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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第五章 新たな問題

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銀狼騎士隊

 ルカエルとミカエルと共に、馬車で銀狼騎士隊に向かった。

 ここで、到着するまで銀狼騎士隊についての話を聞くこととなった。


「まあ、一言で言えば、無法地帯よね」

「王都にいると思われる、お上品な騎士と同じ生き物だと思ったらだめよ」


 魔物を相手にするだけあって、お行儀のいい騎士でいることは難しいという。

 隊をまとめあげるのはグレイ・ハースト卿という、王都で騎士を務めていた六十代くらいのお方だという。


「ハースト卿はさすが王都の元騎士と言うべきなのか」

「きちんとされているお方よ」


 なんでもハースト卿はハルトヴィヒ様の父君である、先代リンブルフ辺境伯が王都でスカウトしてきたお方らしい。

 やんちゃな銀狼騎士隊の隊員達を教育させるために、わざわざ呼び寄せたのだとか。


「ハースト卿がやってきてから、少しは騎士達の素行もよくなったようだけれど」

「表面上はよくなっただけで、中身はそう変わっていないのよね」


 ルカエルとミカエルは遠い目をしながら語っていた。

 そんな会話をしているうちに、銀狼騎士隊の敷地内に到着する。

 三階建ての宿舎があり、騎士達が待機する平屋建ての駐屯所も大きく立派だ。

 広場では騎士達が訓練をしているようだった。

 馬車から降りると、七歳か八歳くらいの少年がかけてくる。

 格好からして、騎士見習いなのだろう。


「銀狼騎士隊へいらっしゃい! えーっと、誰?」

「初めまして。わたくしはアルテンブルク侯爵の娘であり、ハルトヴィヒ様の婚約者でもあるアウレリアと申します」

「――!?」


 少年は口をあんぐり開き、私を呆然と見つめる。

 そうこうしている間に、騎士達がわらわらと集まってきた。


「おうい、どこからやってきたお客さんだあ?」

「べっぴんさんじゃないか!」

「こんな小汚い場所に、なんの用事なんだ?」


 好奇心旺盛な方々なのだろう。探るような眼差しを向けつつ話しかけてくる。


「おい、ジーン、この娘さんは?」

「えーっと、なんとかかんとかのあれで、あーー、なんだっけ? ハルトヴィヒ様の、えーーーっと」

「情婦か?」


 三十代半ばくらいの騎士がそう言うやいなや、騎士隊は大笑いし始める。


「それのどこが面白いのですか?」


 普段よりも声を張って言い返すと、シーンと静まり返る。

 少し気まずい雰囲気にもなった。


「初めてお目にかかります、わたくしはハルトヴィヒ様の婚約者である、アウレリアと申します」

「お、おお。なんだ、婚約者さんか」

「そういや、そんな話があったなあ」


 ハルトヴィヒ様が婚約者を迎えた、という話は銀狼騎士隊でも噂になっていたらしい。


「辺境の厳しい環境に耐えられる、屈強な女がやってきたと聞いたんだが」

「俺は魔物みたいな恐ろしい女だって聞いた!」


 どこをどう勘違いしたら、そのような噂話が広がるのだろうか。

 ため息がこみ上げるも、喉から出る寸前でぐっと堪えた。


「あんた達、黙って聞いていれば、ふざけたことばかり言って!」

「アウレリア様に失礼よ!」


 ルカエルとミカエルが馬車から降りてきて、抗議の声をあげた。

 すると、「やべえ、リンブルフ辺境伯家の悪魔双子じゃん!」と言って、蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。


「誰が悪魔双子よ!」

「失礼しちゃう!」


 ジーンと呼ばれていた従騎士の少年だけが、逃げ遅れたようだ。

 じりじり後退していったが引き留める。


「ジーンさん、ハースト卿のところへ、案内してくれますか?」

「は、はい、わかりました」


 ジーンの案内で、駐屯所内にあるハースト卿の執務室に向かうこととなった。

 駐屯所の内部は、掃除などされていないのか、汚いの一言だった。

 ルカエルとミカエルは鼻を摘まんでいた。

 それくらい、酷い環境なのである。

 突き当たりがハースト卿の執務室だという。

 ジーンが扉を叩くと、中から返事が聞こえた。


「入っていいって」

「ありがとうございます」


 感謝の印として、キャンディをジーンにあげた。

 すると「やったー!」と声をあげ、走り去る。

 まだまだ子どもなんだな、とほっこりしていたら「入られよ」という声が聞こえた。

 

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