銀狼騎士隊
ルカエルとミカエルと共に、馬車で銀狼騎士隊に向かった。
ここで、到着するまで銀狼騎士隊についての話を聞くこととなった。
「まあ、一言で言えば、無法地帯よね」
「王都にいると思われる、お上品な騎士と同じ生き物だと思ったらだめよ」
魔物を相手にするだけあって、お行儀のいい騎士でいることは難しいという。
隊をまとめあげるのはグレイ・ハースト卿という、王都で騎士を務めていた六十代くらいのお方だという。
「ハースト卿はさすが王都の元騎士と言うべきなのか」
「きちんとされているお方よ」
なんでもハースト卿はハルトヴィヒ様の父君である、先代リンブルフ辺境伯が王都でスカウトしてきたお方らしい。
やんちゃな銀狼騎士隊の隊員達を教育させるために、わざわざ呼び寄せたのだとか。
「ハースト卿がやってきてから、少しは騎士達の素行もよくなったようだけれど」
「表面上はよくなっただけで、中身はそう変わっていないのよね」
ルカエルとミカエルは遠い目をしながら語っていた。
そんな会話をしているうちに、銀狼騎士隊の敷地内に到着する。
三階建ての宿舎があり、騎士達が待機する平屋建ての駐屯所も大きく立派だ。
広場では騎士達が訓練をしているようだった。
馬車から降りると、七歳か八歳くらいの少年がかけてくる。
格好からして、騎士見習いなのだろう。
「銀狼騎士隊へいらっしゃい! えーっと、誰?」
「初めまして。わたくしはアルテンブルク侯爵の娘であり、ハルトヴィヒ様の婚約者でもあるアウレリアと申します」
「――!?」
少年は口をあんぐり開き、私を呆然と見つめる。
そうこうしている間に、騎士達がわらわらと集まってきた。
「おうい、どこからやってきたお客さんだあ?」
「べっぴんさんじゃないか!」
「こんな小汚い場所に、なんの用事なんだ?」
好奇心旺盛な方々なのだろう。探るような眼差しを向けつつ話しかけてくる。
「おい、ジーン、この娘さんは?」
「えーっと、なんとかかんとかのあれで、あーー、なんだっけ? ハルトヴィヒ様の、えーーーっと」
「情婦か?」
三十代半ばくらいの騎士がそう言うやいなや、騎士隊は大笑いし始める。
「それのどこが面白いのですか?」
普段よりも声を張って言い返すと、シーンと静まり返る。
少し気まずい雰囲気にもなった。
「初めてお目にかかります、わたくしはハルトヴィヒ様の婚約者である、アウレリアと申します」
「お、おお。なんだ、婚約者さんか」
「そういや、そんな話があったなあ」
ハルトヴィヒ様が婚約者を迎えた、という話は銀狼騎士隊でも噂になっていたらしい。
「辺境の厳しい環境に耐えられる、屈強な女がやってきたと聞いたんだが」
「俺は魔物みたいな恐ろしい女だって聞いた!」
どこをどう勘違いしたら、そのような噂話が広がるのだろうか。
ため息がこみ上げるも、喉から出る寸前でぐっと堪えた。
「あんた達、黙って聞いていれば、ふざけたことばかり言って!」
「アウレリア様に失礼よ!」
ルカエルとミカエルが馬車から降りてきて、抗議の声をあげた。
すると、「やべえ、リンブルフ辺境伯家の悪魔双子じゃん!」と言って、蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。
「誰が悪魔双子よ!」
「失礼しちゃう!」
ジーンと呼ばれていた従騎士の少年だけが、逃げ遅れたようだ。
じりじり後退していったが引き留める。
「ジーンさん、ハースト卿のところへ、案内してくれますか?」
「は、はい、わかりました」
ジーンの案内で、駐屯所内にあるハースト卿の執務室に向かうこととなった。
駐屯所の内部は、掃除などされていないのか、汚いの一言だった。
ルカエルとミカエルは鼻を摘まんでいた。
それくらい、酷い環境なのである。
突き当たりがハースト卿の執務室だという。
ジーンが扉を叩くと、中から返事が聞こえた。
「入っていいって」
「ありがとうございます」
感謝の印として、キャンディをジーンにあげた。
すると「やったー!」と声をあげ、走り去る。
まだまだ子どもなんだな、とほっこりしていたら「入られよ」という声が聞こえた。




