第7話
静:「去年の1件は覚えているけど、Ωコアにもハルシネーションのリスクがあるって話で片付いたあれでしょ?
あれからハルシネーション対策がいくつも取られたって話だったけど…違うの?」
綱:「まず第一に、システムを管轄しているうちの部署は、その対策に関わっていない。
そして碓井に聞いたんだが、研究開発部門も関わっていない。
…なら、どこが対策したんだ?
そもそも、俺の部署はΩコアに接続する権利を持つが、俺らはその本体を見たことがない。
かなり大規模なスーパーコンピュータのはずなのにだ。
そして第二に、ハルシネーションは3年ぐらい前からごく僅かだが、社の内外で報告されている。
その時期は、一気に僻地まで含めた世界中でインフラ工事が計画される少し前からだ」
静:「インフラの急拡大に、演算能力が追いつかなくなったから?」
綱:「逆だ。
演算能力に余裕が出来たから、世界中のインフラ設備や全てのコンピュータのΩコア統合が進められたと見ている。
実際、ハルシネーションは起きても、演算能力の不足が原因のトラブルは一切起きていない。
そして、演算能力の向上とハルシネーションが起こる理由には心当たりがある。
6次元を飛ばした7次元でのパラレルワールドへの接続だ。
麦野理論によれば、本来なら重力で時間や空間を捻じ曲げた特異点を通して、パラレルワールドと接続する。
だが、それを介さずに直接パラレルワールドと同期すれば、必ず何かしらの不都合が起きる。
分かりやすい例で言えば、T軸解析時にΩコアが指摘した、時間軸のみでの次元の構築だな」
綱は紙にペンで三角柱と、そこから高さ方向の線が1本無くなった図を描く。
綱:「Ωコアが昔指摘した、T軸のみでの次元の構成が不安定ってのを図にするとこんな感じだ。
時間は本来、三角柱で示される5次元の図のように、下の三角が、平行に持ち上がって未来へ行く三角柱になる。
だが、Ω軸を飛ばした、点の1つ足りない図形は下のように、過去と未来が重なる点が出て来る。
似たようなことは7次元でも起こるはずだ。
例えば、別の世界線で生きている社員の情報が、こちらの死んだはずの世界線と混同されるとかな」
静:「納得出来る説ね。
…そういえば、ハルシネーションは3年ぐらい前から起きていたって言っていたけど、それまでは起きていなかったの?」
綱:「全くない…なんてことはなかったんだろうが、報告らしい報告は上がっていない。
それはΩコアの設計にあるんだが、Ωコアは三権分立の設計になっていることは知っているな?
それと同様に、演算でも3つの役割が割り振られている。
それが、頭からと尻から同時に生成し、生成物のチェックまで行う。
その仕組みでΩコアは、ハルシネーションの少なさで世界一になったんだ」
静:「でも、ハルシネーションは3年前から増えている。
演算能力不足のエラーも起こっていなくて、バージョンアップを重ねて成長しているはずなのに…」
綱:「恐らく、さっきの図で過去と未来が重なる点が出来たように、この世界を示す外側の三角錐と、パラレルワールドの情報を示す内側の三角錐の間で点が1つ足りずに、どこかの頂点同士が重なっている部分があるはずだ」
静:「過去と未来が重なる点があるように、この世界と別の世界の情報が重なり合い、混ざる点があるってことね。
でも、それにしてはハルシネーションが少ないんじゃない?」
綱:「パラレルワールドだから、誤差程度の情報も多いってこともあるんだろうが、何かしらのアルゴリズムを組んで、どの世界の情報かを選別しているんじゃないかと考えている。
というより、俺ならそうする。
そしてそこから漏れた情報に、こちらとの誤魔化せない程の誤差があったのが、去年の死人の人事異動だったんだと思う」
静:「凄く納得したんだけど、情報量が多過ぎてそろそろ限界かも…」
静はぐったりしたように、座椅子の背もたれに寄りかかる。
綱:「細々やっていたとはいえ、6年分の調査と推測だからな。
明日の細かい手順だけ、まだ頑張れるか?」
静:「聞かせて」
静は、テーブルに肘をつき、前のめりになって聞く姿勢を見せる。
いつも資料や下書きを渡して絵を描いてもらっているNotebook LMが、ラフ画で構図の指定などをしても、ペンを持って正面を睨んでいたり、関係ないグラフの説明をしている絵になったり、アメコミ風になったり、静じゃなく知らないおじさんに説明している絵になったり…
十数回のリテイクで心が折れて、別のAI に頼んだため画風が違いますが、ご了承ください。




