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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第五章 新たな問題

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帰還

 帰宅し、視察に付き合ってくれたレニやルカエル、ミカエルに休むように言っておく。

 ハルトヴィヒ様はまだ戻ってきていないようなので、銀狼騎士隊の騎士舎の調査結果をまとめておこう。

 まーちゃんははしゃぎ疲れたのか、暖炉の前で寝始めた。

 お腹を上にして、実に幸せそうな顔で眠っている。

 つい最近まで、野生で一人生きていたとは思えない無防備っぷりだった。

 まーちゃんが眠る姿に癒やされつつ、報告書を書いていく。

 そうこうしているうちに、休憩を終えたレニがやってくる。

 彼女は嬉しい知らせを運んできてくれた。


「アウレリア様、ご主人様がお戻りになりました」

「ハルトヴィヒ様が!?」


 ついに、ハルトヴィヒ様が魔物討伐から戻ってきたというのだ。

 知らせにやってきたレニと共に玄関まで迎えに行く。

 途中、すれ違った従僕にハルトヴィヒ様の部屋の入浴準備をしておくようにお願いした。

 長い廊下を心なしか急ぎ足で通り過ぎ、エントランスへと行き着く。

 ハルトヴィヒ様は――いた!

 重たそうな外套を従僕に手渡しているところだった。

 そんなハルトヴィヒ様は、声をかける前に私がやってきたことに気付いてくれた。


「アウレリア、ただいま!!」


 元気いっぱいな様子で言ってくれる。

 無事、戻ってきてくれたことを深く安堵しつつ、言葉を返した。


「おかえりなさいませ、ハルトヴィヒ様」


 ハルトヴィヒ様は私のところにやってきて、にっこり微笑んだ。


「アウレリア、会いたかったよ」


 初対面以外でこうして会いたかったと言われたのは、一度目の人生を含めても初めてだった。

 どういう反応が正解なのか戸惑ってしまう。

 きっと社交辞令なんかではない。

 ハルトヴィヒ様は心からそう思ってくれているのだ。

 ならば、私も心に浮かんだ気持ちをそのまま伝えるべきだと思った。


「そのようにおっしゃっていただけて、とても嬉しいです」


 素直な気持ちを打ち明けると、ハルトヴィヒ様はショックを受けたような表情で私を見つめる。


「あの、わたくし、何かおかしなことを言いましたか?」

「ううん、ぜんぜん! あまりにもかわいくて抱きしめたくなったけれど、魔物を討伐して汗だくになった体でそれをすべきでないと思ったから、我慢しなきゃって自分に言い聞かせていたんだ」


 そんなことだったのか、と内心思う。


「ハルトヴィヒ様、その、どうぞお好きになさってください」


 結婚前に二人きりでするのはどうかと思うが、今は使用人の目もある上に、喜びの抱擁であればなんら問題ない。

 なんて思っていたが――。


「ああ、アウレリア、惑わさないで! 汚い状態で、君に触れたくないんだ!!」


 ハルトヴィヒ様は「お風呂に入ってくる!!」と叫ぶと、走っていなくなる。

 嵐みたいな帰宅だった。


 ◇◇◇


 夜――ハルトヴィヒ様に加え、アンドリュースさんやアンナマリアさんと共に食卓を囲んだ。

 ルカエルとミカエルは私の背後に控えて、ときおり世話を焼いてくれる。

 そんな二人を見て、ハルトヴィヒ様は感心したように言った。


「ルカエルにミカエル、まだメイドに飽きていないんだね」

「当たり前よ!」

「天職なんだから!」

「そっか、ごめんごめん」


 ハルトヴィヒ様が不在中、彼らがどれだけの働きをしてくれたのか報告した。


「そうだったんだ、偉いねえ」

「きちんと真面目に働いているのよ」

「見くびらないでちょうだい」


 ハルトヴィヒ様とのやりとりを、アンドリュースさんとアンナマリアさんは微笑ましい表情で眺めていた。

 そんなふうに和やかなまま、食事を終えることができればよかった。

 すぐに銀狼騎士隊の現状について、アンドリュースさんが話し始める。


「というわけで、銀狼騎士隊の環境が劣悪なことが発覚したようだ」


 ハルトヴィヒ様は話を聞くやいなや、頭を抱え込む。


「予算は余裕があるように配分していたんだけれど、まさか内部がそんな状態だったなんて……」


 ちなみに年に一度、外壁の塗料を塗り直していたらしい。


「外観だけが綺麗で、中は酷いありさまだったんだ」

「住宅用塗料は高価ですので……」


 アンナマリアさんが呆れた様子で、「予算がきっちり使われていたから、きちんと運営されていると思っていたのね」と指摘する。


「というか皆、よくそんな酷い環境に文句も言わずにいたよね」

「泥沼に棲む魚のように、環境に適していたのだろう」

「そんなところで適応しないでほしいなあ」


 食事を終えたあと、再度集まって話し合う。

 報告書を読んだハルトヴィヒ様は、読み進めるにつれて眉間の皺を深くしていった。


「ひとまず補修はドワーフ族の職人に依頼するとして、問題は掃除かあ。隊員達にさせることはできるけれど」


 ただでさえ多くない隊員を、清掃活動に割り当てるわけにはいかないだろう。

 この件に関して、私はある提案をしてみる。


「領民の方々から、清掃員を募集するのはいかがでしょうか?」


 ハルトヴィヒ様は目を丸くし、私を見つめていた。

 

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