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解き放たれる悪魔!

 ラストナンバーズ。それは百年続いた魔女戦争を終焉に導いたと言われる、四体の女性型アンドロイドを指す。その能力は規格外で、一体だけでもフルパワーを解放すれば、コーラルを滅ぼすことも可能と言われている。


 ただ、彼女らの居場所は不確定であり、もはや御伽噺に出てくる魔女でしかないと思われていたが……。



「ははっ、サザンカ! 俺を裏切った報いを受けろ!!」


「や、やめて……ウガル! ラストナンバーズを起動させたら、すべてが灰になると魔女様が!!」



 既にサザンカ団のリーダーとしての意思を失ったのか、本来の口調に戻ったサザンカを見て、ウガルの怒りはさらに激しさを増す。同時に、彼の仲間たちが荷車を引きながら駆け付けた。そして、そこには氷漬けにされた女性型のアンドロイドの姿が……。



「この氷は魔法によるもの! だが、魔女様は俺とサザンカだけに解除方法を教えてくれたのだ。いつでも、この悪魔を解き放つことができるのだぞ!!」



 正気を失っていると思われるウガルの発言に、翡翠が呟く。



「悪魔とは失礼だなぁ……」



 だが、サザンカは自分の軽はずみな行動が、ついにコーラルを破滅に導いてしまうと信じ切っているようだった。



「ウガル、もうやめて! 何でも言うことを聞くから!!」


「ふんっ! 許してほしいなら、その男から離れて俺の前に膝を付いてみせろ!」


「わ、分かったから……」



 サザンカはアナトの背から降りる。同時に、アナトは翡翠に視線を向けると、彼女はただ肩をすくめる。それが、どういう意味なのか理解したアナトは、ウガルの元へ歩み寄ろうとするサザンカの手を取った。



「サザンカ、言うことを聞く必要はない。君は自由だ。一緒に、このコーラルで生きよう」


「アナト……」



 妙に噛み合ってしまう二人の会話は、ついにウガルの理性を失わせた。



「ゆ、許さーーーん!!」



 甲高い声で叫ぶと、ウガルは荷台の上に置かれた氷漬けのアンドロイドに駆け寄る。



「ニラーカラナム!!」



 そして、解除の呪文を唱えたようだ。氷がウソのように溶けて、荷台を水浸しにすると、支えを失ったアンドロイドが倒れる。



「さぁ、目覚めよ! 悪魔のアンドロイド、ラストナンバーズよ! 愚かしいサザンカを。いや、コーラルに生きるすべての命を根絶やしにするのだ!!」



 その祈りに応えるのか、アンドロイドはゆっくりと顔を上げ、長い黒髪から表情を見せる。が、破損が激しく、人工皮膚(ライブスキン)は所々破れ、メカニック部分が露出していた。


 しかし、人々の恐怖を煽るには十分だ。サザンカ団を名乗った若者たちは、集会場に駆け込むと、大人たちと一緒に裏口から逃げ出してしまった。



「あ、人質が解放されたみたい」



 翡翠の呟きに、アナトも「一件落着、というやつだな」と頷く。ただ、大きな問題は残されたままだ。



「ざ、ざざ……」



 女性型アンドロイドが音声を発する。それは言葉として形を成すものではないが、どこか強い意志を感じられた。それは、彼女が何かを求めるように手を伸ばしたからかもしれない。



「あ、あ、あ……あああああーーー!!」



 突如発せられた奇声に、残った人々は耳を塞ぐが、翡翠だけが平然とした様子でアナトの横に立った。



「あのアンドロイド……たぶん、ウィルスに犯されているね。このままだと暴れ出すんじゃないかなぁ」


「それは困るな。翡翠、止めてくれるか?」



 アナトに頼られることが嬉しいのか、翡翠はどこかくすぐったそうに笑う。



「もちろんだよ、アナトくん。死なない程度に止める、でしょ?」


「ああ、それが助かる」


「オッケーオッケー。それじゃあ、見てなさい。翡翠さんの活躍を!」



 無警戒と言えるような足取りで、女性型アンドロイドの方へ歩み寄る翡翠を見て、ウガルは目を疑ったようだ。



「ば、馬鹿なのか?? あれはラストナンバーズだぞ」


「えーい、ここにおわす方が誰と誰と心得る!!」



 驚くウガルだったが、突然あらぬ方から声があり、振り返る。そこには、今までどこに隠れていたのか、スフィアの姿があった。



「この方はコーラルの魔女として名高い、翡翠さまであるぞ! 大地の汚染につながるトラブルは、どんなものでもたちどころに解決してみせるわ!!」



 スフィアは自分のことのように胸を張っていたが、すぐに肩を落として呟く。



「本当なら、こうやって瑠璃さまを紹介したかったのに……」



 ただ、ウガルにとっては効果は絶大だったらしい。



「こ、コーラルの魔女だと……??」



 噂を聞いたことがあるらしく、その表情を曇らせている。だが、彼も自信があるらしい。



「しかし、こいつはラストナンバーズだぞ! コーラルの魔女がなんだ! 止められるなら止めてみせろ!!」


「ら、ラストナンバーズ??」



 驚いたのはスフィアである。どうやら、詳しい状況を理解しないまま、参加してしまったようだ。一気に不安になったのか、スフィアは顔を青くしながら翡翠を見る。



「あの、翡翠さま……大丈夫でしょうか?」



 今にも泣き出しそうなスフィアに翡翠は笑顔で答えた。



「大丈夫大丈夫! 例え本物のラストナンバーズが現れたとしても、この翡翠さんに任せなさい!」



 同時に、謎の女性型アンドロイドが地を蹴るのだった。

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