表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第四章 ドワーフ族の里へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/39

エルフ族の商人、デア・ブリーセ

 エルフ族の商人と聞いて、老齢の熟達した職人のような人物を勝手にイメージしていた。

 けれども実際にやってきたのは、十歳前後にしか見えない、美しい少女だった。


「リンブルフ辺境伯よ、久しぶりだな」

「たまには顔を見ておこうと思ってね」

「そんなことを言って、また何か頼み事や相談事でもあるのだろう?」


 喋りは昨日までイメージしていたとおりのものだった。

 ただ、声は少女の愛らしいものなので、いささか違和感がある。


「リンブルフ辺境伯よ、婚約したと聞いていたが、本当だったのだな」

「嘘は言わないよ」

「いやいや、これまで何度も婚約破棄になっていたではないか」

「誤解だよ。これまでは婚約にすら至っていなかったから」


 なんでも婚約話は多々浮上していたものの、話が進む前に断られていたらしい。


「まあ、普通の女はこのような過酷な土地に、身一つで嫁いでこないのだろう」

「普通かどうかはさておき、アウレリアは過酷な土地を領する男との結婚を決心してくれた、国一番の勇気ある女性なんだよ」


 そういうふうに言ってくれるとは……。

 ワケアリの婚約だったので、普通ではない女扱いでもよかったのだが。


「遅くなったけれど、紹介するね。彼女はアルテンブルク侯爵の娘さんでもあるアウレリア」

「どうも初めまして。お会いできて光栄です」


 立ち上がってお辞儀をしようとしたのに、握手を求められる。

 こういう挨拶は初めてだったが、なんとか応じることができた。


「私は風の里シルフィール出身の、デア・ブリーゼだ。気軽にブリーゼと呼んでくれ」

「はい、ブリーゼ様」


 エルフ族は気難しい者が多く、人と関わりたがらないと聞いたことがある。

 けれどもブリーゼ様は気さくなお方のようだ。


「しかし、愛人がいたんだろう? どうしたんだ? スパッと捨てて、王都に置いてきたのか?」


 その言葉は私に向けられていた。

 意味がわからず、小首を傾げてしまう。


「ブリーゼ、愛人がいたのは、彼女の妹のほう! アウレリアには愛人なんていないから!」

「ああ、そうだったか。失礼した。アウレリアよ、聞かなかったことにしてくれ」

「は、はあ……」


 カーリンに愛人がいたという噂は、リンブルフ辺境伯領にまで届いていたらしい。

 思わず、遠い目をしてしまう。


「妹との婚約話は、とうに消えていたんだよ」

「なるほど、なるほど。前回、ほぼほぼその女との婚約が決まったとかなんとか言っていたから、てっきりアウレリアがそうだとばかり思っていた」

「まあ、なんというか、いろいろあったみたいなんだ」


 ハルトヴィヒ様も話しながら遠い目になる。

 父はハルトヴィヒ様との婚約について、なんとかいい方向に話をまとめたと言っていた。

 けれどもカーリンの決まりかけていた婚約を破棄し、オリヴァー様と結婚した話は、ハルトヴィヒ様の耳にもしっかり届いていたようだ。


「その妹はどうしている? まさか、愛人と駆け落ちをしたのではないな?」


 ハルトヴィヒ様が困った顔でこちらを見つめる。

 込み入った話をしていいのか、私に聞きたいのだろう。

 代わりに答えた。


「妹、カーリンはブランデンブルグ家のオリヴァー様と結婚しました」

「ブランデンブルグ家だと!? 大公家ではないか!? どうして妹が格上の名家と結婚して、姉であるお前が実家よりも格下であるリンブルフ辺境伯と結婚したのか!?」


 通常、貴族は生まれた順によりよい教育を受ける。

 そのため妹よりも姉のほうがいい家に嫁ぐのが普通だ。

 ブリーゼ様はその辺の慣習についてもご存じだったのだろう。


「まさか再婚なのか!? それとも、ブランデンブルグ家の者に拒絶されたのか!?」

「ブリーゼ、アウレリアはそのどちらでもないんだよ」


 これ以上の干渉は許さない、とばかりにハルトヴィヒ様は強い口調で言葉を返す。

 ただここまで聞いたら、ブリーゼ様も気になって仕方がないのだろう。

 隠すようなことでもないので、打ち明けることにした。


「カーリンがブランデンブルグ家のオリヴァー様との結婚を望みました」

「なっ――!? まさか妹の我が儘を受け入れたというのか!?」

「はい」

「貴族の結婚とは、そのように融通の利くものではなかろうに」

「ええ、そうなんです。ハルトヴィヒ様との結婚を決めたのは、わたくしの我が儘でもありました」


 オリヴァー様と結婚した結果、何度もお腹の子を失い、挙げ句の果てにカーリンに殺されてしまうなど、この場で言えたものではない。


「まさか、この男に惚れ込んでいた――というわけではなさそうだな」

「ブリーゼ、そこは決めつけないでもらえるかな」

「すまない。アウレリアがお前に惚れ込んでいるようには見えないから」

「心にナイフを突きつけるようなことは言わないでよ」

「事実ではないか」


 二人の軽快な掛け合いに我慢できず、笑ってしまう。


「リンブルフ辺境伯よ、お前のせいでアウレリアに笑われてしまったではないか!」

「俺のせいじゃないでしょう。ブリーゼが面白いことを言うから」

「なんだと!?」


 ふと、思う。

 彼らにならば、真実を話してもいいのではないのか、と。

 けれどもそのタイミングは今ではない。

 いつか――。


 話が大きく逸れてしまった。本題へ移ろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ