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妹が「ずるい!」と言うので、二度目の人生は大公と結婚するのを諦めて辺境伯に嫁ぎます  作者: 江本マシメサ
第二章 アウレリア、二度目の人生

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二人の在り方

 ハルトヴィヒ様や父と共に紅茶を囲む。

 お茶請けのお菓子は、リンブルフ辺境伯家の菓子職人パティシエ特製の、サクランボパイだった。


「結婚式についてだが、リンブルフ辺境伯はどのように考えている?」

「アウレリア嬢の希望をすべて叶えるつもりです」


 驚いた。私の希望を第一にしてくれるなんて。


「では、アウレリアはどうしたい?」

「わたくしは――リンブルフ辺境伯領で挙げられたらな、と考えております」

「王都ではなくていいの!?」


 ハルトヴィヒ様が驚いた顔で聞いてくる。


「立派な教会もないし、友人、知人、ご家族をお招きするには、辺鄙すぎる場所だと思うんだけれど」

「参列者は、その土地に住む方々がいれば満足です」

「アウレリア、私は招待してくれるだろうか?」

「もちろん、お父様はご招待します」


 準備に時間がかかると言われても、私はリンブルフ辺境伯領で結婚式を挙げたいと思った。

 王都での人付き合いに、疲れていたとも言えよう。


「では、結婚の準備に一年ほどかけ、アウレリア、お前はリンブルフ辺境伯の婚約者として、土地に馴染むといい」

「はい!」


 結婚について話をしただけで、父は「あとは若い二人で」なんて言っていなくなる。

 もちろん、完全に二人きりではなく、メイドや侍女が傍に控えているわけだが。


「アウレリア嬢、このような場を作ってくれて、感謝します」

「その、ここまでやってくるのに、大変だったでしょうから」

「いいえ、まったく! 平気なんです」


 すさまじい体力の持ち主らしい。羨ましく思ってしまう。


「ハルトヴィヒ様、その、敬語は使わなくてもけっこうですので」


 これから夫婦になるのだ。肩肘張るような関係でいたら、疲れてしまうだろう。

 余計なお世話かと思いきや、ハルトヴィヒ様はパッと表情を明るくさせた。


「いいの? ありがとう! なんだか言葉遣いが間違っているような気がして、さっきからむずむずしていたんだ」


 余計な申し出だったかも、とちらりと思ったのだが、そうではなかったようで安堵する。

 ついでに、名前も呼び捨てにするように言っておいた。


「アウレリア、君もよければ、無理がないように接してほしい」

「ありがとうございます。私はその、この状態が普通ですので」


 堅苦しい女だと思われるかもしれない。一度目の人生のとき、オリヴァー様にもそう言われた。

 これまで送った手紙や贈り物すら、余計なお世話だった可能性がある。

 どういう態度が普通なのか、だんだんわからなくなってきた。

 この先、敬語を使わない努力をしたほうがいいのか。なんて思っていたが――。


「わかった。それが君らしいってことなんだね」

「え、ええ……。その、ハルトヴィヒ様、よろしいのですか?」

「何が?」

「同じように、敬語を使わないこととか、ハルトヴィヒ様を呼び捨てにしなければならないこととか」

「それは人それぞれ違うからさ。アウレリアはアウレリアの自然な態度があるだろうし、俺はそれを尊重したい」

「ありがとう、ございます」


 こんな私でもいいのか……。

 それを思えば、なんだか気が楽になる。


「アウレリア、どうして泣きそうな顔をしているの? 何か悲しいことがあった?」


 こういうときでも、私はこの世の不幸を背負ったような顔をしているらしい。

 ハルトヴィヒ様の前では素直になろう。

 きっとこのお方は、私を否定しないだろうから。


「いえ、ハルトヴィヒ様の心遣いが嬉しくて……涙が出そうになっているのかもしれません」

「そうだったんだ。なーんだ、よかった!」


 明るい彼の態度に救われたような気持ちになる。

 夫となるお方が、ハルトヴィヒ様でよかった。

 そう、心から思えるようなひとときとなった。


 ◇◇◇


 夜――食事を囲む中で、父は思いがけないことを言った。


「リンブルフ辺境伯領に戻る前に、婚約お披露目会を開きたい」

「お父様、突然そのようなことをおっしゃって、すぐに開けるものでもありませんのに」


 最低でも、計画に半年は必要だろう。

 ハルトヴィヒ様はそこまで長く王都に滞在できない。

 それとも、婚約お披露目会をしに王都に戻ってくるように言いたいのか。


「そこまで大がかりなものでなければ、明後日にでもできるだろう。参加者も、大勢呼ぶ予定はない」


 身内だけが集まる、こぢんまりとした婚約お披露目会を考えているようだ。

 ハルトヴィヒ様は大丈夫なのだろうか。

 数日も王都に滞在する予定ではなかっただろうし。


「ハルトヴィヒ様、父はこのように言っておりますが、いかがいたしましょう?」

「光栄です。ぜひとも、婚約お披露目会を開けたらなと思っております」

「そうか、そうか。ならば、すぐに準備させよう」


 無理をしていないか、心配になって小声で聞いてみる。


「大丈夫だよ、逆に、ありがたいくらい」

「でしたらいいのですが」


 そんなわけで、明後日に婚約お披露目会を開くこととなったようだ。

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