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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第六章 助けたい命

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ルイと村長

 改めて、危機一髪のところで助けてくれたハルトヴィヒ様に感謝の気持ちを伝える。


「ハルトヴィヒ様、危ないところを助けてくださり、本当にありがとうございました」

「間に合ってよかったよ」


 なんでも銀狼騎士隊の駐屯所へ戻ってすぐに、ルイの母親がハルトヴィヒ様に事情を話し、助けを求めたという。


「ルイの母親がいなかったら、すぐに駆けつけられなかったかもしれない」

「ええ……」


 グノー副隊長はルイの母親は執務室で休ませていると言っていた。

 けれどもそのままそこで休まずに、外で私達が戻っているのを待っていたという。

 やはり、母は強いのだ。そう改めて思った。


「こうしている場合ではありませんね。ルイのお母様に、無事を伝えに行かなくては」

「うん、そうだ」


 ひとまず私とルイはハルトヴィヒ様のワイバーンに乗せ、母親が待つ銀狼騎士隊の駐屯所に連れて行く。

 ブリーゼ様はまーちゃんを乗せ、大鷲で送ってくれるようだ。

 グノー副隊長をはじめとする騎士隊は馬で、ドワーフ族の職人達は戦車チャリオット、ジーンはルイの馬に乗って戻ってくれるようだ。


 ルイの母親は外で待っていた。

 騎士達の制止を振りほどき、下り立つワイバーンに向かって駆けてくる。

 ハルトヴィヒ様は先に着地し、ルイを下ろしてやった。


「ルイ!!」

「母さん!!」


 母子は抱き合い、無事を喜ぶ。


「ごめんなさい!! 俺、勝手なことをして!!」

「勝手だったのは私達のほうよ。あなたの望みを、ずっと叶えてあげられなくて……!」


 それから親子は涙を流し、互いを許し合う。

 親子の様子を見て、心からよかったと思った。

 その後、ハルトヴィヒ様はルイと母親を連れて村長の家を訪問する。

 村長はルイを見るなり、激しく興奮したように怒った。


「ルイ、お前は馬鹿なことをしてからに!!」

「お義父さん、ルイを怒らないでください!! もともとは、ルイの望みを叶えなかった私達が悪いのです!!」

「騎士になりたいという望みなど、叶えさせるわけがなかろうに!!」


 騒ぎを聞いて、領民達が集まってくる。

 いつの間にか大勢の人々に囲まれていた。


「ルイは物置に閉じ込めておけ! 考えを改めさせて、反省させろ!」

「考えを改めるのは、ルイではなくお義父様のほうです!!」


 ルイは大人達のケンカに怯んでいなかった。

 それどころか、一歩前に出て物申す。


祖父じいちゃん、そろそろ気付くべきなんだ。ここで平和に暮らせるのは、銀狼騎士隊のおかげだって」

「お前、子どものくせに生意気な!!」

「生意気じゃないよ。本当のことを言っただけだ」

「毒されよってからに!!」

「違う」


 感情のままに言葉を発する村長とは違って、ルイは冷静に、諭すように話す。


「祖父ちゃん、もう何年も、畑仕事をしていて魔物に襲われている人がいないことに、気付いているだろう? 昔は、大勢死んでいたって」

「……」


 日々もたらされる平和は目に見えない。

 けれどもしっかりと、目に見える部分はあるようだ。


「通いの商人達も、以前と比べて魔物が少なくなったから、頻繁に来てくれるようになった」 


 他にも家畜が魔物に襲われることがなくなったり、近くの川に釣りに出かけられるようになったり、と魔物が減少したことによって得た恩恵は数多くあるようだった。


「祖父ちゃんが川魚はごちそうだ、昔は魔物が多くて獲りに行けなかったって言っていたの、俺、しっかり覚えているよ」


 村長もしっかり騎士隊の恩恵にあずかっていたようだ。


「祖父ちゃんは父さんのことを、無駄死にだなんて言ってた。でも違う。父さんが騎士として戦ったから、今の平和な村があるんだ!」


 ルイはまっすぐ村長を見て、自分自身の考えを述べた。

 村長が言葉を失っていたら、ルイに加勢するような声が聞こえた。


「そうよ、ルイの言うとおりだわ!」

「以前に比べて、ここはずっと暮らしやすくなった!」

「騎士達のおかげよ!」


 皆、口々に自らの思いを叫ぶ。

 ずっと言えなかっただけで、領民達は騎士隊の活躍を把握し、感謝していたようだ。

 それらを弾圧していたのは、村長だったのだろう。


 完全に多勢に無勢だった。


「轟の谷にウインド・リーフを採りに行く度胸試しだって、祖父ちゃんが騎士になりたいって言う父さんに対して課した無理難題だって聞いたこともある」

「そ、それは……!」

「轟の谷にあるウインド・リーフは、この土地を守る精霊様が大事にしているものだったんだ。それを採ってくるように言うなんて、知らなかったとはいえ、精霊様に対する冒涜だ」


 轟の谷に行ってウインド・リーフを採ってくる度胸試しは、村長が考えたものだったなんて。

 荒野の荊が増えた影響で商人は迂回して村に通わなくてはならなくなり、ここ最近は物価が上昇していたという。 

 それを聞いた領民達が、村長を責め始める。

 暴動にならないよう、ハルトヴィヒ様が領民に熱くなりすぎないように注意した。


 味方だと思っていた領民が敵に回り、村長の勢いは削がれていく。

 そして最終的に、村長は皆の前で頭を下げた。


「わ、悪かった……!」


 許すかどうかは、ルイに委ねるという。

 皆の視線が集まった。


「今回は特別に、許してあげる」


 村長は安堵の表情を浮かべ、今後は考えを改めることを約束してくれた。

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