水道計画、その前に!
「水道かー。屋敷の水場すべてに通っていたら便利だよねえ」
「王都の屋敷では、屋根に雨水を吸収する魔技巧品がありまして、浄化したあとすべての水場に供給される魔技巧品が使われているんです」
「なるほど、王都では雨水が利用されているのか」
リンブルフ辺境伯領では雨が少ないようなので、同じ仕組みで水を確保するのは難しいとのこと。
「今日、アウレリアがしたみたいに、地下の水源から確保するしかないよねえ」
「ええ」
まーちゃんが敷地内の水源を探してくれるようなので、後日調査の時間を作りたい。
「問題は魔技巧師の確保かあ」
「リンブルフ辺境伯領内に、ドワーフの里があると聞きましたが、彼らであれば魔技巧品を作れると思うのですが」
「ドワーフ族かあ」
ハルトヴィヒ様は天井を見つめ、遠い目をしていた。
「どうかなさったのですか?」
「いやあ、ご先祖様がさあ、大昔にドワーフ族と住処を争ったことがあってねえ」
なんでもドワーフ側が先にこの地に住んでいたらしく、リンブルフ辺境伯側に出て行くように抗議をしにいったようだ。
「当時の銀狼騎士隊が張り切って戦ったみたいで、ドワーフ族を返り討ちにしてしまったらしいんだ」
「まあ……!」
以降、ドワーフ族は森の奥地に移り住み、人里へ下りてくることはなかったという。
「というわけで、今彼らがどこに住んでいるのか、よくわからないんだよねえ」
「そうだったのですね」
やはり王都から魔技巧師を連れてくるしかないのか。
「あー、でも、うちに出入りしているエルフ族の商人だったら、ドワーフ族のところにも出入りしているかもしれないな」
「エルフ族の商人がいらっしゃるのですね」
「うん、そうなんだ。月に一回くらいかな、うちの領地にやってきて、薬とか珍しい薬草を売ってくれるんだよ」
アンドリュースさんに次はいつ来るのかとハルトヴィヒ様が聞いてみると、訪問予定は明日だという。
「だったらドワーフ族の居場所について、尋ねてみようかな。アウレリア、同席してくれる?」
「ええ、もちろん」
エルフ族の商人とはどんなお方なのか。エルフ族自体、これまでお見かけしたことがないので、想像もつかない。
失礼のないようにしなければ、と思ったのだった。
◇◇◇
何もかも終わったあと、お風呂に入る。
王都から持ってきた秋薔薇の精油を垂らし、ゆっくり浸かった。
「ふう……」
今日はハルトヴィヒ様が無事に戻ってきてくれて、本当によかった。
彼がいるのといないのとでは、安心感がまったく異なる。
明日はエルフ族の商人がやってくるというので、リンブルフ辺境伯の妻としてしっかり役割を果たさなければ。
お風呂から上がって大判の布で水分を拭っていると、まーちゃんがやってくる。
『いい匂いがするう』
「薔薇の香りを入れたんですよ」
『そうなんだあ』
入ってみるかと聞いてみると、まーちゃんは嬉しそうに頷く。
「熱くないか確認してくださいね」
『はあい』
まーちゃんは浴槽の縁に飛び乗り、尻尾をお湯に浸ける。
『うーん、いい湯加減!』
問題ないようで、まーちゃんは一気に飛び込む。
しばし浴槽の中をくるくる回って泳いでいた。
『ぷはっ!!』
「温泉はいかがですか?」
『もちろん最高~~~~!!』
初めての温泉をお気に召したらしい。
しばらく嬉しそうに泳いでいた。
最後、泡風呂にしてあげると、まーちゃんは小さな子どもみたいにはしゃぐ。
すべて終わったら、魔法で排水していく。
『わあ、お湯がなくなってくよお』
このお風呂に排水口はなく、これまで窓から捨てていたらしい。
『だったら便利なんだ~』
「ええ、そうなんですよ」
まーちゃんとの楽しい入浴時間を堪能したのだった。
翌朝――ルカエルとミカエルが私を起こしにやってきた。
「目覚めの一杯よ」
「温かいうちに飲んで」
「ありがとうございます」
レニが淹れてくれたという、濃い目の紅茶をいただく。
そのあとは洗面器に張った洗顔用のお湯が運ばれてきた。
「これ、お風呂場から持ってきた温泉よ」
「私達にも使えたの」
「それはよかったですね」
ルカエルとミカエルは誇らしげな様子でいる。
「あのお湯、シーツ洗うのにも使ってもいい?」
「寝間着も洗いたいわ」
「ええ、どうぞご自由に」
そう答えるや否や、ルカエルとミカエルは浴室のほうへ駆けていく。
元気だな、と思ったのだった。




