【第3話】「何も聞きたくない」と目を閉じたら、激怒する上官を無言でガチャ切りしていた
コッ、コッ、コッ。
エリスの懐から、乾いた通知音が連続して鳴っている。
航一郎は、胃を押さえた。
(さっきの誤送信、完全に上にバレてる……)
エリスが震える手で『騎士の認識票』を取り出すと、空中に光の板が浮かび上がった。
そこには、血相を変えた第7小隊長と、支部長の姿が映っていた。
「エリス! 貴様が送ってきたあの報告はなんだ! お前の前にいる男を出せ!」
怒鳴り声が、静かな森に響く。
航一郎は目を固く閉じた。
(俺は関係ない! もう何も聞きたくない!)
《音声の遮断を受理》
《対象の音声を遮断します》
(えっ?)
小隊長たちの怒声が、ピタリと消えた。
光の板のなかでは、上官たちが額に青筋を立てて口を動かしている。
だが、音はない。
(そっちを消すの!?)
航一郎は冷や汗を流し、うずくまった。
◇◇◇
エリスは、光の板のなかの上官たちを見つめた。
声は、聞こえない。
エリスは小さく口を開いた。
「……ぁ」
声は出た。
エリスの指から力が抜け、認識票が地面に落ちた。
カコン、と乾いた音が響く。
青年は動かない。
◇◇◇
(なんで隣の子、身分証落として呆然としてんの!?)
画面のなかの上官たちは、顔を歪め、口を激しく動かしている。
(マズい、火に油を注いでる! もう限界だ。俺だけここから抜けさせてくれ!)
《退出処理を受理》
《通信を終了します》
パツン。
空中に浮かんでいた光の板が、消えた。
森は静かだった。
エリスは声を発することすら恐れ、口元を強く押さえたまま動けない。
航一郎は冷や汗で全身を濡らし、胃を押さえながら心のなかで悲鳴を上げた。
(勝手に通信切るな!!!)
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