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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第四章 ドワーフ族の里へ

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アーティファクト

 ハルトヴィヒ様はリンブルフ辺境伯領内の地図を広げた。

 ブリーゼ様はそれをのぞき込み、ただ一点を指差す。


「この辺りがドワーフ族の村が隠れている場所だ」

「わあ、やっぱりこの辺りかあ」


 なんでもその辺りは魔物が多く蔓延る生息地で、迷路のように生える木々があることから、迷いの森と呼ばれていたらしい。


「おそらくドワーフ族は誰も近づけないであろう土地を利用し、自らの里を作ったのだろう」


 発明を得意とする器用なドワーフ族にとって、魔物避けや隠れ里を作ることは容易いことだったのだろう。


「ワイバーンで近づくことは可能だけれど、問題はドワーフ族の里を見つけられるかどうかだねえ」

「心配するな。私が責任を持って、ドワーフ族の里まで案内するがゆえ」

「え、いいの!?」

「もちろんだ。これから貴重な神々の遺物アーティファクトを見せてもらうのだ。これくらいはしないと」


 そういうふうに言われると、責任を感じてしまう。

 父を疑うわけではないが、本当に神々の遺物アーティファクトなのだろうか、と今更ながらに不安にもなった。

 魔法の鞄に手を伸ばした手が震えていた。

 その手をハルトヴィヒ様が握ってくれる。


「アウレリア、大丈夫。自慢の神々の遺物アーティファクトをブリーゼに見せてあげて」

「はい」


 ハルトヴィヒ様の手の温もりを感じていたら、自然と震えは収まった。

 ブリーゼ様は期待の眼差しを向けていた。

 早くお披露目しなければ。

 魔法の鞄から魔石工房マジリトス・ワークショップを取りだし、テーブルの上に置いた。


「おお……これは、神々の遺物アーティファクトだ! 間違いない、本物だ!」


 神々の遺物アーティファクトに間違いないと言われ、内心ホッと胸を撫で下ろす。

 同時に、少しでも疑ってしまったことに対して、心の中で父に謝罪したのだった。


「この世の奇跡だ……! 本当にすばらしい!」


 これまで落ち着いた態度を見せていたブリーゼ様が、少年のように瞳を輝かせている。

 アルテンブルク侯爵家に伝わる神々の遺物アーティファクトが、素晴らしい品だということを改めて実感したのだった。


「触っても……いいや、触れていい物ではない」

「どうぞ、お手に取ってください」

「いいのか?」

「はい」


 ブリーゼ様は感謝の言葉を口にすると、手袋を取りだしてしっかり嵌める。


「では、失礼する」


 慎重な手つきで魔石工房マジリトス・ワークショップを手に取り、じっと眺める。


「ああ、本当にすばらしい品だ……! 五百年以上生きて、このような品に会えるとは、まだまだ人生わからないものだな」


 魔石ができる工程を見てみたいというので、作ってみることにした。


「これは何を使って魔石とするのか?」

「定義についてはよくわかっていないのですが、基本的にこの世に存在するありとあらゆる物だと考えております」

「本当か?」

「本当だよ。アウレリアは一度、魔物の魔石化に成功しているんだ」

「魔物の魔石化だと!?」


 このようにブリーゼ様が驚いたのには理由があるという。

 なんでも魔物の命とも呼ばれているコアは、高密度の魔力の結晶である。

 けれども汚染された状態であり、再利用はできないという研究結果が出ていた。


「核を魔石として使えるのであれば、多くの人々に魔石を行き渡らせることができるだろう」

「そうなんだ」


 魔物の核は命を落としても消滅せず、放置していたら魔物の糧となり、さらに個体を強化させてしまう。

 煮ても焼いても汚染を取り除くことができず、最終的に聖水の中に沈めて汚染を封じ、土を深く掘って埋めるという方法でしか処理できなかったらしい。


「核の処理に教会も手を焼いているという話を聞いている。教会に集められる核を横流ししてもらえば、大儲けできそうだ」


 さすが、商人である。核から魔石を作る話から、商売に結びつけるなんて。


「まあでも、しばらくは慎重にいきたいよね」


 この世に唯一無二であるという魔石工房マジリトス・ワークショップについて国の上層部が把握したら、悪用される可能性もある。

 また、国益のために献上するように言われるかもしれない。

 ハルトヴィヒ様の言うとおり、しばらくは他言無用でいてもらおう。


「まあ、そうだな。そのほうがいいかもしれない」


 これまで人々の無益な争いを、ブリーゼ様は目にしてきたという。


「リンブルフ辺境伯領という過酷な地を、戦場になんてさせるものか」

「ブリーゼ、ありがとう」

「当たり前だ。この地は私の故郷でもあるからな」


 最初に名乗った風の里シルフィールというのは、出身地を表す言葉だったらしい。

 その風の里シルフィールは、リンブルフ辺境伯領のどこかに存在しているようだ。


「いい品だ。今後も大切にするように」

「はい、リンブルフ辺境伯家の宝物として、大事に扱います」


 話はドワーフの里探しに戻る。


「出発は早いほうがいいだろう?」

「そうだね」

「ならば、すぐに出発しようではないか!」


 無事、話はまとまって、ドワーフ族の里探しに出かけることとなった。

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