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Ω異常域【多次元観測AI】  作者: ライト


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第13話

静:「じゃあ、その地下にどうやって入るかよね。

存在すら知らないってことは、一般職員には入れないようになっているんだろうし」


坂田:「映画みたいに、上の人間のインターフェイスをこっそり借りるとか、碓井がインターフェイスに上の人間のIDだって読み込ませる仕掛けとかすればいいんじゃないか?」


碓井:「そんな簡単に行くわけないだろ。

そもそも、インターフェイスを持っていれば自動で認証なんて、普通のエリアと同じセキュリティにしてたら抜け道なんかお前でも思いつくだろ。

そして、全ての電子機器に潜むΩコアに隠れて、そんなハッキングまがいのことをするのは不可能だ。

…というより、セキュリティを抜けることに関しては、俺の考えが正しければ、もっと単純だ。

恐らく、お前なら顔パスだ。

問題は手段じゃなく、どこにあるのか、それだけだ」


碓井が静の方を見る。


静:「…私を誘い込む罠だってこと?」


碓井:「罠かどうかは知らんが、今日、お前が招待されているってことは確かだろうな。

俺がここへ午前中から呼ばれた理由も、それを気づかせて、今日中にお前を呼び寄せるためだったのかもしれない」


坂田:「じゃあ、俺はボディーガードってことか?」


碓井:「珍しく察しがいいじゃないか。

潜入に対する静の、心理的ハードルを下げるためだろう。

それに、静が俺を呼ぶにしても、2人きりではなくお前も呼んだだろうしな」


静は図星を突かれて少し狼狽(うろた)える。


確かに、苦手意識のあるこの口の悪いインテリを呼ぶなら坂田も呼ぶつもりだったし、そもそも、運動の苦手そうな碓井と2人きりで、綱ですら捕まっているかもしれない所に潜入なんて考えられない。


碓井:「図星だろ。顔に出ているぞ。

そして、お前本人が俺達を呼んでいたとしたらそれは定時後で、こうして打ち合わせをしていたらさらに遅くなるからな。

どんなことが起こっているのかは定かじゃないが、綱を迎えに来させたいのか、お前を呼び込みたいのか……いずれにせよ、お前が考えていたよりは早く行く必要があるということだ」


静:「夜に忍び込むんじゃ、遅いってこと?」


碓井:「愛妻家の坂田が突発で夜に行動するのを嫌がるという可能性もあるが、今日の昼間なら、夜以上に警備が手薄になるタイミングがあるからな」


静:「そうか。全社員対象の避難訓練。

毎年、新入社員に覚えさせるために、研修の次の週にやってる。

今年は今日だったわ」


碓井:「そうだ。

それに避難理由とルートは、毎年あらかじめΩコアが作成して配布されている。

これだけあからさまに全ての条件を整えてくれているんだ。

今年の設定ルートで、空白が生まれるところを辿って来いとでも言っているんだろう」


碓井がARのインターフェイスを起動する。

静と坂田は制止しようとするが、碓井がその手を払う。


碓井:「これだけこちらのことが筒抜けで、侵入のお膳立てまでΩコアがしている状況で、侵入ルートの確認がΩコアにバレることになんの不都合があるんだ」


静と坂田は目を見合わせ、インターフェイスの電源を入れる。


ARが起動すると、既に碓井が画面を共有していた。


碓井:「今回の避難経路はこのルートだ。

全ての職場のルートを重ねても、空白となるルートが存在する」


碓井が空中のARマップにルートの線を書き込んでいく。


碓井:「明らかに研究棟のエレベーターに乗るように誘導されている。

このエレベーターは、インターフェイスに登録された認証情報で行き先の選択肢が変化する、セキュリティレベルの高いものだ。

俺は5年半このエレベーターを利用しているが、表記が1階より下に行っている所は見たことがない。

だが、それはΩコアがどうとでもしているんだろう。


避難訓練の際に警備員も参加させるため、最後に警備員が持ち場を離れて1分経つか、不審者をΩコアが検知した場合には、即座に入り口が物理的にロックされる仕組みになっている。


つまり、13時の避難訓練が始まったら人目を避けてこの建屋の影に隠れ、警備員が去って1分以内に建屋に入ることが出来れば、あとはΩコアが案内してくれるはずだ」


静はルートの途中を見て、考えを巡らせる。


静:「このルート、弓道場を通って行くのは、偶然なのかな?」


少し不自然に遠回りさせるよう、迂回するような不自然な避難経路を設定してまで、弓道場を避けてルートが組まれていた。

訓練内容を確認すると、名目として『弓道場から出火を想定』とあった。


碓井:「確かに、これは何かしらの意図を感じるな。

火元のない弓道場から出火という時点で不自然だが、そもそも、お前以外に使われていない弓道場なんてニッチな施設が作られるのからして不可解だったんだ」


静:「綱だって1回使ったわよ。

それに、興味本位の人達が、使ったこともあるみたいだし。

…でも、やっぱり私の特定タンパク質による能力向上を見るのが目的だったんじゃないかって、今は思う」


碓井:「このルートに意味があるとすれば、今回に関しては、護身用に持って来いってことなんだろうな。

それ自体、いつもと違う環境でお前の能力を見たいという意図があるのかもしれない」


静:「弓矢を持っていけってこと?」


碓井:「あくまで憶測だがな」


碓井がインターフェイスの電源を落とすと、残り2人の視界からマップが消える。

2人も続いて、インターフェイスの電源を落とす。

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