婚約お披露目会
ついに、婚約お披露目会の当日を迎えた。
会場は我が家で、立食式のパーティーだという。
招待客は百名程度だとか。
一度目の人生のときも、オリヴァー様と婚約お披露目会を行った。
広い会場で、招待客は五百人以上いたような気がする。
準備がとにかく大変で、当日はすっかりへとへとになっていたのを覚えている。
オリヴァー様はほとんど会場におらず、喫煙室と遊戯室にいたと聞いたときは、がっくり脱力してしまったのを覚えている。
カーリンとオリヴァー様との結婚は急遽決まったものなので、行わなかったらしい。
父からカーリンとオリヴァー様夫妻も招待したようなのだが、何も言われないといいが……。
ドレスは昨日、ハルトヴィヒ様が選んで買ってくれた物に袖を通す。
上品な深い青の一着だ。
メイドや侍女の手を借りつつ纏う。
コルセットを使わないドレスで着心地がいい。
リンブルフ辺境伯領では身なりを整えてくれるメイドや侍女はいないだろうから。
アルテンブルク侯爵家の大広間には、すでに招待客が集まっているらしい。
その中に、オリヴァー様とカーリンもいるという。
もう顔を合わせることもないと思っていたのに……。
会場が整ったようなので、向かうこととなる。
入ろうとしたら、背後から声がかかった。
「ああ、いた! アウレリア、お待たせ!」
ハルトヴィヒ様がやってくる。
「アウレリアの部屋に行ったらさ、もう行ったとか言うから!」
婚約お披露目会なのだから、一緒に行くべきだったのだろう。
一度目の人生では一人で入場したので、すっかり失念していた。
「ドレス、とても似合っているね」
「ありがとうございます」
こういうふうに褒めてもらう機会がないので、なんだか照れてしまう。
「ハルトヴィヒ様の装いも、すてきです」
「ありがとう! これ、昨日アウレリアが選んでくれたやつ! よかった!」
そういえば、お互いに服を選び合ったのだ。
同じ青系の色合いで、お揃いみたいに見える。
「アウレリア、行こうか」
「はい」
ハルトヴィヒ様はそう言って、手を優しく差し伸べてくれた。
私はそっと、その手に指先を重ねる。
会場に入ると、拍手で迎えてくれた。
あっという間に人に囲まれ、祝福の言葉をもらう。
ハルトヴィヒ様は常に私の隣にいて、受け答えをしてくれた。
これが婚約お披露目会なのか、としみじみ思ってしまった。
最後にやってきたのはカーリンだった。
オリヴァー様と一緒にやってくるかと思っていたのに一人である。
カーリンは私とハルトヴィヒ様を交互に見て、クスッと笑った。
「あらやだ、余り者同士、すっかりお似合いじゃないの」
嫌味たっぷりの一言を言ってくれる。
こういう言葉をぶつけられることには、慣れっこだった。
何も言い返さないでいると、ハルトヴィヒ様が言葉を返す。
「君は、パートナーである夫君と一緒じゃないの?」
「オリヴァー様は、いらっしゃっているわ」
「どこに?」
「さあ?」
きっとオリヴァー様は喫煙室か遊戯室にいるに違いない。
ただ、カーリンは把握していないようだ。
そんなカーリンを、ハルトヴィヒ様は哀れむ。
「可哀想に……ひとりぼっちで寂しいんだね」
「な、なんですって!?」
ハルトヴィヒ様の何気ない一言が、カーリンにダメージを与えてしまったようだ。
「こういう場で、夫婦は一緒に行動するのが普通なのに、ケンカでもしたの?」
「し、していないわ! 大きなお世話よ!」
「ごめんね」
ハルトヴィヒ様は意識せずに、カーリンに精神的なダメージを与え続ける。
さすがと言いたくなった。
「田舎者にあれこれ言われたくないわ!」
「カーリン、言葉が過ぎています」
私のことをあれこれ言うのは構わないが、ハルトヴィヒ様について文句を言うのは許さない。
毅然とした態度で注意する。
「な、何よ、お姉さんぶっちゃって!!」
「お姉さんぶることは、いけないことですか?」
カーリンをまっすぐ見つめて問いかける。
すると、返す言葉が見つからなかったのか、カーリンは踵を返し「帰るわ!!」と言って去って行った。
「嵐みたいなお嬢さんだ」
ハルトヴィヒ様の言葉に、深く頷いたのは言うまでもない。
その後、婚約お披露目会は和やかに過ぎていく。
たくさんの人達に祝福されて、すてきなひとときを過ごすことができた。




