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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第五章 新たな問題

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村長との邂逅

 夜明け前にハルトヴィヒ様は魔物討伐に出かけてしまったらしい。

 知っていたら、見送りをしたのだが……。

 アンナマリアさんは突然魔物討伐に出かけるのはよくあることで、気にしなくてもいいと言っていたが……。

 ハルトヴィヒ様がいないとなると、途端に不安な気持ちに駆られる。

 不在中、何も起こりませんように、と祈るばかりだ。


 ◇◇◇


 挨拶もなしに求人を出して村の手を借りることは、よくないことだろう。

 やはり村長に会っておかなくては。そう思い、昨日と同じようにレニとまーちゃんを連れて村に向かった。

 今日も村の広場では、子ども達が楽しそうに遊んでいた。


「わあ、アウレリア様だあ!」

「まーちゃんもいるう!」 


 一瞬にして、子ども達に囲まれてしまう。

 まーちゃんは子ども達によしよしと撫でてもらい、お腹を上にして寝転がる。

 実に幸せそうな表情を浮かべていた。

 一息吐いたところで、子ども達から質問を受けた。


「アウレリア様、今日は何をしにきたの?」

「お仕事の募集?」

「いえ、今日は村長さんにご挨拶をしたいと思いまして」

「村長さんだったら、家にいるよ!」

「連れて行ってあげようか?」

「よろしいのですか?」

「うん!」


 お言葉に甘えて、子ども達に案内をお願いすることにした。

 みんなでワイワイお喋りしながら村長の家まで歩いて行く。

 子ども達のおかげで、緊張も少しだけ解れた。


「あの家が村長さんの家だよ!」

「呼んでくるね!」


 私の心の準備が整う前に、子ども達が村長を呼びに走ってしまう。

 止めようとしたときには、すでに扉を叩いていた。


「村長さーーーん!!」

「お客さんだよーー!!」


 村長が家から出てくる。

 白髪頭に立派な髭を蓄えた、六十代後半くらいの男性が出てきた。


「誰だ、こんな辺境に客なんて――」


 村長とバチッと目が合ってしまう。

 すかさず、私は頭を下げて名乗った。


「初にお目にかかります。わたくしは領主ハルトヴィヒの婚約者であります、アウレリア・ド・アルテンブルクと申します」

「お――お前か!!」


 脳天に雷が落ちたのでは、と思うくらいの怒号だった。

 子ども達は一瞬にして、怯えた表情を浮かべる。

 私はすぐにレニに目配せして、子ども達を連れ出すようにお願いした。

 レニは頷き、子ども達の手を引いていなくなる。


「村人を騎士隊で働かせようと目論むなど、許すことはできない!!」

「申し訳ありませんでした」


 こうなることはある程度予想できていた。

 それなのに、こうして怒鳴られてショックを受ける私がいたのだ。


「ただでさえ、若い力を騎士隊に奪われ、村はこの通り閑散としている!! すべては、領主一家のせいだ!!」


 ぐうの音も出ない、というのはこういう状況を言うのだろう。

 なんて言葉を返したらいいのかわからず、奥歯を噛みしめる。

 きっと何を言っても、聞き入れてくれないだろう。

 ここで、レニが戻ってきた。


「移民を従えたからと言って、村の者も従うと思うなよ!!」

「移民、ですか?」

「知らないのか? その女をはじめとする移民が、この村にはたくさんいるのだ!」


 なんでもリンブルフ辺境伯家のお屋敷で働く使用人は全員、さまざまな地方から移り住んできた移民だという。


「もしもこれ以上働き手が必要なのであれば、移民の手を借りることだな!!」


 村長は吐き捨てるように言ってから、家の中へ戻っていってしまった。

 ぎこちない動きでレニを振り返る。

 普段、クールな彼女だったが、少し泣きそうな顔で私を見つめていた。


「レニさん、今日は帰りましょう」

「ええ、そのほうがよろしいかと。ただその前に――」


 レニが移民の移住区へ案内してくれるという。

 向かった先は雑貨店や食堂、鍛冶工房など、暮らしに必要な施設が並ぶ通りだった。


「この辺りで商売をしているのは、ほぼ移民なんです」


 村人達はもともと、自給自足の暮らしをしていた。そのため、それらの施設を長年必要としていなかったらしい。

 レニの実家は食堂だった。

 今は両親と姉夫婦が力を合わせて営業しているという。

 食堂の扉には準備中という看板が下がっていたものの、レニは気にせず中へと入った。


「おやおや、まだ営業時間じゃ――レニじゃないか!」


 テーブルを拭きつつ振り返ったおかみさんは、レニの母君だった。


「そちらのお方は噂の、領主様の花嫁さんかい?」

「ええ、そう。アウレリア様です」

「どうも初めまして」


 挨拶していると、レニの家族がゾロゾロ出てくる。

 父君に姉君、お婿さん――皆、明るく元気だった。

 レニは少し恥ずかしそうな様子で、お茶とお菓子を用意するように言っていた。

 普段、無表情なレニだったが、家族の前では末っ子に戻るのだろう。

 彼女の新たな一面を見ることができて、嬉しく思った。

 お茶とお菓子が運ばれてきたあと、私はレニから移民についての話を聞くこととなる。  

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