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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第二章 アウレリア、二度目の人生

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魔技巧品について

 ハルトヴィヒ様は店内の商品に興味津々な様子だった。


「アウレリア、これは何?」

「魔石灯と言いまして、魔石の力で灯りを点す魔技巧品です」

「いちいちオイルを入れなくても、灯りが付くんだ!」

「そのようです。ただ、魔石の力は無限ではありませんので、魔力が切れたら魔石を交換する必要がありますが」


 それても、通常のオイルよりは保つ上に明るいので便利だ。


「これがあれば、冬期の火事も防げるかもしれない」


 なんでも冬期は乾燥が原因で、領内で火事が起こることがあるのだとか。

 他にも、魔導保冷庫や洗濯器、窯など、魔石のエネルギー源を使って利用できる魔技巧品にハルトヴィヒ様は感心しっぱなしだった。


「魔石の力でこんなにも暮らしが便利になるなんて驚いたよ」


 これまで使っていたものと言えば、薪に泥炭ピート、それから獣から絞った油などもあったという。


「獣油は火を付けるとけっこう臭うんだよね。加工にも火を使うし、薪のほうがマシじゃないかって、何度も領地で論争が起こっているくらいで」


 魔石ならば臭いもないし、比較的長持ちする。

 そんな話をすると、可能であるならば、リンブルフ辺境伯領でも魔技巧品を取り入れたいという。


「まずは魔技巧品の職人探しをしなければいけないか」

「そうですね」


 領内で魔技巧品を普及させるのであれば、職人が常駐していたほうがいいだろう。

 ただ、この国の果てにあるリンブルフ辺境伯領に来てくれるのか。それが問題だ。

 そんな話をしていると、以前私を接客してくれた羊獣人の店員がやってくる。


「いらっしゃいませ、何をお探しでしょうか?」

「一通り、生活に必要な魔技巧品を揃えたいのですが」

「かしこまりました」


 ひとまず試しで、魔石灯を五つ、魔導保冷庫や洗濯器、窯、風呂釜を購入してみた。


「どちらにお届けしましょうか?」


 リンブルフ辺境伯領――と言いたいところだが、配送料が気になる。

 どうしたものか、なんて考えていたら、ハルトヴィヒ様が指定してくれた。


「アルテンブルク侯爵邸に運んでもらえるかな?」

「はい、かしこまりました」


 なんでもこれくらいであれば、ワイバーンで運べるという。

 かなり力持ちのようだ。

 支払いは父宛に――と思ったのだが、ハルトヴィヒ様が済ませてしまった。


「よろしいのでしょうか?」

「うちで使う魔技巧品だから、俺が払うのは当然だよ」


 金銭面では苦労をさせない、とハルトヴィヒ様はおっしゃってくれた。

 そのあと、ハルトヴィヒ様と共に仕立屋さんに向かって服を注文した。

 なんでもリンブルフ辺境伯領にドレス職人は存在しないという。

 オーダーメイドで数着注文し、半年後に受け取ることとなった。

 ハルトヴィヒ様も、いくつか服を仕立てた模様。


「あとは、何か必要な品などございますか?」

「うーん、もう思いつかないかも」


 疲れただろうから、少し喫茶店で休もう。

 ハルトヴィヒ様はそう提案してくれる。


「もしかして、お屋敷に戻ったほうが休める?」

「いいえ、喫茶店、行ってみたいと思っていたんです」


 同じ年頃のご令嬢が集まって、楽しそうにしていたのを羨ましく思っていたのだ。

 まさか、それが叶うなんて夢にも思っていなかった。


 王都で人気の喫茶店は行列ができていたので、少し路地を入り込んだ先にある、歴史がありそうな喫茶店で休むことに決めた。

 店内は薄暗いが、雰囲気があっていい。

 店主と思わしき男性のピアノ演奏が始まったのも、素敵だと思った。

 名物は紅茶と、店主の奥方特製のベリーパイだという。

 注文すると、焼きたてが届けられた。

 パイ生地はサクサク。ベリーはジャムを使っているようだが、甘酸っぱくておいしい。


「うちの領地でも、初夏から秋にかけていろんな種類のベリーが採れるんだよ」

「まあ、素敵ですね」

「でもね、採取に夢中になって、魔物の接近に気付かず、襲われる領民があとを絶たなくて」

「それはそれは、ベリー摘みは命がけなんですね」

「そうなんだ。って、こんな話は、楽しいこの場に相応しくなかったかな?」

「いいえ、もっとリンブルフ辺境伯領について、お聞かせください」


 そう言うと、ハルトヴィヒ様は嬉しそうに微笑んでくれた。

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