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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第四章 ドワーフ族の里へ

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火よ

 ドワーフ族の隠れ里に広がる炎を、魔石工房マジリトス・ワークショップを使って吸収できればと思いついたのだ。


「――自動吸収オート・ドレイン!!」


 運を天に任せてやってみよう。

 そんな気持ちだった。

 上手くいくとは思っていなかったが――。


 炎が魔石工房マジリトス・ワークショップに向かって巻き上がり、吸収されていく。

 上手くいった!!

 そう歓喜したのは一瞬のこと。

 すさまじい高熱が私に襲いかかり、魔石工房マジリトス・ワークショップが手から離れそうになった。

 もしも今、魔石工房マジリトス・ワークショップを落としたら、吸収した火が一気に放たれてしまう。

 それだけは避けなければならない。

 防火魔法がかかった外套と手袋を着用しているので、ある程度のダメージは軽減できているのだろう。

 けれども外套や手袋に守られていない、露出箇所が悲鳴を上げるようにズキズキと痛んでいた。


「アウレリア!!」


 ハルトヴィヒ様が私に駆け寄ろうとしたようだが、ブリーゼ様に止められていた。


「止めろ!! むやみやたらに近づいたら、大やけどをするぞ!! アウレリアは神々の遺物アーティファクト所有者ゆえ、ある程度は守られているはずだ!!」


 これでも私は守られているほうだったらしい。

 ならば、余計に耐えなければ。

 ドワーフ族の隠れ里に広がった火は、どの程度吸収できたのだろうか。

 視界いっぱいだった火は、ずいぶん減ったように思える。 

 あと少し、あと少し……。

 わかっているものの顔の皮膚は燃えるように熱く、喉はカラカラを通り越し、ヒリヒリとした焼けるような強い痛みを訴えている。

 意識が遠のきそうになるたびに、奥歯を噛みしめ、自らを揮い立たせる。

 けれどもそろそろ限界も近い。

 すでに限界は通り過ぎ、気力だけで立っているようなものだった。

 視界がぐらりと歪み、意識が遠のきかけた。

 その瞬間、私の肩ががしっと強く支えられた。

 鼓舞するような言葉も聞こえてくる。


「アウレリア、よくやった!! あと少しだから、一緒に頑張ろう!!」


 ハルトヴィヒ様の声だった。

 ぽたぽたと滴り落ちる水に気付く。

 どうやら全身に水を被って、私を支えにやってきてくれたらしい。

 涙が出そうになる。

 一度目の人生で、私が辛いときに、寄り添うように傍にいて励ましてくれる人なんて、一人もいなかった。

 ハルトヴィヒ様はそんな人達とは違った。

 私が本当に辛いときに、こうして駆けつけてくれるのだ。


「俺によりかかって! 大丈夫、きっと上手くいくから」

「は……い」


 あと少し、あと少しだ。

 状況はほんの少し前と変わっていないのに、ハルトヴィヒ様が傍にいるだけでまったく心持ちが変わっていた。

 大丈夫、きっと上手くいく。そんな強い気持ちが芽生えたのだ。


 そして――最後の火が吸収された。

 魔石工房マジリトス・ワークショップはすさまじい熱を発している気がする。

 早く魔石化させなければ。


「――げっほ、げほげほ!!」


 言葉を発しようとした瞬間、喉が痛んで声にならない。


「アウレリア、大丈夫!?」


 傍にいるはずのハルトヴィヒ様の声が、遠く感じた。

 早く魔石化しなければ。

 声を振り絞り、呪文を唱える。


「――形成フォルマーレ


 魔石工房マジリトス・ワークショップから、ルビーみたいな美しい魔石が大量に溢れてきた。


 ああ、もう、大丈夫。

 そう思った瞬間、私は意識を手放したのだった。


 ◇◇◇


『まーちゃんはねえ、アウレリアが元気になったら、ピクニックにいきたいの!』


 そんな言葉で、私は目を覚ます。


「まー……ちゃん?」


 まだ喉が痛い。けれどもかなりよくなっているような気がした。


『アウレリア!?』


 瞳を潤ませたまーちゃんが、私の顔を覗き込んでくる。


「ここ……は?」

『お家だよお!』


 まーちゃんに言われて気付く。

 ここは王都にあるアルテンブルク侯爵邸ではなく、リンブルフ辺境伯領にあるお屋敷だということを。


 こうして眠っていたということは、私はドワーフ族の隠れ里で魔石工房マジリトス・ワークショップを使って消火活動をしたあと、ここに運ばれたのだと。


「帰ってきてから……どのくらい……経っているのでしょう?」

『一日半くらい!』


 今は早朝だという。

 眩い朝日が、カーテンの隙間から漏れていた。


『みんな、呼んでくるね!!』


 皆に報告するのは朝になってからでいい。

 そう言おうとしたのに、まーちゃんは走り去ってしまった。 

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