絶体絶命!?
依然として、振動は収まらず。
そもそもこれはなんの生き物なのか。地面と突き出た鋭い突起が生き物なんて、信じられない。まだ自然現象と言われたほうが納得できる。
けれどもブリーゼ様が生きていると言うので、間違いないのだろう。
それにしても、ルイはいったいどこにいるのか。
『ルイーーーー、どこーーーー!?』
まーちゃんは匂いで発見できないようで、ルイの名を叫び始めた。
私も続く。
「ルイさん、どこにいるのでしょうか!?」
返事はない。期待していなかったものの、焦る気持ちが募ってしまう。
『あ!』
「まーちゃん、どうかしまし――!?」
振動が止まった。
かと思えば、今度は地面が傾き始める。
ズズズズ……と音を立て、断崖絶壁の方角から地面が盛り上がっていく。
まるで、生き物が起き上がるような――。
突然足下が急斜面となり、立っていられなくなる。
そうこうしている間にも、地面が突起するように盛り上がっていた。
その場に倒れるだけに留まらず、崖から落ちるように体が宙に投げ出された。
視界いっぱいに、荒野の荊が見える。
このままでは落下した先で、荒野の荊に抱かれることになるだろう。
「きゃあ!」
『アウレリア!?』
地面にしがみついていたまーちゃんが、私のあとを追って飛び出そうとした。
このままでは二人揃って、荒野の荊に串刺しになってしまう。
何か打開策を――そう思った瞬間、ピンと閃く。
「まーちゃん、シルク・スパイダーの糸を荒野の荊に結びつけて、わたくしの胴と繋いでください!!」
『わかった!!』
まーちゃんは尻尾から太く長いシルク・スパイダーの糸を作りだし、太く長い荒野の荊に巻き付ける。
そしてそれをさらに伸ばし、私の胴に巻き付けてくれた。
「~~~~~~!!」
荒野の荊に突き刺さる寸前、落下していた体がピタリと止まった。
まーちゃんはシルク・スパイダーの糸にしがみついている。
なんとか間に合ったようだ。
心臓はばくばく。呼吸も荒くなっていた。
まーちゃんのおかげで、なんとか助かったようだ。
『アウレリア、大丈夫?』
「ええ、まーちゃんのおかげです」
『よかったあ』
まーちゃんのまったりした様子に、癒やされている場合ではなかった。
今まで私達が立っていた大地は、完全な断崖絶壁となっている。
ここで気付く。
私達がこれまで踏みしめていたのは、巨大生物の背中だったということに。
「まーちゃん、これがなんの生き物か、ご存じですか?」
『たぶんだけれど、ハリネズミ……だと思う』
「まあ!!」
まさか巨大なハリネズミだったなんて。
私達がやってくることによって、目覚めてしまったのか。
『アウレリア、上、見て!』
「あ、あれは――!?」
上を見上げるとはルイが高い位置に、私達と同じように宙ぶらりん状態になっているシルエットを発見する。
『ルイだ! 間違いないよ!』
「ああ!」
なんてことだ。ルイがあんなところにいたなんて。
まーちゃん曰く、荒野の荊と自身の胴にロープを巻き付け、落ちないような対策を取っているという。
助けたい気持ちはあるものの、荒野の荊は熱を持っている。
伝って登ることはできない。
どうしたものか、と考えていたらブリーゼ様の声が聞こえた。
大鷲に乗って、私達のもとへやってきてくれたようだ。
「アウレリア、マーリオン、大丈夫か!?」
「な、なんとか……」
『まーちゃんも大丈夫!』
「すまないが、あまり接近できない」
近づき過ぎると、大鷲の飛行が困難になるという。
シルク・スパイダーの糸を使って、どうにか大鷲に飛び乗れないか聞かれる。
『まーちゃんはできるよお』
「そうか!」
「でしたら、先にまーちゃんを連れて、ここより上層にいるルイを助けてもらえませんか!?」
ルイは必死に耐えているだろう。一刻も先に助けなければならない。
「ああ、ルイ少年はあんなところにいたのか」
ブリーゼ様は私の頼みを引き受け、先にルイを助けてくれるという。
「まーちゃんも、お願いしますね」
『うん、頑張る!』
大鷲は旋回し、私達がいる場所へ接近する。
ブリーゼ様は杖を突き出し、まーちゃんにシルク・スパイダーの糸を巻き付けるように指示した。
「マーリオン、今だ!」
『わかった!』
まーちゃんはシルク・スパイダーの糸を尻尾から放ち、ブリーゼ様の杖に巻き付けることに成功した。
大鷲はそのまま上昇する。
まーちゃんはシルク・スパイダーの糸にぶら下がった状態で、そのままルイの救出に向かうらしい。
『ルイーーーー、まーちゃんが助けにきたよお』
まーちゃんはそう言って、ロープに吊られた状態のルイに手を伸ばした。
ルイはまーちゃんに気付いたのか、必死に腕を伸ばす。
ついに、ルイの腕をまーちゃんが掴んだ。
ルイと繋がったロープは、ブリーゼ様の風魔法で断たれる。
無事、ルイを救出できたようだ。
ホッとしたのもつかの間のこと。
巨大なハリネズミだという物体が突然動き始めた。
「きゃあ!!」
私の体は大きく揺さぶられて、右に左にと揺れる。
『ピイイイイイイイイイ!!!!』
空気が震えるような、ハリネズミの咆哮が聞こえた。
すると、荒野の荊が発射される。
大鷲に乗っていたブリーゼ様はひらりと回避したようだが、私の目の前に荒野の荊の先端が迫り――!?




