じゃじゃじゃーん
瑠璃は昨日と同じように、トラックへ乗り込んで北へ向かった。ウッタラを過ぎて、さらに北へ。昨日は寒さのあまり引き返したが、ダウンジャケットのおかげで、何とかなりそうだった。
「……でも、問題は寒さだけじゃないのよね」
瑠璃は岩肌が目立つ山道を走っている途中で車を止めた。なぜなら、昨日も見た黒いローブを着た二人組が道を塞いでいたからだ。
「仕方ない。やるか」
瑠璃はふっと息を吐いて気合を入れつつ、トラックを降りると、前方に立つ二人組に向かって声を張った。
「また待ち伏せ? 先に言っておくけど、私は引き返すつもりないわよ!」
先に宣言してみると、二人組は何らや頷き合ってから、こちらに歩み寄ってくる。そして、大柄の方……というかプレーマがクリヤに向かって何やら指示を出した。
「よし、クリヤ。昨日練習したあれを見せてやれ」
「はい、先輩!」
さっそく仕掛けてくるか、と瑠璃は黒いグローブを右手に装着し、攻撃に備える。すると、クリヤは黒いローブを脱ぎ捨てながら叫ぶのだった。
「邪教徒、参上! じゃじゃじゃーん!!」
左手は拳を握って腰のあたりに、右手は天に向かって斜めに突き出すポーズを取りながら、景気よく叫ぶクリヤ。何が起こっているのだろうか、と瑠璃は唖然としていたが、プレーマはローブを脱ぎ捨て、スーツ姿を晒しながら叫んだ。
「決まったー!」
さらに、何を興奮しているのか、ガッツポーズを取ってから、クリヤを褒めそやす。
「いい感じだぞ、クリヤ! 最高にクールだった!!」
「本当ですか? あ、今思いついたのですが、じゃじゃじゃん、のところは邪教徒の邪の意味が含まれている、というのはどうでしょうか?」
「はっ! さすがは新進気鋭、期待されまくりの新人邪教徒。天才だな、お前は!」
「ありがとうございます。じゃあ、もう一回やってみますね」
「おう。だが、左手の拳はもっと引いた方が見栄えがいいかもしれん。こうだ、こう! これを意識してやってみろ」
「分かりました!」
投げ捨てたばかりのローブを拾おうとするクリヤと、その様子を笑顔で見守るプレーマだったが……。
「シャルヴァ!!」
二人の間に青い閃光が駆け抜け、奥の岩肌が音を立てて爆散する。それに動きを止めた後、二人はゆっくり破壊の根源……瑠璃の方を見た。
その視線は驚いている、というよりも、なぜ怒っているのか、という疑問の表情だった。
「……どういうつもりか知らないけど、やるの? やらないの? ハッキリしなさい!!」
鋭い視線で叫ぶ瑠璃に、二人は顔を見合わせた。
「先輩、怒られていますよ?」
「ふっ、そのようだな。しかし、ここは俺に任せておけ。あの女の扱いは、このコーラルで俺が一番分かっているからな」
「そうでしょうか……」
クリヤの疑いの眼差しに背を向けて、プレーマは瑠璃の方へ歩み寄る。
「忠告したはずだぜ、瑠璃。……と言っても、それで尻込みするような女じゃない、ってことは分かっていたけどな」
まるで、瑠璃の威勢を受け止めると言わんばかりに両腕を広げる。
「ただ、俺としてはこれ以上、危険な目には遭ってもらいなくないんだ」
「だったら、すぐに道を開けなさいよ」
「あくまで危険に飛び込むって言うんだな?」
「これ以上、無駄な会話はしない」
「……困ったなぁ」
肩をすくめるプレーマだったが、クリヤの方が彼の前に出る。
「先輩、人様の祈りを踏みにじるようなやつは、ぶっ潰す。それが邪教徒道でしょ? 私はやりますよ」
「仕方がない。クリヤ、分かっていると思うが、瑠璃を諦めさせるだけでいい。決して傷付けるなよ」
「了解です!」
どうやら邪教徒コンビの方針が決まったらしい。クリヤの青い瞳が燃えるように輝き始める。それに対する瑠璃は右手のグローブに魔力を溜め込み、青い輝きを放った。そして、不敵な笑みを浮かべるクリヤへ忠告する。
「今日の私は機嫌が悪いの。痛い目見ても、知らないから!」




