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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第三章 リンブルフ辺境伯領へ

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出発!

 結局、ハルトヴィヒ様は最後まで私の隣にいてくれた。

 これが婚約お披露目会での正しい振る舞いだったのだ、と終わってから気付く。

 そしてカーリンは最後まで、オリヴァー様と並んで現れることはなかった。


 翌日――私とハルトヴィヒ様はリンブルフ辺境伯領に向かうこととなった。

 父や使用人に見送られ、実家を発つ。


「アウレリア、幸せに暮らすのだぞ」

「はい、お父様」


 一度目の人生のときは、こんなふうに父から声をかけられることもなかった。

 病気が完治して、本当によかったと思う。


「リンブルフ辺境伯、娘をよろしく頼む」

「はい、大切にしますので」


 ハルトヴィヒ様はそう言うと、私を見ながらにっこり微笑んでくれた。


 ワイバーンの背中に乗るのは初めて。先にハルトヴィヒ様が乗り、私に手を差し伸べる。

 ぐっと一気に引かれ、騎乗することとなった。

 横乗りにするか聞いてくれたけれど、空を飛ぶので恐ろしい。

 乗馬用のドレスを着てきたので、鞍に跨がらせてもらった。

 ワイバーンが上体を上げると、視界は馬より高くなる。

 ハルトヴィヒ様は私が落ちないように、腕を回してぐっと接近する。

 吐息がかかりそうなくらい距離が近くなったので、ドキドキしてしまった。

 けれどもそれは一瞬で、次の瞬間には別の意味でドキドキすることとなる。

 翼をはためかせると、一気にふわりと浮かんだ。

 上空から王都を見下ろす。

 人々の営みをひと目で見渡すこととなった。

 生まれ育った場所を離れ、遠くの街で暮らすことは初めて。

 ドキドキと胸が脈打ち、不安もあったものの、それ以上にワクワクしている自分に気付いた。

 どうしてだろうか?

 きっと、ハルトヴィヒ様が一緒だからだろう。

 こんな気持ちは初めてだった。


「アウレリア、怖くない?」

「少し、怖いです。ですが、ワクワクしている気持ちも大きくて……不思議です」

「そっか。絶対に落ちないから、安心してね」

「はい」


 ハルトヴィヒ様がしっかり腕を回してくれているので、安定感は抜群だ。

 初めての飛行は、私に初めての感情をもたらしてくれた。


 二時間ほど飛行を続けたものの、途中で休憩を挟む。

 下り立ったのは、平地にある湖のほとり。

 ワイバーンは喉が渇いていたのか、湖の水をごくごく飲んでいた。

 私達も昼食にしよう。

 そう思って実家から持参したピクニックセットを広げる。

 魔技巧品の収納鞄からバスケットを取りだすと、ハルトヴィヒ様は驚いた。


「わあ、それ、どこから出したの?」

「魔法の鞄に入れていたんです」

「そんな物まであるんだ! 便利だなあ」


 ちなみにハルトヴィヒ様は、湖で魚を獲って食べさせようと考えていたらしい。


「釣りをされるのですか?」

「いいや、見ていてね」


 ハルトヴィヒ様はナイフを獲りだし、持ち手に紐をくくりつける。

 湖をジッと眺め、ナイフを放った。

 すると、ばしゃばしゃと水面が揺れる。

 紐を引くと、大きな魚が飛び出てきた。

 まさかこのような方法で魚を獲るとは、まったく想像していなかった。

 感嘆の声をあげようとした瞬間、魚を追うようにして大きな影が水面から飛びだしてくる。


「え!?」


 思わず声を上げてしまう。

 なぜかと言えば、六十インチはありそうな、巨大なカワウソが魚を追うように飛びだしてきたから。

 ハルトヴィヒ様も予想外だったようで、目を丸くしている。

 ただ、それだけで終わらなかった。カワウソに続くように、巨大な爬虫類系の魔物が飛びだしてきたのである。

 カワウソは魚を食べようとし、爬虫類系の魔物はカワウソを食べようとしていたようだ。

 突然の食物連鎖に、カワウソは声を上げる。


『ぎゃあ、なんだそれ!?』


 人語を喋った!? なんて驚いている場合ではない。

 ハルトヴィヒ様はナイフを手繰り寄せると、カワウソと爬虫類系の魔物も陸へ上がってくる。

 鋭い牙を持つ口元に、大きく開く顎、鋭利な爪先に、巨大な体を持つ魔物だった。


「アウレリア、下がって!!」

「は、はい!」


 おそらくあれは〝コロカジール〟と呼ばれる、ワニに似た魔物だろう。

 表皮が硬く、刃が立たないと魔物図鑑にあった。

 ハルトヴィヒ様は剣を引き抜き、コロカジールに斬りかかる。

 ガキン!! という、金属を弾くような音が聞こえた。

 ハルトヴィヒ様が戦っている隙に、カワウソは私の背後に回り込む。

 獲れた魚はしっかり抱えていた。

 コロカジールが金属音のような鳴き声をあげる。

 すると、湖から仲間が這い出てきた。

 これ以上、相手にするのは危険だ。

 ハルトヴィヒ様も一人では対処しきれないだろう。

 どうすればいいのか。

 なんて考えていたら、魔石工房マジリトス・ワークショップが魔法の鞄からコロリと転がってきた。

 これだ!! そう思って蓋を広げて呪文を唱える。


自動吸収オートドレイン!!」


 魔石工房マジリトス・ワークショップが、コロカジールの群れを一気に吸い込む。

 あっという間に、全滅させてしまった。

 箱がガタガタ揺れ始めたので、慌てて呪文を唱える。


形成フォルマーレ!」


 魔法陣が浮かび、蓋が開く。

 コロカジールは一瞬で、魔石と化した。

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