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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第三章 リンブルフ辺境伯領へ

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カワウソ妖精

「――!!」


 驚いた。まさかコロカジールを吸収し、魔石にしてしまうなんて。

 ハルトヴィヒ様も私を振り返り、何が起きたのか聞いてくる。


「アウレリア、何が起きたんだ?」

「その、こちらの神々の遺物アーティファクトの力です」

神々の遺物アーティファクトだって!?」


 そういえば、魔石工房マジリトス・ワークショップについてハルトヴィヒ様に話していなかった。

 今後、この神々の遺物アーティファクトはリンブルフ辺境伯家の宝となるだろう。

 しっかり説明しておかなければ。


「アウレリア、神々の遺物アーティファクトというのは、とてつもなく珍しい、神々の秘宝だよね?」

「ご存じだったのですね」

「まあ、一応ね」


 知っているのならば話は早い。


「こちらの品は魔石工房マジリトス・ワークショップと言いまして、箱の中に納めた物を魔石化させる能力があるそうです」

「それはすごいアイテムだ」

『さすが、神々の遺物アーティファクトなんだなあ!』


 ハルトヴィヒ様でない、第三者の声がして「はて?」と思う。

 声がしたほうを見ると、大きなカワウソが私達の会話の輪に入っていた。


「アウレリア、この子はさっきコロカジールに襲われていた巨大カワウソかな?」

「おそらくそうかと?」

「えー、そのー、知り合い?」

「いいえ。今日、初めて顔を合わせました」

「そうだよね」


 巨大カワウソの知り合いはいなかったはずだ。

 けれども親しい友人のように、巨大カワウソは私の傍にいる。


「その、あなたはどこのどなた?」

『ワタシは、旅するカワウソ妖精だよ』


 なんでも食事にありつこうと湖に飛び込んだ先で、コロカジールに襲われてしまったらしい。


「もうコロカジールはいないので、大丈夫ですよ」


 そう言ったものの、巨大カワウソは私の服の袖をぎゅっと摘まんで言った。


『怖いの』


 なんでも魔物に襲われたのは初めてだったらしく、体が竦んでしまったという。


『離れたくないよお』


 まさか巨大カワウソに助けを求められるとは。

 ただ、どうすればいいものなのか。


「君、群れの仲間は?」

『いないよお』


 カワウソ妖精は群れずに単独で行動するという。

 なんでも安寧あんねいの地を求めて、各地を行き来していたようだ。

 ここでハルトヴィヒ様が思いがけない提案をする。


「安寧の地ねえ。だったらさ、アウレリアと契約してみたら?」

「契約、ですか?」

「そう。使役下に入れば、一緒にいられるよ」

『それだ!!』


 巨大カワウソは契約に乗り気らしい。


「わたくしに妖精と契約を結べるような潜在能力ポテンシャルがあるとは思えないのですが」

『そんなことないよ!』

「ほら、巨大カワウソ本人もそう言っていることだし」


 ただ、使い魔を使役するには魔力が必要だ。

 この巨大カワウソは言語を理解し、そして堪能に喋る能力がある。

 かなりの高位妖精と言っても過言ではない。


「契約の対価は……」

『魔石でいいよ!』


 巨大カワウソはそう言って、コロカジールから作った魔石を掲げる。


『三日につき一個! あ、一ヶ月に一個でもいい!』


 それならば、私にも提供できそうだ。


「それで、君はどんな能力がある妖精族なのかな?」

『ワタシ? えーーーーっと、うーーーんっと、かわいいカワウソ?』


 能力:かわいいというのは、なかなか言えるものではない。

 たしかに少々巨大だが、顔はかわいい。


「それから?」

『むううううううう~~ん、はあああああああ、ああ、話し相手ができるよ!』

 

 リンブルフ辺境伯領での慣れないであろう生活の中で、話し相手というのは重要かもしれない。

 だんだん契約が魅力的に思えてきた。


『どうかな?』


 巨大カワウソが上目遣いで私を見てくる。


「その、わたくしでよければ、契約したいと思います」

『やったーーー!!』


 巨大カワウソの額に、魔法陣が浮かんでくる。

 古代文字で書かれていたのは〝名付け〟によって契約が成立するというもの。


「――我が名はアウレリア、汝の名は〝マーリオン〟!」


 魔法陣はぱちんと音を立てて弾け、私の手の甲に契約印を刻む。


『わあ、素敵なお名前! マー、マー、マーーーーー?』

「マーリオン、まーちゃんとお呼びしますね」

『まーちゃん、かわいい!!』


 お気に召してくれたようで、ホッと安堵する。

 さっそく、契約が成立した記念にコロカジールから作られた魔石を与えてみた。


『いただきまーす!』


 まーちゃんは大きな口を開いて、魔石をかじった。

 すると、爪先が淡く輝く。


『んんん!?』


 まーちゃんが爪先を気にすると、鋭く伸びた。


『わあ!!』


 まるでコロカジールが持つ、ナイフのような爪である。


『コロカジールの魔石を食べたら、特徴を吸収することができるみたい!』

「そうなのですね」


 戦闘能力に乏しいまーちゃんだったが、コロカジールの爪があれば、そこそこ戦えるだろう。


『わーい、まーちゃん、強くなったかも!』


 今後、さまざまな魔物の魔石を食べさせることによって、まーちゃんはさらに強くなりそうだった。

 

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