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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第二章 仲間との再会編

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第354話 血の五人衆

 炎に包まれたメイ。


 燃え盛る炎が夜空を赤く染める。その光景を見つめる私へ、執事服の男が静かに口を開いた。


「どうやら、あのメイドは貴方にとって大切な存在だったようですね」


 男を見る。

 その表情は冷静そのものだった。


 だが、その瞳の奥には消えることのない悲しみのような感情が宿っている気がした。


「何か勘違いしているようだが――」


 そう私が口にした瞬間だった。


 メイを包み込んでいた炎が突如凍り付き、氷像のようになったかと思えば粉々に砕け散る。


 舞い散る氷片の中から現れたのは――平然とした表情のメイだった。


「メイがあの程度でやられるわけがないだろう」

「――なるほど」


 執事服の男は僅かに目を細めた。


「クリムゾン姉妹の魔法を受けても無傷ですか。驚きました」


 声色は変わらない。

 しかし先程より僅かに興味を抱いたようにも見えた。


 随分と冷静な男だな。

 だからこそ、先程一瞬だけ見えた悲しみを帯びた瞳が気になる。


「一体お前たちは何者なんだ?」

「これは失礼致しました」


 男が胸に手を当てる。


「私は血の五人衆が一人、ノクターンと申します」


 そう言って恭しく一礼した。

 襲撃者とは思えないほど丁寧な挨拶だ。


「ご丁寧にどうも。おかげでメイが移動する時間が出来たよ」


 私が視線を向けると、メイは既に再びヨナを攫った相手を追って疾走していた。


「問題ありませんよ」


 ノクターンは淡々と答える。


「言いましたよね。我々は血の五人衆(・・・)だと」


 その瞬間だった。

 空から巨大な影が降ってくる。


 メイの頭上に現れた巨体が両手を組み、まるで巨大な鉄槌のように振り下ろした。


 轟音――石畳が砕ける。


 メイの身体が地面へ叩き落とされ、衝撃で周囲に亀裂が走った。


「おやおや」


 ノクターンが肩を竦める。


「あのメイドも散々ですね」

「レッドにやられたわね、お姉様」

「そうね。やられたわね」


 少し離れた屋根の上。

 紅蓮の髪を揺らす瓜二つの少女たちが手を取り合いながら笑っていた。


「あれじゃもう立てないかしら」

「そうかもしれないわね」


 二人の声はよく似ている。

 まるで一人が喋っているような不気味さがあった。


「メイ! 大丈夫か!」

「私は問題ありません御主人様」


 すぐに返事が返ってくる。


「ですが、鎖に繋がれた子どもたちがここにおります」


 子ども? 私の位置からは見えないが、どうやら近くに捕らえられている子どもたちがいるらしい。


「手を出すなよ」


 低い声が響く。屋根の上に立っていた巨漢――レッドが口を開いた。


「それは俺の魔力タンクだ」

「――何を言っているんですか?」


 メイの声音が僅かに冷たくなる。

 だがレッドは気付いていない。


「あぁ?」


 レッドは鼻を鳴らした。


「そのガキどもは俺が血と魔力を補給するために飼ってる所有物だ」

「所有物――ですか」

「そうだ。俺の大事な財産だ」


 次の瞬間だった。

 レッドの顎にメイの膝がめり込んでいた。


 轟音――巨体が弾丸のように吹き飛び、建物の壁へ激突する。


 石壁が崩れ、瓦礫が夜空へ舞った。


「はぁ……」


 私は思わず溜息を吐く。


「メイを怒らせてしまったようだな」

「冷静さが足りませんね」


 ノクターンは呆れたように言った。


「これであの子を助けることは出来なくなりましたよ」

「だったらプランBに移行するだけだ」


 私はリボルバーを構えた。


「お前たちを倒してヨナの居場所を聞き出す」

「果たしてそう上手くいきますかね」


 ノクターンの声は変わらず穏やかだ。


「うふふ」


 クリムゾン姉妹が笑う。


「難しいと思うわね、お姉様」

「そうね。あの子じゃ厳しいわね」


 余裕たっぷりだ。

 まるでこちらに勝ち目などないと言わんばかりに。


「随分と舐められたものだな」


 私は静かに銃口を向ける。

 

 ノクターン。

 

 レッド。


 クリムゾン姉妹。


 そしてヨナを攫った吸血鬼。


 血の五人衆――どうやら想像以上に厄介な連中らしい。

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