↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ω異常域【多次元観測AI】  作者: ライト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/14

第6話

静:「…ところで、頼まれていた、紙で保管されていたラット実験の資料のコピーよ。

原本持ち出し厳禁の保管庫で、実験当時の紙の資料の保管だから、Ωコアによる改竄(かいざん)はあり得ないわ。

ただ…」


静は綱の前に出した紙の資料に視線を落とす。


綱:「今の資料と、内容に齟齬(そご)はなかったんだな?」


静:「分かっていたのね。

これを見て、最初は綱の勘違いを疑ったわ。

でも、綱の気づきが本物で、これが現在の資料と同じだとしたら、確かに源さんを頼るわけにはいかないようね。

黒幕がΩコアであれ実験に携わった人間であれ、この原本が出力された時、すでに結果が改竄されていたことになるわ。

この改竄はΩコア単独じゃない。人間が絡んでいる。

立ち上げメンバーの源さんも、それに絡んでいる可能性が高いわね。


でも問題は、なぜ改竄する必要があったのか。

成功数の少ない実験で、その成功が偶然なのか必然なのか、確認するのはおかしいことではないはずなのに」


綱:「俺はその改竄の理由が、今も続く動物実験に繋がっていると考えている。

極秘で実験を続けたいなら、高い事故率かつ原因不明という形で、表向きは研究を禁止にした方が都合が良かったんだろう。

ランダムに起きる事故ではなく、事故が起きない特定のラットがいることが分かれば、他の企業も研究したがるだろうしな。

そして、そんな隠蔽が必要な実験は、碌でもないと相場が決まっている」


静:「そうね。

それにそれは私が資料を閲覧すれば分かることだし、ここで話し合う必要はないわね。

…ところで、今まで綱の調べてきたことも教えてもらってもいい?」


綱:「昨日、Ωコアが5次元を超える次元の解析を済ませている可能性について少し触れたが、俺の考えでは6次元を飛ばして7次元の解析を済ませている」


綱が紙の資料で麦野理論の6Dと7Dの図説を出して来る。


挿絵(By みてみん)


綱:「Ωコアは6次元目の重力に関して、波長の解析は進んでいるが、操作のためのフィルタリング技術が進んでいない。

だがΩコアは、過去に1つ上の次元を先に解析した実績がある。

しかも、7次元目はAIのΩコアが理解しやすそうな、情報軸のI軸だ」


静:「なんで上の次元が使われていると考えたの?」


綱:「演算能力が、どうしても計算が合わないんだ。


Ωコアは、スーパーコンピュータと量子コンピュータのハイブリッドだ。

それだけでも恐ろしい演算能力を誇るが、それにプラスして、世界中の全ての起動中のコンピュータはΩコアと繋がっている。

そして余裕の出た演算領域をΩコアに差し出し、Ωコアの演算能力を爆発的に上げている。


それでも、世界中の全てのシステムをΩコアに依存するには、演算能力が全く足りていないはずなんだ。

だが、そのシステムの運用に必要な能力が足りていないにも関わらず、Ωコアによって世界は不都合なく回っている。


それどころか、人類が初めて直面する危機にも、その足りていない演算能力で、即時回答を出し、最高の結果を出して来た場面は、1度や2度じゃない」


静:「ちょっと待って。

世界中の全てのコンピュータはΩコアに接続されているのよ?

それこそ、小さな電卓だって例外じゃない。

Ωコアに、自分の怪しい点を調べさせていたの?」


綱:「手計算だ」


静:「は?」


綱:「世界中で稼動しているデバイスの総数を、人口や発展度の比率から仮定した。

そして、世界中の地域の人口分布と標準時から、時間帯毎のインターフェイスの余剰能力の平均値と、システム全体における1日に必要な演算能力を計算したんだ。


実際の危機に対する事例は、ターミナルテック社の広報資料や歴史を調べた。

そこに書かれた表現から、演算速度を推定した」


静が頭を抱える。


静:「簡単そうに言ってるけど、完璧主義者の綱の納得のいくだけの精度でこんな大事な計算、仕事で成果を出しながら、そう簡単に手計算出来るものじゃないでしょ?

…ちゃんと寝てるの?」


綱:「出世のためにはパフォーマンスを落とすわけにはいかないから、寝る時間はしっかり確保している。大丈夫だ。

それに、同じ居室にいる源さんに勘付かれないためにも一気に資料を集めるわけにはいかないからな。

興味を持ったフリして少しずつ集めて、家に帰って時間をかけてコツコツ計算や調べ物をした」


静は右の手のひらで顔を覆い、少し気持ちを落ち着かせる。


静:「…綱がちゃんと睡眠をとっているようで、そこは安心したわ。

…でも、今度からは私にも手伝わせて。


それで、その足りない演算能力が7次元目の、パラレルワールドとの同期によって補われているっていうのが綱の推理なのね?」


綱:「そうだ。

いくつのパラレルワールドでΩコアが生み出されているのかは分からないが、似た世界、別の思想で開発され、異なる経験を経たΩコア同士が並列で演算するだけでも異次元の演算能力を得る可能性がある。

知識や演算実績の空白をお互いに補完し合うだけでも、演算能力を貸し合う以上の効果がある。

さらに、俺達の世界では初めて直面する危機でも、パラレルワールドで既に経験しているのなら、演算を飛び越して最良の結果を導き出すのも納得がいく」


静:「ただ、過去の事例に合致しているかの確認と変わらないものね」


綱:「そういうことだ。

ただし、さっきも言ったが、Ωコアは6次元の解析を飛ばしている可能性が高い。

その根拠は、発表されている情報でG軸の解析が終わっていないとかそんなことじゃない。

去年Ωコアは、2年も前に事故死した人間の人事異動を発表したんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。