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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第六章 助けたい命

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大捜索

 ルイが乗って行ったのは、騎士だった亡き父親が乗っていた馬らしい。

 ジーンの馬同様、二十五歳と年老いているという。

 長年農耕馬として使っていたようだが、ときおり昔を思い出すのか、若い馬顔負けの走りを見せるときもあるという。

 思っていたよりも進んでいないかもしれないし、張り切って遠くまで進んでいる可能性もある。

 そんな行動が読めない馬にルイは乗っているようだった。


 轟の谷へ続く道は、当然ながら整備なんてされていない。

 突起した岩が行く手を阻み、乾いた大地が振動を伝え、激しく泥が跳ねる。

 王都の周辺の整備された道しか知らない私にとって、衝撃の連続だった。

 初めての体験で心が、体が悲鳴を上げる。

 不思議と、王都にいるときよりも自分はこの地に生きている、と実感することができた。

 ドワーフ族特製の戦車チャリオットは絶好調のようで、ときおり騎士達の馬を追い越すことがあった。

 そのたびに、グノー副隊長から下がるように注意されていた。

 ドワーフ族の職人達は気持ちが高揚しているようで、出発してからずっと「いけいけ!」「おらおら」などと声をあげていた。

 ジーンやブリーゼ様、まーちゃんもその声に応えるように盛り上がっている。

 戦車チャリオットが皆をそうさせてしまうのか。

 私にはまったく理解できなかったのだが。


 リンブルフ辺境伯邸や銀狼騎士隊の駐屯所、村がある場所は比較的緑があったものの、この周辺は荒れ果てた広い原野が広がっていた。

 地面から突き出るようにして突起する岩は、〝荒野のいばら〟と呼ばれ、うっかり転んで串刺しになった事件も発生しているという。

 聞いただけで恐ろしくなる。

 この荒野の荊について、昔はなかったようだが、ここ数年で増えてきているという。

 きちんと調査はされていないようだが、強風で地面がめくれてできたのではないか、と言われているらしい。

 なかなか興味深い話である。


『あ!!』


 まーちゃんが何かに気付いたようだ。

 

「どうかしましたか?」

『ルイの匂いがするの、岩に縛り付けてあったの』


 まーちゃんの訴えを聞いたドワーフ族の職人の一人が、戦車チャリオットの停止を言い渡す。すると、操縦していたドワーフ族の職人は「おうよ!」と返事をし、戦車チャリオットを停車させた。

 さらにすかさず、もう一人のドワーフ族の職人が花火を打つ。

 すると先を走っていた騎士隊も走行を止め、こちらまで戻ってきてくれた。


「どうかしましたか?」

「グノー副隊長、ルイさんの私物と思わしきものを発見したそうです」


 高く伸びる岩の荊に、靴下が結ばれていた。

 確認してみると、ルイという刺繍が入っている。


「ルイさんの私物で間違いないようですね」

「ええ」


 おそらく道に迷わないように、こうして靴下を残していたのかもしれない。

 グノー副隊長は確認したあと、再度同じ場所に靴下を残しておく。


「もしかしたら行き違いになるかもしれませんので」

「そうですね」


 私はハンカチを取りだし、ルイにメッセージを残す。

 口紅を取りだし、〝銀狼騎士隊、ルイを捜索中、ここを動くな〟と書いた。

 魔物避けの聖水も周囲に撒いておこう。これで、ルイがここにやってきて、待機しても問題ないはず。

 ルイは確実に轟の谷を目指している。先を急がなければ。


「まーちゃん、お手柄です」

『えへへ、嬉しいなあ』


 騎士隊も敬礼し、まーちゃんの活躍を称える。

 もっと褒めちぎってあげたかったものの、時間がない。

 捜索を再開させた。


 景色が変わっていく。

 乾いた大地に、高い壁のように高くそびえ立つ岩壁が見えてきた。

 しだいに風が強くなっていく。

 向かい風を浴び、馬の速度も落ちていった。

 ここに来るまで一度しか休憩させていないので、疲れもあるのだろう。

 その一方、戦車チャリオットは強風をもろともせずに進んで行く。

 ドワーフ族の職人がグノー副隊長に向かって叫んだ。


「このままではルイ坊の発見が遅れる! 先に行くぞ!」

「はい、頼みます」


 戦車チャリオットがぐんと前に出る。

 そのあとを騎士隊の馬が続くこととなった。

 土煙を上げながら、戦車チャリオットは左右を高い岩壁に挟まれた荒野を進んで行く。

 ルイらしき人影は見つけられない。

 いったいどこまで行ってしまったのか。

 ここでジーンが身を乗り出して叫ぶ。


「ウインド・リーフのある場所、たぶんこの先にある断崖絶壁だ!」


 永遠に続くように見える道だったが、行き止まりになっているらしい。

 さらに険しく切り立った崖のようになっているらしく、そこにウインド・リーフが自生しているようだ。

 まーちゃんも身を乗り出し、くんくん風の匂いを嗅ぎ始めた。

 途中でハッとなる。


『ルイの匂い、するかも!!』


 ようやくルイに追いついたようだ。

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