水源を探せ!
ひとまずレニに声をかけてから、外に出る。
レニは部屋でまーちゃんのブラッシングをしていた。
その様子を目撃したルカエルとミカエルは、顔を引きつらせながら発言する。
「巨大カワウソのくせに、メイド付きだなんて……」
「いいご身分だわ……」
レニのブラッシングが気持ちよかったのだろう。
まーちゃんはうっとりした表情を浮かべていた。
「レニさん、少し外へ散策に行ってきますので、こちらに待機して、どなたかいらっしゃったら知らせにきてください」
「はい、承知しました」
外に出ると聞いて、寝かかっていたまーちゃんが起き上がる。
『まーちゃんも、お外行く!』
「ええ、一緒に行きましょう」
ルカエルとミカエルは不満げな様子でいたが、まーちゃんが純粋な瞳を向けつつ『よろしくね』と言うと、「まあいいけど」「少しだけね」と許すような反応を見せていた。
「アウレリア様、外は冷えますのでこちらを」
レニはそう言って、私の肩に外套をかけてくれた。
「ルカさん、ミカさん、あなた達は大丈夫ですか?」
「私達はリンブルフ辺境伯領育ちよ」
「今日の寒さなんて、別になんてことないんだから」
薄いメイド服で大丈夫なのか心配したが、問題ないらしい。
『まーちゃん、寒くないかなあ』
「あなたは毛皮があるでしょうに」
「厚い脂肪もあるでしょう」
『えー! まーちゃんの毛、こんなに短い、短毛なんだよお! それに脂肪なんてないから!』
まるまるポヨポヨな体をしているまーちゃんの訴えに、疑惑の視線が集まる。
会話を耳にしていたレニが、まーちゃんの首にハンカチを巻いてくれた。
『わあ、ありがとう! 温かいかも!』
「そんなハンカチ一枚で」
「気持ちの問題じゃないの」
喜ぶまーちゃんに、ルカエルとミカエルのぼやきは届いていないようだった。
「では、支度が調ったようなので、行きましょうか」
「はあい」
「わかったわ」
レニを残し、私はルカエルとミカエル、まーちゃんを引き連れて外に出た。
今日は曇りだからだろうか。外は屋敷内よりもずっと冷え込んでいて、冷たい風がヒューヒュー吹いている。
これから冬を迎えたとき、どれだけ寒くなるのか。
想像も付かない。
そんな中、まーちゃんは楽しそうに闊歩していた。
『わあ、外、広いねえ』
「当たり前よ」
「広くなかったら、問題だわ」
わくわくの足取りで進みながら発せられるまーちゃんの発言に、いちいち辛辣な言葉を返すルカエルとミカエルである。
まーちゃんは欠片も気にしておらず、るんるんな様子だった。
井戸がある辺りまで案内してもらった。
お風呂も、飲料水も、顔を洗い歯を磨く水もここから運ばれているようだ。
「ここからお屋敷の二階に運ぶとなれば、大変ですね」
「そうなのよ」
「何往復もするのですって」
ルカエルとミカエルは洗濯をしに、ここで水を汲んで洗い場まで運んだという。
「水道が成功したら、洗濯の洗い場とも繋がなければいけないですね」
「そうしてくれたら、洗濯メイド達も助かるわ」
「本当に」
まずは水源を探そう。
そう思って取りだしたのは、アクアマリンの宝石がついたペンダント。
「それが探す道具?」
「魔技巧品なの?」
「いいえ、ただのペンダントです」
アクアマリンには水属性が付与されているので、地下深くにある水に反応するはずだ。
「ダウジングといって、ある意味占いみたいなものなのですが、ペンダントに魔力を通して捜し物をするんです」
水源があれば、ペンダントのアクアマリンが揺れるはず。
「そんなので見つかるのね」
「いんちきみたいだわ」
私もそう思う。けれども魔法使いではない私が、水源を探すにはダウジングに頼る他ない。
そんなわけで、水源探しを開始した。
ペンダントのチェーンを手首に巻き付け、アクアマリンをゆっくり垂らす。
慎重に歩みを進めていく。
私のあとに続くルカエルとミカエルが「怪しいわ」「怪しい」なんて言ってくれる。
唯一、まーちゃんだけは『水源、見つかるかなあ!』と前向きな気持ちで付き合ってくれた。
井戸の周辺をぐるぐる回ること一時間。
ルカエルとミカエルはすっかり飽きてしまい、地面に座り込んでいる。
相変わらず、まーちゃんだけはダウジングに付き合ってくれた。
「ねえ、まだやるの?」
「飽きたんだけれど」
「もう少し待っていてください」
なんて話していたら、まーちゃんが地中をくんくんし始めた。
「まーちゃん、どうかしたのですか?」
『なんか、水の匂いがする!』
そう言って、まーちゃんは地面の匂いを嗅ぎ続けていた。
念のため、アクアマリンを垂らしてみると、わずかに反応があった。
「水源があるかもしれません」
『だったらまーちゃん、ここを掘ってみるね』
コロカジールから貰った爪先を鋭くする能力を発動させ、地面をザクザク掘っていく。
あっという間に、八十インチほど掘ってしまった。
『わっ!!』
まーちゃんが声をあげたので覗き込むと、底にじんわりと水が滲み出ていた。
間違いなく、この場に水源はあったのだ。




