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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第五章 新たな問題

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村の事情

 ハルトヴィヒ様はこれ以上、説明や交渉を持ちかけても領民達に聞く耳は持たないと察したのだろう。

 領民に解散を言い渡し、その場をあとにする。


 領内にある村には初めてやってきた。

 石造りの堅牢な造りの家が並んでいて、木々が少ないからか、少し寂しい雰囲気を感じてしまう。

 この村をどうにかして豊かにしたい。

 そのように考えるハルトヴィヒ様の気持ちがわかってしまう。

 いろいろ考えながら歩いていたら、子ども達が駆けてきた。


「領主様、こんにちは!」

「こんにちは。今日も元気だね」

「うん!」


 好奇心旺盛な子なのだろう。私をジッと見つめてきた。


「領主様、この人は?」

「婚約者だよ。将来結婚するんだ」

「わあ、そうなんだ! もう、〝サミシイ、ヒトリミ〟じゃなくなるんだね!」

「え、待って! どこでそれ覚えたの!?」


 なんて話していたら、その子の親らしき女性が血相を変えてやってきた。


「こら! こんな時間まで何をしているの? 日が傾きかけたら、魔物が出るって言っているでしょう!?」


 そう言って挨拶もそこそこに子どもの腕を引き、この場からいなくなってしまう。

 親子の様子を見ながら、ハルトヴィヒ様は私に背を向けたままポツリと呟く。


「寂しい独り身だって。言われてしまったなあ」

「今は違います。わたくしが傍におりますので」


 そんなことを言えば、ハルトヴィヒ様は私を振り返る。

 少し泣きそうな顔をしていた。


「うん、ありがとう」


 きっとこれまで、大変な思いをしながら領主を務めていたのだろう。

 領民とだって、いろいろと揉めているはずだ。

 先ほどの女性のハルトヴィヒ様に対するそっけない態度から、そんな事情を察してしまう。


 これから魔技巧品で村を、領民達の暮らしを豊かにして、ハルトヴィヒ様との間にある溝も埋まればいいな、と心から思ったのだった。


 別の方向から、子どもの声が聞こえた。


「お父さんのところに行きたい!!」

「だめよ。あそこは関係者以外、立ち入り禁止なんだから」

「やだやだ! もう、ずっと会ってない!」

「仕方ないでしょう? お父さんは騎士なんだから!」


 子どもが私達に気付き「あ!!」と声をあげる。

 母親は顔色を青くし、子どもを抱き上げて走り去った。

 ハルトヴィヒ様は複雑そうな表情で、親子が去って行く姿を見つめていた。


 帰り道、ワイバーンに乗りながらどうして領民達との間に距離ができてしまったのか、話を聞くこととなった。


「大切な働き盛りの男衆を、魔物退治を行う銀狼騎士隊が奪ってしまったんだ」


 リンブルフ辺境伯領には徴兵制度のようなものがあり、年頃になれば健康であるのを条件に、強制的に銀狼騎士隊への入隊が決まってしまう。


「魔物が蔓延るこの土地で、銀狼騎士隊の戦力は欠かせないんだ」


 ハルトヴィヒ様の父君が始めたその制度のおかげで、以前より大幅に魔物の被害が減ったという。


「ただ、男衆がいないと、その分村に残る女性の負担が増えてしまって」


 農作業に水汲み、家屋の修理に至るまで、男衆が担うはずの仕事が女性に回ってくる。

 また、家を空けがちな父親との時間が十分に取ることができず、寂しい思いをしている者は多いという。


「さっき、夕方になれば魔物が出る、なんて言っていたでしょう?」

「はい」

「実際は、村の近辺で魔物なんてここ数十年は出ていないんだ」


 そうならないようにハルトヴィヒ様が、銀狼騎士隊が魔物を退治している。


「でしたら、その、魔物が出るというのは、ハルトヴィヒ様への当てつけ、なのでしょうか?」

「ああ、その通りだよ。悪いとは思っている。家族の時間を作ってあげたいとも。わかっているから、耳が痛くなるんだ」


 基本的に銀狼騎士隊に所属する者は、騎士舎に待機し、何かあれば出動しなければならない。そのため、村に戻ることができるのは一ヶ月のうち数回だという。


「本当にね、どうにかしなければならないんだ、って思っているんだけれど……」


 まさかそのような問題を抱えていたなんて。

 説明会の場に、女性ばかりだった理由が判明したわけである。


「ハルトヴィヒ様、なんとか問題を解決しましょう」


 一緒に考えたら、解決法が思いつくはず。そう伝えると、ハルトヴィヒ様は「ありがとう」と言ってくれる。

 その声が震えていたことには、気付かないふりをした。

 

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