表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/26

短槍の舞

この物語のヒロイン、ウィザの舞う姿は世界一美しいとか。ただそんな噂が立つのはもっと後のお話。

「次は私の番だね」

そういってウィザが立ち上がる。近くではソドが、言われたように魔力放出のタイミングをブツクサ言いながら練習していた。あれじゃあ、ウィザの練習を見るのに集中できないな、とピスは内心思い、仕方なしに1人でウィザの練習に立ち会う。

 ウィザの苦手科目はソドと真逆で「剣術」だった。彼女は短槍を構える。左半身を前に突き出し、右足を引く。右手は高く上げ、左手をやりに添えた。槍を水平に構え、穂先を仮想敵に向ける。次の瞬間槍を突き出したかと思うと右に大きく薙ぎ払った。かと思えば手首を返して右上から左下へ袈裟切りのように切りつける。今度はそのままの勢いで回転し激しい勢いのまま槍を振る。

 彼女は剣舞の練習をしていた。剣舞は剣術の中でも重要な項目の一つで祭事や成人の儀の演武、あるいは旅芸人として世界を回るときお金に困ったら剣舞を見世物にすることでその日の食い扶持を稼ぐなどという手段もある。昔から剣技のすごい人は人望が厚かった。現実世界のスポーツ選手の本田やイチローと同じである。剣舞が見事であればあるほど、徳のある者としてその人の評価が高まるのだ。

 だが、しかしピス(と本当ならば見ているはずのソド)からすると、どうもぎこちなかった。剣舞が終わるとかなり体力を消耗したようでウィザは肩で息をしていた。槍を地面につき疲れて汗をかいている。たったそれだけなのに絵になるほどウィザは美しかった。想像してほしい。長く美しい碧の髪を垂らして美少女が汗ばんでいる。吐息は甘く、前髪を横にかき分ける仕草は男にとってたまらないしぐさだろう。もちろん親友のソドとピスは彼女に手を出したりしない。なぜって? 親友だからさ、と本人たちは言うが、起こると怖いウィザの父親からドスの利いた美声で釘を刺されているからというのが1番の理由だった。ウィザの父とソド、ピス、男たちだけで集まっていたとき彼はこういったのだ。「いいかい? 君たちには起こりえないと信じている。信じいているが、もじ、万が一ウィザに手を出したりしたら……」。その先は怖くて二人とも思い出せないでいた。たしか木の根を血管に置き換えるとかなんとか。

「どう?」

ウィザが短く返事をする。息を切らしてそう聞くウィザはまた色っぽい。しかしピスはその雑念を慌てて打ち払った。

「うん、やっぱりまだぎこちないかな」

手首を返すときに余計な力が入ってその分次の行動に映る時間が遅れてしまっているのだ。そのことをピスはウィザに説明する

「なるほどね。私もお手本見たいな。ねぇ、ソド、やって見せてよ」

今の今までぶつぶつウィザに言われたことを反芻しているソドが振り返った。

「え、なに?」

ウィザが呆れて肩をすくめる。もう一度ピスに言われたことを繰り返しソドに説明した。

「わかったわかった。ようするにあれだ。手首に余計な力が入ってるってことは剣舞を意識しすぎちまってるんだ。もっとこう切るとき以外は全身をリラックスさせてだな」

そういってすたすたとソドは近くの木に近寄る。右手を挙げ双剣の片割れを天高く掲げる

「切るときだけ力を込めて、勢いに逆らわないでその勢いを利用するんだ」

言うと同時に、樹を袈裟切りにする。まずは一振り、と思っていたら腕があるはずの場所にないふと見上げると、双剣はさっき掲げたところと同じところにあった。

 一拍おいて樹が斜めにずれ始めた。大きな音を出して木が倒れる。しかもソドのもう片方の手には薄く輪切りにされた樹の太い幹が握られていた。

 ウィザがぽかんと口を開けている。ウィザの変顔はなかなか見られるものではなかった。それはそれでかわいかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ