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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第三章 リンブルフ辺境伯領へ

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朝のひととき

 朝食の席には叔父夫妻だけで、ハルトヴィヒ様はいなかった。

 やはり、帰ることができなかったらしい。

 アンドリュースさんがよくあることだと言っていた。


「出発前に、アウレリアさんに貰った、魔法の弓矢を自慢されたよ」


 役に立てたらいいのだが……。

 アンナマリアさんが昨日渡した魔石ランプの感想を言ってくれた。


「魔石ランプ、すごく便利でした。淡い灯りが優しくて、変な臭いもなくて。夜間は獣油を使っているから、臭くて眠れない日もあったんです」

「そうだったのですね」


 リンブルフ辺境伯領では、夜間はランプを一つだけ点けて眠る習慣があるらしい。


「魔物の襲撃を警戒しているから、そんな文化があるのですが」


 なんでも魔物は人工的な灯りが苦手らしく、魔物避けの役割もあるのだという。

 夜間は長い時間点し続けなければならないため、値段が安い獣油を使って灯りを点していることが多いようだ。その獣油が、臭くて睡眠を妨害するレベルだという。

 そのような状況だったため、臭いがない魔石灯は画期的に映ったようだ。


「あれは魔法で動いていると聞いたのですが、どのような仕組みなのですか?」

「魔石という、魔力が込められた鉱石をエネルギー源としているんですよ」

「まあ、そうなんですね!」

「魔石が切れたら交換しますので、いつでもおっしゃってくださいね」

「ありがとうございます」


 お気に召していただけて何よりである。

 アンドリュースさんにあげた魔石灯は、執務室に置いているらしい。


「私も使うのを楽しみにしているよ」

「はい、ぜひ!」


 こんなに喜んでもらえるのならば、リンブルフ辺境伯領内には他にも困っている人がいるのかもしれない。

 なんとか普及できるよう、何か考えてみよう。


「それはそうと、ルカエルとミカエルにも、いい品物をお土産に貰って、本当に喜んでいたよ」

「あの子達、夜遅くまではしゃいでしまって……素敵なお土産の他にも、リボンをくださったみたいで」

「いえ、喜んでいただけて、嬉しいです」


 メイドに立候補された件についても、ここで聞いておこう。


「その、ルカエルさんとミカエルさんについてですが、今日の朝、私のメイドになると言っていらっしゃったのですが」


 それを聞いて、アンドリュースさんとアンナマリアさんは驚きの表情で私を見る。


「あの二人、本気だったのか」

「あの子達についてしっかり把握しておらず、申し訳ありませんでした」


 なんでも昨晩、ルカエルとミカエルは両親のもとを訪ね、私のメイドになるという宣言をしていたらしい。


「しかし、お土産とリボンを貰って上機嫌だから、気分に任せて言ったのだろうと」

「これまでも、似たようなことがあっても、実際に実行することはなかったものですから」

「そうだったのですね」


 本気でメイドをするのであれば、一度私に相談していた、と。


「本当にすまなかった」

「迷惑だったら、いつでも言ってくださいね」

「いえ、やる気があるのであれば、わたくしも嬉しく思います」


 ルカエルとミカエルは行儀見習いをしたいと言っていたが、ゆくゆくはハルトヴィヒ様の侍従として傍付きにさせる予定だという。


「これまでとにかく勉強が嫌いで、礼儀作法もまともに習っていない息子達で」

「お恥ずかしい話ですが」

「大丈夫、わたくしにお任せください」


 そんなふうに返すと、アンドリュースさんとアンナマリアさんは、潤んだ瞳で感謝の言葉を繰り返していたのだった。


 朝食が運ばれてくる。

 薬草がたっぷり入ったパンは、トウモロコシ粉と獣油、脂身を使って焼いたものらしい。臭み消しとして、薬草が使われているようだ。

 それからステーキみたいに分厚いベーコン。これにも、上にフレッシュな薬草が添えられている。

 これがリンブルフ辺境伯領での朝食のようだ。

 バターを使わず、獣油と脂身を使ったパンはどのような味がするのか。

 恐る恐る口にしてみたら、サクッと軽い味わいで、薬草が豊かに香る。

 獣臭さはなく、おいしいパンだった。


「アウレリアさん、リンブルフ辺境伯領のパンはどうだろうか?」

「おいしいです」

「そうか、よかった」

「昨日の晩は頑張って、小麦粉の白いパンが出されたのよね」

「久しぶりに食べた」


 なんでもこの辺りでは小麦はあまり育たないようで、夏期に作られるトウモロコシ粉で代用されるという。

 昨晩はそうとは知らず、ごくごく当たり前に小麦粉のパンを食べていた。

 王都での普通は、ここでの普通ではないのだ。

 ベーコンもジューシーでおいしい。

 食材に感謝し、味わうこととなった。


 ◇◇◇  


  ルカエルとミカエルは朝から私のシーツを洗濯し、お風呂に使う湯を二階に運んでくれたようだ。


「見て、手が真っ赤になったの!」

「ジンジンして、痛いわ!」


 使用人達は毎日、手を酷使しながら水を運んでくれるのだろう。

 ルカエルとミカエルには、王都から持ってきた保湿クリームを手に塗ってあげる。


「いい匂いだわ!」

「本当に!」


 彼女らの苦労を目の当たりにしたので決心した。

 二階に水道を引いてみよう、と。

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