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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第五章 新たな問題

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お誘い

 子ども達はジーンと同じくらいの年齢だろうか。

 大人達に囲まれて育ったジーンとは異なり、無邪気なものである。

 ジーンももしかしたら、この子ども達みたいに遊びたい年頃かもしれない。

 それを思うと、少しだけ胸が痛んだ。

 最初は子ども達とまーちゃんの遊びを見ているだけだったのだが、途中で誘われてしまう。


「アウレリア様も、一緒に遊ぼう!」

「わ、わたくしも!?」


 腕を引かれ、遊びの輪に誘われる。

 レニを振り返ると「行ってらっしゃいませ」、とばかりに頭を下げるばかり。

 やるしかないようだ。

 その遊びというのは、影踏みというもの。


「アウレリア様が、影を踏んでね!」

「おれ達は逃げるから!」

「影を踏んだら、アウレリア様の勝ち! 踏めなかったら負け!」

『アウレリア、頑張れ~~』


 いきなり大任を任されてしまう。

 子ども達の逃げ足は想像以上に速く、ドレスを着た状態では追いつけない。

 せめて乗馬服だったら……なんて思いつつも、負けてなるものかと子ども達を追いかける。

 子ども達が疲れたところを見計らって――捕まえた!


「わあ!」


 私もやればできるのだ。

 木陰で休んでいたまーちゃんも捕獲する。


『わーん、まーちゃんも、捕まっちゃったよお』


 あとは誰が残っているのか。

 なんて思いつつ周囲を見渡したていたらふと気付く。子ども達の母親がやってきていたことに。

 子ども達も気付いていなかったようで、「うわ、見つかった!」と言って走っていなくなる。

 この場に子ども達の母親が二名残された。

 気まずい空気が流れる。

 子ども達と本気で追いかける私を見て、変な人だと思われたかもしれない。

 このままでは不審者でしかないので、挨拶してみた。


「こんにちは、その……」


 怪しい者ではありませんと言おうとしたが、それだと余計に怪しまれそうだ。

 母親の片方は、先日魔技巧品の説明会に参加していた女性の一人である。

 目が合うと、気まずげな様子でいた。 

 いい機会だと思って、彼女らをお茶に誘ってみる。


「よろしければ、ここでお茶でも飲んで行きませんか?」

「ここで、ですか?」

「はい」

「いったいどうやって?」

「わたくしにお任せください」


 魔法の鞄からピクニックシートを取りだす。

 レニとまーちゃんが協力して広げてくれた。

 ピクニックシートの上に座り、二人にも勧めてみる。

 けれども戸惑いの表情を見せるばかりだった。

 どうしたものか、なんて考えていたら、先ほど逃げた子ども達が戻ってきた。


「わあ、何をやっているの?」

「ピクニック?」

「ええ、そうですよ。よろしければどうぞ」

「わーい!」

「おじゃましまーす!」


 子ども達は私のお誘いに応じ、ピクニックシートに座ってくれた。

 再度、母親達に勧めると、しぶしぶといった様子で腰を下ろす。


 魔法の鞄からスティック状のサブレを取りだす。一つ一つワックスペーパーで個装されているので、直接掴まなくても食べることができるのだ。


「お茶を淹れますね」


 その間、サブレを食べておくように言っておく。

 子ども達は嬉しそうに頬張り始めた。

 私は魔石ポットを取りだし、水筒に入れていた水を注いで湯を沸かす。

 レニはカップを並べ、茶葉を図ってくれた。

 一瞬で水は沸騰したので、子ども達は驚いた様子だった。


「え、何それ!?」

「魔法みたいにお湯が沸いた」

「これは魔技巧品という、魔法で作られたアイテムなのですよ」

「魔法だったんだ!」

「すごい!」


 沸騰した湯をポットに注ぎ入れ、しばし蒸らす。

 子ども達は魔技巧品に興味津々な様子だった。


「こんな便利な物があるんだなあ!」

「おれ達なんか、湯を沸かすだけでも、薪を集めて火を熾してって、大変なのに」


 魔技巧品があれば、その手間もかなり軽減される。

 男手が足りない村にこそ必要なのだ。

 母親達は魔技巧品の話を気まずげに聞いていた。

 おそらく魔技巧品に頼らない暮らしをするというのは、領民全体の考えだと決めてあるのだろう。

 私は敢えて母親達に魔技巧品を勧めることはせずに、ただお茶だけを飲むように言った。

 お茶は茶菓子すら拒絶されたらどうしよう……なんて思ったが、口にしてくれたので胸を撫で下ろす。


 子ども達やまーちゃんがわいわい話し、盛り上がっていたが、会話が途切れたタイミングで母親の一人が話しかけてきた。


「あの、アウレリア様は今日、どうしてこちらに?」


 魔技巧品の説明会に参加しているほうの母親だった。


「わたくしは今日――銀狼騎士隊の騎士舎で、住み込みで働ける人を探しにまいりました」


 それを聞いてハッとなったのは、子どものほうだった。


「ねえ、母さん! 父さんがいたところで、住み込みで働けるって!」

「でも、それは……」

「俺、やりたい! 掃除とかできるから!」


 まさかの、子どものほうが働くことを望んだ。

 もう一人の子どもも、母親に懇願する。


「父さんが働いていたところで、暮らしてみたいよ」

「俺も! だからお願い!」


 母親同士顔を見合わせ、困った様子でいる。

 この場で決めることは難しいだろう。


「一度、ゆっくり考えてください。また、ここを訪れますので」


 余ったサブレをお土産として私、私とまーちゃん、レニは屋敷へ戻ることとなった。

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