水を導いてみよう!
『水、あったよお!』
まーちゃんはそう言って、元気よく穴から這い上がってきた。
「お手柄です、まーちゃん!」
『えへへ、頑張った!』
ルカエルとミカエルがまーちゃんが掘った穴を覗き込む。
「本当だ、水が滲んでる」
「待って、なんだかおかしいわ」
穴から湯気が漂ってきた。いったい何事なのか。
慌てて中を見てみると、じわじわ水位が上がってきていた。
熱気を感じる。
「これは――お湯です!」
まさか水でなく、お湯が沸いてくるなんて。
『これ、なんで温かいの?』
「地下熱で温まったのかもしれません」
こういうお湯をなんと言うんだったか。
ああそうだ、温泉だ。
たしか、さまざまな効果をもたらす、体にいいものだったような。
そんなことはさておき。
勢いがあるようで、どんどん迫ってくる。
このままでは、穴からお湯が噴き出てくるだろう。
対策を打たなければ。
「いきなり水量が増えてきたわ!」
「溢れてきちゃう!」
急いで魔法の鞄から水の魔石を取りだし、穴に放り込む。
溢れてでてこないように、結界を展開した。
「――すべてを守る障壁となれ、マナ・バリア!!」
穴に蓋をするように、障壁が浮かび上がる。
せり上がってくる水が溢れでてくるのを、なんとか防ぐことができた。
「間に合った?」
「溢れてこない?」
「ええ、なんとか」
ひとまず水の魔石をもう一つ使って、水の勢いを調節する。
「このあとどうするの?」
「このまま放置?」
「水の流れを、魔法で導く必要がありそうです」
魔法陣を描いて魔石を設置し、水を送りたい場所にも同様の魔法陣を描く。
ひとまずお風呂に水が送られるようにしてみよう。
浴槽の底に魔法陣を描き、水の魔石をエネルギー源として置いておく。
魔石を使った魔法の応用で発動させると、水の流れができる。
呪文を唱えてみた。
「――水よ流れよ、ウォーター・サプライ!」
浴室にある窓の下に水場があるらしい。
ルカエルとミカエルが覗き込んで、状況を説明してくれる。
「水の穴に魔法陣が浮かんだわ!」
「光っているみたい!」
あっという間に浴槽にお湯が満たされる。
「わあ、すごい!」
「お湯が一瞬で貯まったわ!」
魔法陣に浄化魔法も組み込んであるので、水質もまったく問題ない。
お湯の温度はどうだろうか。
そっと触れてみると、ちょうどよかった。少し熱めだが、これくらいであれば入れるだろう。
「今日、お風呂当番だったの!」
「これで水を二階まで運ばなくてもよくなったわ!」
無事、水道を作ることができてホッと胸を撫で下ろす。
「でもこれ、魔力とか魔法の維持とか大変なんじゃないの?」
「常時展開ってやつ?」
「魔法は水の魔石頼りに展開されるものですので、大変ではないんです。安心してくださいね」
それを聞いて二人は安心したようだ。
『お風呂、まーちゃんも入れる?』
「やめておきなさいな」
「茹でカワウソになるわよ」
『えーーーーそんなーーーー!!』
ほのぼのとした会話に笑いそうになってしまう。
思いのほか上手くいって安堵したのと同時に、久しぶりに大がかりな魔法を使ったので疲れてしまった。
◇◇◇
アンドリュースさんやアンナマリアさんに、お風呂の水道をお披露目してみた。
「すごい……! 一瞬で浴槽にお湯を満たすことができるなんて」
「本当に。すばらしい魔法です」
お湯はもともと敷地内に沸いていたものだと説明すると、二人は驚いていた。
水道も魔技巧品に頼ることができたら、屋敷中のさまざまな場所に水を引くことができるだろう。
「魔技巧品を作る職人にあてがあればなあ」
「この辺りで作っているところと言えば、ドワーフの村くらいでしょうか」
なんでもリンブルフ辺境伯領のどこかにドワーフ族の村があって、そこで魔技巧品が作られているであろうとのこと。
そういえば、王都でもリンブルフ辺境伯領で魔技巧品が生産されているという話を聞いていたような。
ハルトヴィヒ様ならば、何か情報を握っているかもしれない。
帰ったら聞いてみよう。
「他にも水源があるかもしれないから、調べてみようか」
水源はまーちゃんが探すことができるので、ルカエルとミカエルと一緒に協力して探してもらおう。
私は水道を引く魔法をもう少し簡素にしたい。
何はともあれ、水道計画を成功することができたのだ。
大きな第一歩と言えよう。
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