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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第四章 ドワーフ族の里へ

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出発!

 ドワーフ族の里を目指すさい、私は足手まといになるのではないか。そう思った。

 けれどもハルトヴィヒ様は「そんなことないよ」と言ってくれた。

 それだけではなく「何かあれば、命に替えてでも絶対に守るから」とも誓ってくれたのだ。

 そこまで言ってくれたハルトヴィヒ様のかせになりたくないから、なるべく動きやすい格好で行こう。

 髪はきっちりまとめ、ドレスは乗馬用の動きやすいものを選ぶ。

 靴も乗馬のさいに着用する、踵が低い長靴ブーツに決めた。

 まーちゃんも準備に気合いが入っている。

 レニに対して『まーちゃん、ちょっと冒険してくるね』と真剣な表情で話し、リボンも邪魔になるかもしれないから取るようにお願いしていた。


「レニさん、不在中、ルカさんとミカさんのことを頼みますね」

「承知しました」


 ルカエルとミカエルの仕事に対する情熱は収まっていないようで、今はおいしい紅茶の修行をしているという。

 レニにはそんな二人の監督と指導をお願いしておいた。


 魔法の鞄にも、荷物を詰める。

 着替えや化粧品、クッキーやチョコレート、ショートブレットなどの非常食、魔物避けの聖水に、包帯や消毒液などの応急処置グッズも忘れずに。

 準備が整うと、レニの見送りを受けつつ、エントランスを目指す。


「それではレニさん、行ってきますね」

『お留守番、お願いねえ』

「承知しました。ここはお任せください」


 エントランスにはすでに、ハルトヴィヒ様とブリーゼ様の姿があった。


「お待たせしました」

「大丈夫、今きたところだから」


 ハルトヴィヒ様は鎧にマントを合わせた姿でいた。これが戦いに挑むスタイルらしい。

 ドワーフ族の里の周囲にある森は魔物の生息地だというので、このような格好で行くことにしたようだ。


「アウレリアにはこれを」


 ハルトヴィヒ様がそう言って私の左手の薬指に、真っ赤なルビーがあしらわれた銀の指輪を嵌めてくれた。


「婚約指輪として用意していたんだ」

「まあ、きれい……!」


 なんでも守護の魔法が刻まれているらしく、ありとあらゆる災難を防ぐ効果があるという。


「結婚式もまだなのに、こんなことに付き合わせてしまって」

「いいえ、ドワーフ族に交渉を持ちかけようと言いだしたのは、わたくしのほうですので」


 私にも同じように、言いだした責任があるのだ。


「苦楽をともにする、よき夫婦になりそうだ!」


 ブリーゼ様はそんなふうに言ってくれる。


『まーちゃんもいるから、大丈夫!』

「な、なんだこの、巨大なカワウソは!?」

『まーちゃんだよお』

「ま、まーちゃん?」

「ブリーゼ様、まーちゃんはわたくしと契約している妖精族なんです」

『そうなの!』


 まーちゃんは気配がなかったようで、ブリーゼ様を驚かせてしまったらしい。


「お前は妖精族とも縁故を繋いでいたのか」

「偶然、ですね」

『運命なのかも!』

「う、うむ、そうだな」


 と、ここでお喋りしている場合ではなかった。

 そろそろ出発しなければ。

 アンドリュースさんやアンナマリアさん、ルカエルにミカエルも見送りにやってきてくれた。


「どうか気をつけて」

「ご無事を祈っております」

「お土産、楽しみにしているわ!」

「もちろん、お土産はケガなく戻ってくることだからね!」

「わかった。行ってくるよ」


 ワイバーンでリンブルフ辺境伯家の屋敷を飛び立つこととなった。


 ◇◇◇


 ワイバーンは広大な大地の上空を優美に飛ぶ。

 ブリーゼ様は大鷲妖精と契約しているようで、先導するように前を飛んでいた。 


「少し早いかな。ブリーゼにもう少しゆっくり飛ぶように言う?」

「いいえ、平気です」


 頬に触れる風がキンと冷たく、ときにナイフの刃先を当てられているように感じる。

 けれども我慢できないほどでもない。

 リンブルフ辺境伯領へやってくるときは、比較的ゆっくり丁寧に飛行してくれていたのだな、と気付かされた。

 私のためを思い、進行してくれたハルトヴィヒ様に感謝したのは言うまでもない。

 休憩を挟むことなく、三十分ほど飛行を続けた先に、ドワーフ族の居場所である森に到着したのだった。

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