第12話
家のインターフォンが鳴り、ARでポップアップされた映像を開くと、今ちょうど呼ぼうとしていた、残り2人の四天王がエントランスに立っている。
就業時間のはずなのに…。
静:「入って来て」
鍵を解除すると、エントランスのカメラに映った2人が中へ入り、ARの視界から映像が消える。
しばらくして、静の部屋に2人が到着する。
静:「仕事中に、2人ともどうしたの?」
碓井:「綱が急に実家に帰って、頭でもおかしくなったのか?
お前が呼んだんだろ」
口の悪いインテリの言葉に戸惑っていると、筋肉バカ、坂田がフォローする。
坂田:「俺も静に呼ばれたぞ?
俺も碓井も、自分のとこの部長から、綱が音信不通で心配だから見てきてくれって言われて行ったんだよ。
そしたら綱の家に向かう途中で部長から連絡があって、綱は実家に帰ったらしいって。
それで会社に戻ろうとしたところに静からARで通話が入って、ここに来たら碓井とも会ったんだ」
やっぱり、ARで偽物を作って連絡しているんだ。
でも、なんで2人を私の元へ?
私には都合が良かったけど。
黙って考え込む静に、2人は困惑する。
碓井:「まさか、自分で俺達を呼んでおいて、本当に覚えていないのか?」
静:「違うの。
ちょっと説明させて」
静はインターフェイスの電源を落とす。
碓井は何かを察して電源を落として坂田に目線を送り、坂田も2人を見て電源を落とす。
静は綱の残した資料を取り出し、今までの経緯を説明する。
碓井:「そうか。
俺も色々と疑問を持っていたことが、これで繋がりそうだ。
少し考えさせて貰えるか?」
顎に手を置き、テーブルの上に広げた資料を覗き込んで考え込む碓井を残し、ここで喋れば邪険にされそうだと思った静は、坂田を隣の部屋に誘う。
坂田:「付き合ったばかりなのにな」
静:「知ってたんだ」
坂田:「噂はすぐに広がるからな。
そもそも、社内でお前達の関係に気づいてない奴なんていないしな。
俺もそれ聞いて、お祝いで飲もうって土曜日に綱に通話を入れた時、歯切れが悪い感じだったんだけど、さっきの資料と、それを説明するお前の表情を見て分かった。
静、お前と綱の間に重なったいろんな偶然が、全部Ωコアに操作されてた可能性があるからって、綱の前で落ち込んだりでもしたんだろ」
静:「…そうよ。
運命だと思っていたのがそうじゃなかったのは、ちょっとショックだった。
でも、好きって気持ちは……嘘じゃないはず。
分かってるんだけど、心に穴が開いた感じがして、それが何に対してなのか、まだ良く分からないのよ…」
震えるような声で話す静に、坂田はあえて声を張る。
坂田:「それ、俺と嫁さんを侮辱してるのと同じだからな?
俺と嫁さんは結婚相談所で紹介されてお互いに一目惚れした。
結婚相談所も、結局はΩコアが出した相性で引き合わせてる。
俺と嫁さん、綱と静、Ωコアに引き合わされたのは同じなのに、俺と嫁さんの気持ちも偽物だって言ってるのと同じだぞ?」
静:「……それは…」
坂田:「俺と嫁さんは、ちゃんと恋愛をして結婚してる。
出会いのきっかけなんて、あとになってみればどうでも良くなる。
それよりも、Ωコアが人類史上最大の奇跡ぐらいに認めたっていう、お前らの適合率とかの方が、出会いなんかよりよっぽど運命だって思うけどな」
静は坂田の話を聞いて、しばらく俯いたあと、急に顔をあげ、自分の両頬をパンッという音が鳴るほど強く叩く。
静:「ありがとう!坂田。
綱を助けるために、力を貸して」
静は坂田に、握手を求めるように手を差し出す。
坂田は力強く手を握り返す。
坂田:「当たり前だ!
俺の親友が、彼女との不和に悩んだまま何かに巻き込まれたんだ。
お前がまだウジウジしてても、無理矢理でも連れてくからな」
碓井:「俺は強引なのは勘弁して欲しいから、自発的について行くことにしよう」
いつの間にか部屋の入り口に、碓井が立っていた。
静:「碓井もよろしく」
静が手を差し出すと、碓井も握り返した。
碓井:「やっといい顔になったじゃないか。
これなら、罵ってやる気を出させる必要はなさそうだな」




