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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第六章 助けたい命

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チャリできた

 轟の谷へは馬を駆って、二時間半くらいの場所にあるという。

 私は騎士隊で馬を借りる予定だったのだが、ドワーフ族の乗り物に乗るように言われた。

 ドワーフ族の乗り物とはいったい……?

 なんて首を傾げていたら、二輪で走るソリみたいな形状の乗り物でやってくるドワーフ族の職人達を発見した。


「アウレリア様、待たせたな!!」

「は、はあ」


 まーちゃんは瞳をキラキラ輝かせながら『すごーい、かっこいー』と喜んでいる。

 その言葉を受け、ドワーフ族の職人達は胸を張っていた。


「その乗り物は、初めて見ました。なんというのでしょう?」

「これは俺達の戦車チャリオットだ」

戦車チャリオット、ですか」


 彼らが言う戦車チャリオットとは、戦場を駆ける馬車だったような。

 馬は繋がれていない。代わりに先端に二本の杖のような物が差し込まれていて、それを握って操縦するようだ。


「これは素材を積むために、荷台キャリッジを大きくしてある。ジーン坊とエルフ族の商人も、一緒に乗れるぞ!」

「それはそれは、助かります」


 ジーンは馬に乗れると言っていたものの、正規の騎士ほど速く走らせることはできないだろう。

 追従が難しい場合は、ブリーゼ様の使い魔である大鷲にジーンも乗せてもらえばいいと考えていた。

 ただ、ジーンは戦車チャリオットに乗ってくれるだろうか。

 先ほど、自分の馬を引いてくると言って、走っていなくなったのだが……。

 ジーンが戻ってくる。少し俯きながら、しょんぼりと背中を丸めていた。


「ジーンさん、どうかしたのですか?」

「アウレリア様……俺の馬、爺ちゃんだから、騎士隊の外には連れていけないって言われたんだ」

「そうだったのですね」


 気落ちした様子を見せるジーンの肩を、ドワーフ族の職人の一人がぽんと叩く。


「ジーン坊、心配するな! 俺達の戦車チャリオットに乗せてやるから」

「ちゃり……おっと?」


 ジーンの背後にあった戦車チャリオットを振り返るやいなや、表情が一瞬でパッと明るくなった。


「なんだあれ!? かっこいい!!」

「お、その年で戦車チャリオットのよさがわかるのか?」

「わかる! すげえ、あれ、走れるのか!?」

「ああ、走れるとも」


 戦車チャリオットに乗ってくれるかという心配は、杞憂きゆうに終わった。

 続けてブリーゼ様もやってくる。

 もしかしたらブリーゼ様も、戦車チャリオットに乗りたがらないかもしれない。

 そう思っていたが――。


「なんぞあれは!? 初めて目にする魔技巧品だ!!」


 ブリーゼ様もジーンと一緒になって、瞳をキラキラ輝かせながら戦車チャリオットを眺めている。

 好奇心旺盛な二人でよかった、と心の奥底から思った。

 騎士達が集まってきた。

 皆、ドワーフ族特製の戦車チャリオットを見て驚いた様子を見せていた。

 最後にグノー副隊長がやってくる。


「私達が先導しますので、ついてきてください。難しい場合は、この花火を空に向かって撃ってくださいね」

「難しいものか。この戦車チャリオットは走り出せば、どの動物よりも速く走ることができるぞ」


 それを聞いて、乗るのが恐ろしくなる。私に耐えきれるだろうか。

 ただ、ルイのために急いで現地へ向かわなければならない。

 ありがたく戦車チャリオットに乗せてもらった。

 座席は思っていたよりも広く、座り心地もいい。

 体を固定させるベルトもあって、安全性もある程度確保されているようだ。

 ただ、体は剥き出しの状態で走るようである。うっかり振り落とされないように気をつけなければ。

 まーちゃんは私の足下に乗り込む。落ちないように、注意しておいた。

 その後ろにブリーゼ様とジーンが座った。


「では、出発!!」


 グノー副隊長の号令で馬が走り始める。

 それに続いて、戦車チャリオットが走り始めた。


「いくぞ、お前ら~~~~!!」

「おおおおおおお!!!!」

「いけえええええええ!!!!」

   

 独特なノリで発進となった。

 ずん!! と体が後方へ強く引かれる。

 だんだん早くなっていくのではなく、最初から全力疾走するようだ。


「~~~~~~~!?」


 何か言ったら絶対に舌を噛むので、奥歯をぎゅっと噛みしめて衝撃に備える。

 途中、突起した岩に乗り上げた。

 車体は大きく跳ねて右側に傾く。

 視界の端に地面が見えた瞬間、叫びそうになった。

 まーちゃんは楽しげな様子で、きゃっきゃと喜んでいた。

 ジーンも「おおおおお!」と声をあげているものの、怖がっている様子はない。

 ブリーゼ様も「ははははは!」と笑っていた。

 皆、平気そうで羨ましくなった。 

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