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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第六章 助けたい命

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ウインド・リーフ

 領民達が度胸試しをするために、ウインド・リーフを採りに来ていた。

 けれどもそれは、この地を守護する巨大ハリネズミにとって、大事なものだったのだ。


『ピイイ、ピイ、ピイイ……』


 なんでもここ近年は、根っこごとウインド・リーフを採れた者こそ、真なる勇者。

 一人前の証だと言われていたらしく、轟の谷のウインド・リーフは絶滅寸前だったという。

 巨大ハリネズミは警告するように、自らの棘で領民達が立ち入らないようにしていた。

 けれども領民達は増えていく荒野の荊をさほど気にも留めず、度胸試しとしてウインド・リーフを採っていったようだ。

 そして今日、最後のウインド・リーフをルイが採ってしまった。

 巨大ハリネズミは怒り、背中の棘で攻撃してしまったという。


「事情はわかりました。では、ルイさんにウインド・リーフを返すよう、お願いしますね」

『ピイイ……』


 巨大ハリネズミはもともと優しい性分なのだろう。

 ルイが返してくれたら、許してくれるという。

 声を張り上げ、大鷲の背に乗るルイに巨大ハリネズミからの言葉を伝える。


「ルイさん、そのウインド・リーフは、ここを守る精霊であるこの子にとって、大切なものらしいです。返していただけますか?」


 私の言葉を受け、ルイはわかったとばかりに手を振る。

 大鷲で接近し、ウインド・リーフを回収することは難しいだろう。

 どうやってすればいいのか、と思ったそのとき、方法を思いつく。


「――自動吸収オート・ドレイン!!」


 呪文を唱えると、ルイの手にあったウインド・リーフがこちらへ飛んでくる。

 それをしっかり受け取り、巨大ハリネズミに差しだした。


「どうぞ、ウインド・リーフです。こちらをお納めくださいませ」

『ピイ!!』


 巨大ハリネズミは嬉しそうな鳴き声をあげる。

 どうやら許してくれたようで、ホッと胸を撫で下ろした。


 このあとどうやって手渡せばいいものか。

 同時に、私はどうやって地上に降りたらいいのか。

 宙ぶらりん状態のまま考えていたら、驚きの変化が起こる。

 巨大ハリネズミが、突然姿を小さくしたのだ。


『ぴい!』


 かわいらしい声で鳴き、私の胸に飛び込んでくる。

 それを受け止めると、小さな鼻先をすり寄せてきた。

 なんて愛らしいのか。

 と思ったのは一瞬のこと。

 巨大ハリネズミの突き出た棘にぶら下がっていた私は、落下してしまう。


「きゃあ~~~~~!!!!」


 ブリーゼ様の大鷲は地上に着地してしまった。

 助けは間に合わない。

 ハリネズミがケガをしなよう胸に抱き、衝撃に備える。

 奥歯をぎゅっと噛みしめ、あとはケガが酷くありませんようにと祈るばかりだったが――。


「アウレリア!!」


 ハルトヴィヒ様の声が聞こえた。

 ワイバーンに騎乗した姿で、颯爽と現れた。

 両腕を伸ばし、私を受け止めてくれる。 


「夢みたい……!」


 うわごとのように呟くと、ハルトヴィヒ様がにっこり微笑む。


「アウレリア、よく頑張ったね」


 そんな言葉が返ってきた瞬間、これは夢ではないと確信する。

 ハルトヴィヒ様が私を助けにやってきてくれたのだ。


 地上に降りると、腰が抜けて立っていられなくなる。

 そんな私をハルトヴィヒ様はしっかり支えてくれた。


「ハルトヴィヒ様、ありがとうございます」

「うん、無事でよかった」


 ハルトヴィヒ様はそう言って、私を優しく抱きしめてくれた。


「アウレリア様!!」


 ジーンが元気いっぱいな様子で駆けてくる。

 それに続いて、まーちゃんやドワーフ族の職人、ブリーゼ様も続いた。

 ルイは少し遠慮がちにやってくる。

 ケガなどはないようで、ホッと胸を撫で下ろした。


「アウレリア様……迷惑をかけて、ごめんなさい」

「無事でいてくれて、本当によかったです」


 単独で轟の谷にやってきたことは、褒められたものではない。

 けれども彼は大人の問題に巻き込まれた被害者でもある。

 怒ることはできなかった。

 ルイはハリネズミにも謝罪した。


「精霊様も、大事なウインド・リーフを採ってしまって、ごめんなさい」

『ぴい』


 寛大なハリネズミは謝罪を受け入れ、ルイを許した。


「アウレリアよ、よくやった!! まさか、精霊に契約を持ちかけるとは、夢にも思わなかったぞ」


 まーちゃんとの一件があったので、契約について閃くことができたのだ。

 ドワーフ族の職人達は小さくなったハリネズミを覗き込み、「これが精霊様か……!」と感嘆するように呟く。


『アウレリア、この子の名前はなんていうの?』


 そういえば、命名をしていなかった。

 相手はこの地を守護する精霊様である。勝手に命名なんてしていいものかのか。

 一応、念のためお伺いを立ててみた。


「その、お名前を付けてもよろしいでしょうか?」

『ぴい!』


 もちろん、と返してくれる。

 ならばこの子は――。


「テール、というのはいかがでしょうか?」


 それは大地を意味する古い言葉である。

 気に入ってくれたのか、ハリネズミ改めテールは『ぴいい!』と嬉しそうに鳴いてくれた。


「一件落着かな!」


 ハルトヴィヒ様は最後の一言で締める。

 皆、ケガもなく、村に帰ることができそうだ。

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