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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第五章 新たな問題

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話し合い

 ドワーフ族との不仲が解消されたかと思えば、新たな問題が浮上する。

 領民達が魔技巧品に対し、必要ないと訴えているのだ。

 いったいどうしたものなのか。

 帰宅後、アンドリュースさんやアンナマリアさんら、叔父夫妻と集まって報告する。


「そうか……やはりそのような流れになったのだな」


 アンドリュースさんはある程度、そうなるのではないか、と想像できていたという。


「昔から、領民達は新しいものに対しては保守的でねえ」


 村長の不在も影響しているという。


「その村長さんがねえ、ハルトヴィヒの父親の代からの、とんでもない不仲で」

「仕方ないよ、だって……」


 ハルトヴィヒ様の瞳に、悲しみの色が滲んだように見えた。

 きっと何かあったのだろう。

 ハルトヴィヒ様が話さないからか、アンナマリアさんが打ち明けてくれた。


「村長さんのご子息は、銀狼騎士隊に所属していたの。でも、魔物の討伐中に、予期せぬ襲撃を受けて亡くなってしまって……」


 村長はもともと、息子が銀狼騎士隊に入隊することに対し、反対していたという。

 けれども家族を守るために、自ら志願してしまったそうだ。


「村長さんは長年、深い悲しみの中にいたのだけれど」


 ハルトヴィヒ様の父君が亡くなり、世代が交代すると、行き場のなかった感情が怒りに変わっていったという。


「ごめん、なんて言っていいのかわからなくて……」


 ハルトヴィヒ様は徴兵制度について撤廃し、強制にしたくないと考えているという。

 けれども現状、銀狼騎士隊の戦力が足りているとは言えず、村出身の騎士に頼っている部分があるようだ。


「村に若い男衆がいなくて、女性陣が不安になる気持ちもわかるんだ。でも、どうにもできなくて……」


 どちらの感情も理解できる。けれどもすぐに決まりを変えられるほどの余裕はないようだ。


「とても難しい問題なんですね」

「ああ、そうなんだ」


 騎士達を通いにすることも考えたという。

 けれども魔物の出現で緊急召集がかかることもあるので、現状は難しいと判断したようだ。


「若い騎士には、なるべく休日を多めに与えて、村に帰るようには言っているんだけれど」


 それ以上の年代の騎士達も、家族と過ごす時間を与えたい。

 ハルトヴィヒ様は考え、自らが前線に立って戦うことで、騎士達が続けて魔物討伐に行かなくてもいいように調整しているのだとか。


「私はずっと、ハルトヴィヒにそこまでしなくてもいい、と言っていたんだが」

「ずっとそんな暮らしをしていたら、体を壊してしまうもの」


 アンドリュースさんとアンナマリアさんは、領民が魔物と戦うのは家族を守るためでもある。ハルトヴィヒ様ひとりが抱え込む必要はない、と言っていたようだ。


「この通り、ハルトヴィヒは頑固だから聞かなくてねえ」

「私達がいくら言っても、無駄なのよ」


 領民達との溝は、思っていたよりも深く複雑なもののようだった。


「ごめんね、こんな話をしてしまって」

「いいえ……」


 まさかハルトヴィヒ様が無理をしてまで、魔物討伐をしていたとは。

 その問題も深刻なものだろう。

 私にできることは何なのか。きっと、よそ者だった私にしかできない、何かがあるはずなのだ。

 少しだけ、一人で考えたい。


 考え事をする前に、頭の中を空っぽにしよう。

 今、いろいろと話を聞いて、考えがごちゃごちゃになっていたから。

 部屋に戻ると刺繍を始めた。

 この前、シルク・スパイダーから獲れた絹糸で、ハンカチにハルトヴィヒ様の名前の刺繍とリンブルフ辺境伯家を象徴する狼の刺繍を入れてみよう。

 やはり、無心になるには刺繍が一番だ。


『アウレリア、何をしているの~?』


 まーちゃんが興味津々とばかりに、刺繍を覗き込む。


「ハルトヴィヒ様の名前の刺繍に挑んでいます」

『わあ、すごい! それに、きれいな糸だねえ』

「ええ、そうなんです」


 シルク・スパイダーの絹糸は驚くほど滑らかで、扱いやすい。するすると刺繍できる。

 集中していたようで、まーちゃんのくしゃみでハッと我に返る。

 まーちゃんはいつの間にか眠っていた。暖炉の前にいるのに、寒いのだろうか。

 なんて考えていたら、レニがまーちゃんにブランケットを被せてくれた。

 そして暖炉に近すぎると思ったからか、少し体を動かしてくれる。

 カワウソの炙り焼きになったら大変なので、レニの心遣いに感謝した。

 三時間ほど刺繍をしていたらしい。

 完成した刺繍を掲げると、我ながら上手くできているように思えた。


「あら?」


 刺繍が光っているように見えたので、不思議に思って鑑定魔法で調べてみた。


 アイテム名:守護のハンカチ

 属性:光

 ランク:★★★★★

 説明:シルク・スパイダーの絹糸で刺繍をし、持ち主の名前を刻むことによって完成する守護魔法。ありとあらゆる攻撃を一度だけ防ぐ。


 なんてことなのか。驚くべきことに、ハンカチに魔法が付与されていた。

 どうして魔法になってしまったのかはわからない。けれども、ハルトヴィヒ様を守ることができるようだ。


 ここでルカエルとミカエルがやってくる。


「アウレリア様、ハルトヴィヒが魔物退治に行くって!」

「見送りに行く?」

「はい、すぐに」


 ハルトヴィヒ様を見送るため、エントランスに急いだのだった。

 

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