表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/77

謝ってください

 そこからは、一方的な展開だった。瑠璃がどれだけ魔力光線を放っても、クリヤを捉えることはない。むしろ、必死になって光線を放ち続ける瑠璃をクリヤは笑うのだった。



「あはははっ! 弱すぎますね、一条瑠璃。その程度で先輩のお嫁さんになる? 身の丈に合わない夢を見るのはやめなさい。滑稽ですよ!!」


「だ・か・らーーー!!」



 瑠璃は一瞬だけ視界の隅に映ったクリヤの方を見る。



「私はそんな夢見てないっての!!」



 感情のままに魔力光線を連発するが、ただ岩肌を削るだけ。魔力の消費も激しく、瑠璃の足取りは覚束ないようだった。



「だったら、先輩に謝れ!」



 瑠璃は何かに弾き飛ばされ、ついに膝を付いた。自分が何をされたのか分からない。恐らくクリヤからしてみると、ちょっと小突くような一撃だったかもしれないが、それを受けて立っていられないほど、瑠璃は疲弊していたのだ。



「あ、謝る?」



 意味を理解できない瑠璃の正面に、クリヤが姿を現す。



「そうです、謝りなさい。これまで、付きまとってすみませんでした、と」



 勝ち誇ったようなクリヤの表情に、燃え尽きようとしていた瑠璃の怒りが、再び勢いを取り戻した。



「ふざけるんじゃ……ない、わよ」



 しかし、体の方は限界が近かった。瑠璃はクリヤに向かって手の平を向けようとするが、上手く腕が持ち上がらない。



「あはははっ! どこを狙っているのです? その角度では岩が削れるだけ。まぁ、しっかり狙ったところで当たらないものは当たりませんけどね!」



 クリヤの言っていることは正しい。だが、瑠璃は右手の宝玉に魔力を集中させる。



「おやおや。最後の力を振り絞るおつもりですか? 先輩に対する執着がそうさせるのかもしれませんが、残念でしたね! あの方は貴方のような三流魔女になびくお人ではないのですよ!」


「シャルヴァ!!」



 瑠璃は腕が持ち上がらないまま、魔力光線を放った。それは、クリヤの言う通り足元の岩に直撃する。やはり、意味のない一撃のように思われたが、魔力の光が岩に張り付くように、(とど)まっていた。そして、瑠璃の掛け声。



反転(ウラトナ)!!」



 岩に張り付いていた光が、再び魔力光線となって跳ね上がる。それは、瑠璃とクリヤのちょうど真ん中に位置していた岩で、ワンバウンドしてから放たれた形となった。思いもしない魔力光線の動きに、クリヤは回避できずに直撃を受ける。



「クリヤ!」



 ここまで、静観に徹していたプレーマだが、心配の声をあげたようだった。爆炎の中へ走っていくプレーマを見て、瑠璃は何とか撃退した、と息を吐く。



(正直、運が良かった……。使うチャンスがあると思って、魔力を込めた血を落としておいたけど、ギリギリのところでいい場所に立ってくれた。それがなければ、殺されていたでしょうね)



 瑠璃は自分の血に魔力を込められる。それは、瑠璃の魔力を遠隔でコントロールする効果を持つものだ。それを意図的に地面へ落としたことで、何とか反撃の糸口を見つけだしたと思ったが……。



「えっ?」



 瑠璃の視界が一瞬光った。いや、すぐ横を熱線が通過した。何が起こったのか、瑠璃はすぐに理解する。煙の中から姿を現すクリヤ。そして、その右手は銃身の形状に変化させていた。



(魔力が……足りなかった!?)



 確かに、クリヤの肩口はライブスキンが焼けてメカが露出していた。しかし、威力が足りず、破壊するに至らなかったらしい。先程までは、楽しげだったクリヤだが冷たい目でこちらを見ている。



「おい、クリヤ。殺すなと言ったぞ?」



 プレーマが制止するが、クリヤの殺意は消えないようだった。



「殺しはしません。手足を焼き切るだけです」


「それもダメだ。俺一人で面倒見る自信がない」


「ならば殺せばいいじゃないですか」


「こら、待て!」



 銃身となったクリヤの右腕の先が銀色に光る。まずい、躱す手段がない。瑠璃は心臓がぐっと縮まるような感覚と同時に、白く染まる思考を意識せずにはいられなかった。


 それでも、発射の瞬間に体を伏せて躱せば……。何とか生き残る術を考える瑠璃だったが、次の瞬間、足元に妙な揺れを感じた。



「なんだ?? 揺れているのか?」



 その振動は、瑠璃だけが感じたものではないらしく、プレーマもクリヤも辺りを見回している。だが、地鳴りと共に揺れは少しずつ激しくなり、プレーマとクリヤの足元に大きな亀裂が発生した。どうやら、プレーマはこの現象の原因を理解したらしい。



「ちっ! 瑠璃の魔法で地面がガタガタになっていたのか!!」



 なるほど、と瑠璃は思う。自分の攻撃はクリヤに当たらなかったが、何度も地面や周辺の岩肌を貫いた。その影響で地面が緩くなったのだ。ただ、自分の近くはそれほど揺れは激しくない。だとしたら……。



「先輩、地面が崩壊します!」


「えーい、クリヤ! 着地は任せたぞ!!」


「お任せください! 邪教徒、ゴー!!」



 意味不明な掛け声と同時に、プレーマとクリヤの足元が完全に崩壊する。二人は崩れる岩々と共に、崖の下へ落下してしまうのだった。間もなくして揺れが収まり、瑠璃は一人呟く。



「た、助かった……」



 それから、彼女はしばらく動けなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ