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サザンカ団の大義ある目的

「アナトと言ったな! 一人で乗り込んでくるとは……私を舐めているのか!?」



 サザンカはアナトに詰め寄ると、低い位置から思いっきり爪先を立てて、睨み付けてきた。どうやら、怒らせてしまったらしい。しかし、アナトにしてみると、これだけ気性の激しい人間は初めてだ。


 もちろん、瑠璃も気性は激しい部類にあるが、怒らせなければ友好的である。ここまで前触れもなく怒りをぶつけてくる、という意味では、初めてのタイプだった。



「舐めてはいない。ただ、話を聞きに来ただけなんだ」


「話をぉぉぉ!? やはり、私を舐めているようだな!!」



 なぜ、火を油に注ぐ結果になってしまったのか、サザンカはわなわなと握った拳を震わせると、ぶんっ、と音を立てて殴りかかってきた。



「ま、待て! まずは、なぜ怒っているのか、話を聞かせてくれ!」



 身を反らして拳を躱し、何とかサザンカを理解しようとするアナトだが、彼女は渾身の一撃が当たらなかったことに、さらに怒りを覚えてしまったらしい。



「避けるな! 舐めやがって!!」



 ぶんぶんと拳を振り回すが、小柄なサザンカの攻撃はアナトに届くことはない。しまいには、サザンカは疲れ果ててしまったのか、その場に座り込んでしまった。



「はぁはぁ……舐めやがって!!」



 仲間の一人がサザンカのために水を持ってきて、彼女はそれを一気に飲み干すと、アナトの方を睨み付けた。だが、アナトは笑顔を返す。



「その冠、凄く似合っている。可愛らしいな」


「えっ!?」



 そう言われ、サザンカは目を丸くした後、動揺したように頭の上に乗せた王冠を手で抑える。彼女にとって不意打ちだったのだろう。落ち着けと自分に言い聞かせるように、呼吸を整えた後、サザンカは言った。



「いいだろう、戦士サザンカの攻撃をここまで躱したやつは初めてだ。私たちの目的を話してやる」



 これまでの時間はなんだったのだろう。疑問に思わなくもないが、アナトは顔に出さず、サザンカが語り出すまで待った。しかし……。



「なりません、サザンカ様!」



 割って入る男が一人。メガネをかけた、いかにも神経質そうな男だが、彼の登場にサザンカも少し不服そうであった。



「ウガル。なぜ、ダメなんだ?」



 メガネの男、ウガルはどうやら彼女の右腕と言えるポジションなのだろう。サザンカは大人しく意見を聞くつもりらしい。ウガルはメガネを押し上げながら言う。



「なぜって、我々の使命は魔女様から授かった大事なものです。おいそれと部外者に話すわけにはいきません」


「むぅ……。しかしだな」


「いいだろうか?」



 アナトが右手を挙げて発言の意思を示す。誰かが許可を出したわけではないが、アナトは意見を口にした。



「君たちの目的が分からなければ、僕も協力できない。サザンカ、君の気持ちを教えてくれないか?」


「きょ、協力してくれるのか?」



 サザンカは心が動きつつあったが、ウガルはそれを見逃さない。



「ダメですよ、サザンカ様!」


「いや、この男は頼りになりそうだ。ここに一人で乗り込んでくる度胸もあるし、味方に付ければ、かなりの戦力になる。ウガル、お前がダメだと言っても私はこいつに話すぞ!」



 威圧するように眉を寄せるウガルだが、サザンカはそれに気付かず、アナトに目的を話すのだった。



「良いか、アナト。このコーラルは日々汚染が進行している。それは誰のせいか分かるか? すべて、コーラルに住む人間とアンドロイドのせいだ。やつらは経済活動だ、発展のためだと言って働き回るが、その過程でコーラルのあちらこちらを掘り起こし、木を切って、川を汚す。さらには、正しくない祈りを捧げて大地まで腐らせる有り様だ。このままではコーラルの美しい自然が消え去るのは、予想にたやすい」



 ここまでは、コーラルの自然を愛する者の主張のようだが、問題はここからだった。



「だから、私は働くべきではないと思う。いや、人間もアンドロイドも生きていてはいけないのだ。そのため、我々、サザンカ団はすべての人間とアンドロイドを殲滅し、豊かな自然を取り戻すと決意した。どうだ、アナト。お前も一緒にコーラルを救ってはくれないか!?」



 黙っていたアナトだが、サザンカが一息に喋り終わると、冷静に質問する。



「……それで、サザンカはコーラルの人間とアンドロイドすべてを殲滅した後は、どうするつもりだ?」


「もちろん、私も自決する。それがコーラルのためだ」



 大きな意義を背負っている、と言わんばかりに胸を張るサザンカだが、アナトは数秒思考するような素振りを見せた後、彼女にハッキリと言うのだった。



「うん、すまない。僕には協力できないな」


「なっ……なに!?」


「僕は間違ってことはしたくないんだ」



 一蹴されてしまい、固まってしまうサザンカだが、すぐに怒りが込み上げてきたようだ。



「なぜだ! すべて私の言う通りだろ?? 何が間違っているというのだ!?」


「そうだな……。まず僕は働くことが好きだ。真面目に働けば、たくさんの人が喜んでくれる。あれが間違いだと思えない。それに、僕は人も殺したくない。自分も死にたいとは思わない。つまり、サザンカの考えとはすべて真逆だから、協力できそうにない。色々話してくれたのに、すまなかった」



 悪びれた様子もなく謝るアナトに、サザンカの怒気がみるみるうちに膨れ上がっていく。後ろでウガルが「当然だ」と言わんばかりに冷笑を浮かべながら、鼻を鳴らしているが、サザンカはそれに気付かず叫ぶのだった。



「な、舐めやがってーーー!! 私の心を弄んだ罪は重いぞ!! 死ねえええーーー!!」



 傍に置かれていた槍を手に取ると、サザンカはアナトに襲い掛かるのだった。

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