リンブルフ辺境伯領の変化
それからというもの、変化は劇的だった。
村長は気持ちを入れ替えたようで、銀狼騎士隊への謝罪と感謝があったという。
騎士達は謝罪を受け入れ、感謝の言葉を喜んだ。
今後はハルトヴィヒ様を中心に銀狼騎士隊、村長、そして領民らを交え、騎士隊の在り方について見直すという。
これまでのような騎士隊は若い領民らを奪う悪しき場所だという先入観は捨てて、前向きな感情で話し合いたい、と村長側から打診があったようだ。
さらに、一日二回、村と銀狼騎士隊の駐屯所を行き来する馬車の運行も決まった。
騎士と家族が時間を作れるように、ハルトヴィヒ様が考えたという。
現在は予約制で、本数も限られているものの、希望者が多ければ運行を増やすという。
また住み込みで働く募集にも、応募が殺到した。
面接を経て、無事採用が決まる。
ひとまず、騎士舎を徹底的にきれいにしてもらいたい。
そして、ルイは騎士見習いとして入隊することが認められたようだ。
ジーンと共に稽古に励んでいる。
ルイの馬は久しぶりに騎士隊の駐屯所にやってきて、とても嬉しそうだった。
ここで意外な事実が明らかとなる。
なんと、ジーンの馬とルイの馬は夫婦だったらしい。
再会を果たした二頭の馬は、はしゃいだ様子で走り回っていた。
ここにも、ハッピーエンドが待っていたとは。
新たに仲間に加わったテールは私との契約を解除せず、一緒にリンブルフ辺境伯のお屋敷についてきた。
私との契約下にいれば、ウインド・リーフを必要としないらしい。
これまで十分な量を食べることができず、長年飢えている状態だったのだとか。
今、私からの魔力が供給され、久しぶりに満たされた状態だという。
帰ってきてからというもの体を丸めて眠っているが、ブリーゼ様曰く問題ないらしい。
「お腹いっぱいウインド・リーフを食べることができず、不眠状態でもあったのだろう」
「そうだったのですね」
しばらくすれば、元気になるだろうとのこと。
それまで、皆でテールを見守ろうと思った。
騎士隊の温泉の建設も開始となった。
ドワーフ族の職人達がやってきて、手際よく建てていく。
温泉が完成したら、魔技巧品のよさも伝わるに違いない。
まずはここから始めるのだ。
領民が行き来するようになってからというもの、騎士隊の駐屯所は賑わっている。
それはここだけでなく、村も明るくなったようだ。
なんでも騎士が休みのたびに、村に戻るようになったからだという。
これも村長が騎士の存在を認めたからに違いない。
そんな村の様子を、ハルトヴィヒ様と眺める。
「すごいよ、アウレリア……君が作った光景だ」
「わたくしの力だけではありませんが」
「そんなことないよ。長年、いくら頑張っても変えることができなかった関係が、いい方向へ流れていったんだ」
ハルトヴィヒ様は私の手を握り、にっこり微笑む。
「アウレリア、本当にありがとう!」
こうしてお礼を言われると、なんだか照れてしまう。
謙遜ばかりするのも相手の気持ちを否定するみたいになるので、今回ばかりは素直に受け入れようと思ったのだった。
◇◇◇
こうして大きな問題が解決したので、結婚式の準備に取りかかった。
残念ながら今は風が強いシーズンで、父をリンブルフ辺境伯領に招くことはできなかったのだ。
無理をすれば訪れることもできたのだろうが、父は病み上がりである。
今は安静にしてもらい、父の希望もあったので、王都でもう一度結婚式を挙げることとなった。
ひとまず今日は、領内での結婚式である。
ハルトヴィヒ様の伯父一家であるアンドリュースさんやアンナマリアさん、ルカエルとミカエルだけでなく、領民も祝福に訪れてくれた。
「アウレリア、こんなに領民達から祝ってもらえる花嫁は、君が初めてだよ」
「ええ、とても嬉しいです!」
皆の祝福を受けながら、リンブルフ辺境邸の庭で永遠の愛を誓う。
村に神父様はいないので、ブリーゼ様が神の代理人を務めてくれた。
「まったく、このような寒くて花も咲いていないシーズンに結婚式を挙げずともよかろうに」
「早くアウレリアと夫婦になりたかったんだ」
「はいはい、わかったわかった」
挙式のはじまりを告げる鐘が鳴り響くと、ブリーゼ様の表情がキリリと引き締まった。
ハルトヴィヒ様と私の結婚式が執り行われる。
ブリーゼ様は分厚い聖書を手に持ち、誓いの言葉を読み上げた。
「神に愛されし新郎、新婦よ。汝らに聞こうぞ」
ブリーゼ様はいつになく真面目な様子で、ハルトヴィヒ様に問いかけた。
「新郎、汝は家庭に愛と平和をもたらし、忍耐と和合、尊敬を持って妻となる者を支え、困難のさいは共に耐え、喜びのときは共に感謝し、永遠の愛を誓えるだろうか?」
「はい、誓います」
続けて、ブリーゼ様は私にも同様に問いかける。
「新婦、汝は家庭に愛と平和をもたらし、忍耐と和合、尊敬を持って夫となる者を支え、困難のさいは共に耐え、喜びのときは共に感謝し、永遠の愛を誓えるだろうか?」
「はい、誓います」
最後に、神に約束した言葉を永遠にするよう、誓いのキスが交わされる。
小鳥がそっと啄むような、優しい口づけだった。
「以上をもって、二人を夫婦として認める!」
ワッと歓声が上がるのと同時に、まーちゃんの背に乗ったテールが登場した。
ハルトヴィヒ様と私を祝福するように、『ぴいいい!』と鳴く。
すると、庭に美しい花々が咲いていった。
「まあ!」
この地を守護する精霊テールも、私達の結婚を祝福してくれたようだ。
『アウレリア、ハルトヴィヒ、結婚おめでとう!!』
「まーちゃん、ありがとうございます」
「ありがとう」
満たされた気持ちで、ハルトヴィヒ様と共に美しい庭と、参列してくれた人々を見つめる。
庭に咲く花々は美しく、皆、笑顔だった。
こんなに幸せな結婚式は他にないだろう。
ここにたどり着くまでいろいろあった。
くじけず、頑張ってよかったと心から思ったのだった。




