辺境伯領についても調べてみた。

 土地は国土の最果てにあり、高い山を越えた向こうは敵国。

 開拓かいたくは比較的新しく、三百年ほど前。

 開墾かいこんに至っては、百年前と歴史は浅い。

 一年のほとんどが寒く、冬は太陽も昇らず、厚い雪に覆われるという。

 高い山々の間に土地を作ったようで、風の通り道となっている。そのため、嵐が生まれやすい環境にあるようだ。

 凶悪な魔物が多く生息していて、気候も厳しい。

 本来であれば人が住めるような土地ではないようだが、敵国からの侵攻を警戒するために作られた、国の重要地点でもあるようだ。

 領民は百人ほど。わざわざ移り住みたいと望む人達はおらず、いるとしたらワケアリである。

 領主一家については、当主のハルトヴィヒ様は天涯孤独の身だというが、叔父一家が同居しているらしい。

 叔父一家は五十代の叔父夫婦に、十三歳の双子の娘が二人。

 ハルトヴィヒ様は魔物退治に忙しいらしく、屋敷を管理しているのは主にこの叔父一家だという。

 一度目の人生で彼らはカーリンとどう関わっていたのか。

 双子の娘達については、以前カーリンは「性格が悪い、いじわるな双子の姉妹がいる」なんて話していたのを覚えているのだが……。

 カーリンが相手だったので、そうなってしまった可能性もある。

 とにかく、彼らとは仲よくやっていきたい。


 一度、ハルトヴィヒ様様に手紙を送ってみよう。そう思って挨拶をしたためてみた。

 一年のほとんどを魔物退治に費やす、なんて噂話が流れていたので、返事なんてないかもしれない。

 そう思っていたのだが、半月後に返信があった。

 手紙には婚約を受け入れてくれたことに対する感謝の言葉と、リンブルフ辺境伯領がどのような土地であるかという説明、それから私を気遣う温かな言葉も書かれてあった。

 婚約者からこのような言葉をもらったのは初めてである。

 ハルトヴィヒ様は噂で聞いていたような、苛烈なお方ではないのかもしれない。

 手紙の返信と共に、毛皮が内張りされた手袋を贈り物として忍ばせた。

 叔父一家にも仲よくなれたらと思い、王都の菓子の詰め合わせを送ってみる。

 すると、ハルトヴィヒ様と叔父一家から感謝の手紙が届いた。

 忌避されているわけではないようなので、ひとまず安堵したのだった。


 ◇◇◇


 リンブルフ辺境伯領が大嵐に襲われるのは三年後――。

 それまでになんとか対策をしなければ。魔石工房マジリトス・ワークショップで何ができるのか、考えてみる。

 魔法を使うには魔力を必要とするのだが、魔法使いが持つ魔力には限界がある。

 どうすれば魔力消費が大きな魔法を使えるようになるのか。

 答えは簡単である。

 魔石を魔力に置き換えて、展開させればいいのだ。

 そう、魔石は魔力の代わりにもなりうるもので、魔法使いにとって重要なアイテムにもなるのだ。

 領土全体を守れるような巨大な結界を常時展開すればいいのだが、魔石がどれだけ必要になるのか。

 魔法使いの工房に足を運んで聞いてみる。

 するとたった数分展開させるのに、高品質の魔石が百個ほど必要になるという。

 現在、魔石は枯渇傾向にあり、購入するとしたら百個の魔石で金貨十枚ほどだという。

 大嵐が発生するのは三年後。どうにか作れるだろうか。

 続いて結界魔法が使える魔法使いを雇おうとしたのだが、勤務先がリンブルフ辺境伯領だと知るやいなや、難色を示されてしまう。

 三年後と限定してみるも、どうしてそのような雇用契約なのかと怪しまれてしまった。

 こうなったら、私が結界魔法を習得するほうが早そうだ。

 もともと補助魔法は得意で、結界魔法はその中の高位魔法に位置する。

 お金を払って魔法使いに弟子入りし、結界魔法を習得するように努めたのだった。

 

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