領民に魔技巧品を受け入れてもらえるには?
「ごめんなさい、こういうのはハルトヴィヒから聞くべきだったと思うのだけれど」
「あの人、たぶん話さないだろうから」
村長や領民との関係についてもそうだった。ハルトヴィヒ様は話そうとせず、黙りこんでしまったのだ。
「ハルトヴィヒ様はきっと、さまざまなことを自らの中に止めて、自分だけが頑張ればいい、耐えればいいんだ、と考えるお方なのでしょうね」
「そう!! そうなの!!」
「よくわかったわね!!」
ルカエルとミカエルが、瞳をカッと見開きながら頷いている。
やはり、ハルトヴィヒ様はそれとなく感じていた通りのお方のようだ。
「私らがどうしたのかって聞いても、なんでもないって言うのよ!」
「いつも変にかっこつけちゃって、弱みを見せてくれないの!」
身内に対してもその態度ならば、私には余計に弱みなんて見せないだろう。
「ハルトヴィヒに対して遠慮はいらないから」
「ぐいぐい踏み込むくらいじゃないと、きっと心をこじ開けることはできないと思う」
私にできるだろうか、と思ったものの、やるしかないのだろう。
ハルトヴィヒ様にばかり、辛いことを背負わせるわけにはいかない。
私達は夫婦になるのだ。
何事も、分かち合えるような関係でいなければ、夫婦でいる意味はない。
そんな気持ちを言葉にすると、ルカエルとミカエルは安堵したような表情で私を見つめる。
「ハルトヴィヒと結婚する女性が、アウレリア様でよかった」
「安心して、ハルトヴィヒを任せることができるわ」
まだ何も成し遂げていないというのに、ここまで言ってもらえるなんて。
彼らの期待に応えるためにも、慎重に計画を立てて実行に移さなければ。
ルカエルとミカエルにも、話を聞いてもらおう。
「これから魔技巧品の普及に努めていきたいと考えているのですが、現状、領民達の理解は得られないような状況で――」
何かいいアイデアはないか、聞いてみる。
「庭にある温泉施設を、村の近くに建てるのはどう?」
「魔技巧品の恩恵を感じられる施設だと思うけれど」
「温泉施設、ですか……」
ルカエルが領内の地図を広げ、空いている土地を指で示す。
「ほら、この辺とか畑からも近いし」
「帰りに立ち寄って、入浴もできるから」
「そう、ですね……」
ただ反対されている今の状況で、強引に計画を進めようとしたら、却って反感を買うのではないか。そんなふうに思ってしまう。
「たしかに、ある程度の強行突破みたいな方法は必要かと思うのですが」
見向きもされず、最終的に施設が無駄になるような気がしてならない。
「何かいいきっかけがあれば、受け入れてもらえると思うんです」
ただそれは、温泉施設ではない気がしてならない。
「まあ、たしかにそうかもしれないわ」
「他人に肌を見せるのも、抵抗ある人もいるでしょうしね」
新しい、未知のものに出会ったとき、何をしたら信じるようになるのか。
ルカエルとミカエルと一緒に考えてみる。
「やっぱり知らない人からの評判より、身内や親しい人の評判が信用できるわよね」
「たしかに! 村で魔技巧品に興味がありそうな人を集めて、試してもらうとか!」
彼らの見解は的確だった。
だが、魔技巧品に興味がありそうな人を調べる、という工程は時間のロスになる可能性も秘めている。誰もいない可能性だってあるのだ。
もっと手っ取り早く、魔技巧品が普及できるような対策はないのか。
テーブルに広げていた地図に目を落とす。
そこでふと、領内にある施設に目が留まった。
「銀狼騎士隊……」
ぽつりと口にした瞬間、ルカエルとミカエルが同時に叫んだ。
「そこだわ!!」
なんでも銀狼騎士隊の人達は忙しく、設備などにこだわっている暇はないという。
「だから、銀狼騎士隊に温泉を作ってしまえばいいのよ!!」
「きっと気に入って、家族に語って聞かせるはずだわ!!」
たしかにそうかもしれない。
銀狼騎士隊の騎士舎に温泉を作る。いいアイデアだろう。
さっそく、アンドリュースさんとアンナマリアさんに相談を持ちかけることにした。




