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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第六章 助けたい命

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気づき

 先頭をグノー副隊長が進み、そのあとに二名の騎士が続く。

 次にドワーフ族の職人が私とジーンを囲み、ブリーゼ様が背後を守ってくれる。

 最後尾を進むのは、二名の騎士。

 まーちゃんはグノー副隊長の指名を受け、匂いでルイの気配を感じるために前方を歩いている。


『ルイの匂い、あるよ! だんだん濃くなってる!』


 もうすぐ、ルイを発見できそうだ。

 このまま何事もなく、ルイを発見できますように。

 そんなことを願いつつ、先を進んでいたが――。


「待て」


 先を急ぐ私達を、ブリーゼ様が静止する。

 グノー副隊長が振り返り、問いかける。


「デア・ブリーゼ様、どうかなさいましたか?」

「おかしい」


 ブリーゼ様は違和感を覚えているようだ。


「もう一度、上空からここの様子を確認したい。一度、馬がいる場所まで撤退してくれないだろうか」

「しかし、ルイの匂いはどんどん近くなっていると」

「ああ、わかっている。今は我々の安全も――」


 ブリーゼ様が言いかけた瞬間、地面が大きく揺れた。


「なっ――!?」


 皆が驚きの声を上げる中で、ブリーゼ様だけが冷静だった。


「やはりそうであったか」

「ブリーゼ様、これはいったい?」

「生き物だ!」

「え?」

「この突起した棘と、我々が踏みしめる大地は生きている!」


 信じがたい言葉だったが、固かった地面にやわらかさを感じるようになる。

 さらにどくん! と足下が震える。

 血が通っているような温もりを感じてしまった。


「撤退!!」


 グノー副隊長が号令をかけるも、揺れは続いている。

 まともに進めないような状況だった。

 そんな中で、ドワーフ族の職人達は振動をもろともせずに駆けていく。


「待ってろ、戦車チャリオットで迎えにきてやるから!!」

「安心しろ、やってきた道をきっちり走行するから、いなくなった少年を巻き込むことはない」

「俺達に任せてくれ!」

「お願いします!」


 激しくなっていく揺れに耐えきれなくなった私は、荒野の荊に触れようとした。


「――!?」


 けれどもすさまじい熱を放っているようで、慌てて手を引っ込める。

 ブリーゼ様の言うとおり、生きているのだろう。

 今までは眠っていた状態だったのか。

 わからない。


「ブリーゼ様、こっちだ!」


 ジーンはブリーゼ様の腕を掴み、荒野の荊が少ないほうへ誘導している。


『アウレリア!!』


 まーちゃんが私のもとにやってきて、傍についてくれた。

 遠くから「おらおらおら!!」「待たせたな!!」「こっちだ!!」という威勢のいい声が聞こえてきた。

 ドワーフ族の職人達が戦車チャリオットに乗ってやってきてくれたようだ。

 バリバリと音を立てて走行している。

 荒野の荊をなぎ倒しながら走ってきた。

 すると、荒野の荊の持ち主が痛みを感じたからか、さらに揺れが激しくなった。

 まず、ブリーゼ様とジーンが戦車チャリオットに乗る。

 ブリーゼ様が魔法で触手のようなものを作り、戦車チャリオットと繋いでドワーフ族の職人に引いてもらったようだ。

 続けて、グノー副隊長以外の騎士も戦車チャリオットに跳び乗る。

 私は場所が悪かったからか、身動きが取れないでいた。


「アウレリア様、こちらを使ってください!!」


 グノー副隊長が投げて寄越したのは縄だった。先ほどのブリーゼ様のように、戦車チャリオットにいるドワーフ族の職人に投げて乗るように言いたいのだろう。

 私にできるのか。

 いいや、やるしかないのだろう。


「グノー副隊長が先にどうぞ」

「いえ、私は先に進みます」

「そんな!」


 たしかにすぐ近くにルイがいる。

 けれども命の危機が迫っている状態で、探すべきなのか。

 ここでグノー副隊長が命を落としたら、余計に銀狼騎士隊への不満が爆発するだろう。


「グノー副隊長、戦車チャリオットに乗って、撤退してください! 命令です!」

「なっ――!?」


 ハルトヴィヒ様から預かった行使権を、ここで使わせていただく。


「ルイさんはわたくしにお任せください」

「そんな、アウレリア様……!」

「安心してくださいませ。わたくしはまだハルトヴィヒ様と婚姻関係になく、他人なんです」


 リンブルフ辺境伯夫人が命を散らせば問題になるが、私はまだただの婚約者。

 もしもここで死んだとしても、誰の責任にもならない。


「わたくしがここに銀狼騎士隊を派遣しました。その責任は、取らせていただきます」

「しかし」

「グノー副隊長、聞こえなかったのですか? 撤退です!」


 もう一度、戦車チャリオットが私とグノー副隊長の傍へ旋回してきた。

 乗れるとしたらあと一人。それから――。


「まーちゃん、あなたも」

『ううん、まーちゃんは、アウレリアと一緒だよ』

「まーちゃん、ありがとうございます」


 本当は怖くて、泣いてしまいたい。

 すぐにでも、この場所から逃げたいと思った。

 けれども轟の谷のどこかにいるルイは、私以上に不安なはずだ。

 すぐにでも見つけて、連れて帰らなければ。

 まーちゃんが一緒にいてくれるというので、自らを揮い立たせる。

 グノー副隊長へ縄を投げて、今ですと叫んだ。


「申し訳ありません!!」


 グノー副隊長は縄を投げ、上手く戦車チャリオット)のハンドルにかけることに成功した。

 グノー副隊長が飛ぶのと同時に、ドワーフ族の職人が縄を手繰り寄せる。

 見事、戦車チャリオットに乗ることに成功させた。


「一度、皆を連れて安全な場所へ!」


 そう伝えるとドワーフ族の職人は頷き、くるりと回れ右をして走って行く。

 私とまーちゃんは、ルイの捜索を再開させた。

 

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