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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第二章 仲間との再会編

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第346話 カミラの命運

 やはりカミラは囚われていたか。


 アレクトから手紙を読ませてもらった時点で覚悟はしていた。だが、実際にその事実を突きつけられると、胸の奥に重いものが沈む。


「手紙は確認した。カミラは罪人として囚えられたとあったな。――罪状は、具体的には何だ?」

「はい。一つは現当主ソアラ・エクサスへの暗殺未遂。そしてもう一つが――街を騒がせていた吸血鬼事件の主犯、という扱いです」


 マースの言葉に、私は思わず眉を顰めた。


「……なるほど。吸血鬼であることが露見したわけか。だとしても、それがそのまま犯罪者扱いに繋がるのは解せんな」

「なんと……エドソン様は、カミラ様が吸血鬼であることをご存知だったのですか?」


 マースが驚きを隠せない様子で目を見開く。


「昔なじみでね。あいつの体質も、その事情も知っている」


 そう答えながら、かつての記憶が脳裏をよぎる。

 吸血鬼――


 それは“人を襲う怪物”などではない。

 魔力を自己生成できないがゆえに、外部から補う必要がある存在。


 ただそれだけのことだ。


「それでしたらご理解いただけるはずです。カミラ様が暗殺など企てるわけがない。そして、無差別に人を襲うなど……あり得ません」

「ああ。その通りだ。カミラは既に“別の手段”を持っている。魔力を補うために吸血に頼る必要はないはずだ」


 私の言葉に、メイが静かに続ける。


「……となると、問題はそこではありませんね。“なぜ正体が露見したのか”です」


 私は小さく頷いた。

 でっち上げ――その可能性もある。

 だが、それにしては状況が整いすぎている。


 暗殺未遂、吸血鬼事件、そして拘束。

 偶然にしては出来すぎだ。


 むしろ――


 “露見すること自体が前提だった”と考えるべきか。


「手紙には、当主の治療にあたっていたとあったな。病については何か聞いているか?」

「……いえ。契約上、詳しくは語れないと仰っていました。ただ――」


 マースが言葉を選ぶように間を置く。


「相当な難病であることは、見ていて分かりました。カミラ様ほどの錬金術師が、あれほど苦慮していたのですから」


 難病。そして、吸血鬼の正体が露見。

 この二つが無関係とは思えない。


(……治療の過程で、何かが起きたか)


 あるいは――

 “起こされた”。


 もし治療に“吸血”が関わっていたのだとすれば。

 それを目撃された時点で――


「……なるほどな」

「御主人様、何か思い当たることが?」

「まだ仮定の域だが――筋は通る」


 言葉を濁しつつも、頭の中では一つの線が繋がりつつあった。


 だが今は断定する段階ではない。

 情報が足りない。


「それよりも――カミラは無事なのか?」


 最も重要な点を確認する。


「恐らくは。ガイスにも動いてもらっていますが、処刑されたという情報は出ていません。それに、屋敷関係者からも“生かされている”という話は得ています」

「……そうか」


 胸の奥にわずかな安堵が灯る。

 生きているなら、間に合う。

 まだ、取り返せる。


「ご主人様、どうなさいますか?」

「最短は――強行突破での救出だが……」


 口にしながら、私は首を横に振る。

 それは最も単純で、最も危険な手だ。


 状況が見えない以上、無策で踏み込めば逆に取り返しがつかなくなる。


「まずは全体像の把握だな。カミラ、吸血鬼事件、失踪した商人――この三つは確実に繋がっている」

「つまり黒幕が存在する、と」

「そういうことになる」


 そして、その黒幕は――恐らくエクサス家の中にいる。


 そこまで思考が進んだ、その瞬間だった。


「――御主人様」


 メイの声が、僅かに低くなる。

 空気が変わった。

 それは言葉よりも先に、肌で感じる違和感。


「マース様。この隠れ家に、他に来客の予定は?」

「? いえ。この場所を知っているのはガイスと……あなた方だけのはずですが」

「……そうですか」


 メイの目が細められる。


 いつもの穏やかな表情は消え、完全に戦闘時のそれへと切り替わっていた。

 視線が、扉へ向く。

 わずかな沈黙。


 その一瞬の間に、空気が張り詰める。


「メイ――まさか」

「はい」


 即答だった。

 迷いはない。


「マース様、後ろへ。壁際に下がってください」

「え、ええ……?」

「来ます」


 その言葉とほぼ同時だった。


――轟音。


 扉が内側から弾け飛ぶように破壊され、木片と金具が爆風と共に室内へと叩き込まれる。


 土煙の向こうから現れたのは――ローブに身を包んだ複数の人影。


 静かに、しかし確実にこちらへと踏み込んでくる。

 その足取りに、躊躇はない。

 まるで最初からここに“いると分かっていた”かのように。


「……やれやれ」


 私は小さく息を吐いた。


「どうやら、考える時間はくれないらしいな」


 メイが一歩前へ出る。

 その背に、わずかな殺気が滲む。


「御主人様。指示を」

「まずは――」


 私は侵入者たちを見据えた。


「話が出来るかどうか、試してみるとしようか」


 そう言った瞬間、空気は完全に戦闘のそれへと変わっていた。

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