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六十七回目の人生は、義務なし報告なしで最高です ~蓄積した知識と技能で、第六王女は今日も暗躍する~  作者: 杵築しゅん


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一 魂の管理局マソルネ

初めての短編(三万文字以内目標)に挑戦です。

はじめましての方も、また読んでやるよという方も、どうぞよろしくお願いいたします。

一話、三千文字前後の予定です。

「お前の好きな数字は何だ?」


 目覚めた私に、目の前の上司らしき威張った男が、何の前置き説明もなく質問してきた。

 姿かたちは見えているはずなのに、何故かぼんやりとしか男の全体像が確認できないという不思議。

 キョロキョロと辺りを見回すけれど、知っている場所ではないさそうだ。


「早く答えろ!」


「六です」


「分かった。では、六十六回の任務を果たしたら、魂を自由にしてやろう」


「はい?」


 訳が分からない。

 ここは何処で、貴方は誰? 私はどうして此処に居るの?

 分からないことだらけで混乱していると、私の直属の上司だと名乗る男性が現れ、現状をさらりと説明してくれた。


「お前は死に、魂だけが此処へ来た。何処の星の出身で、どう生きてきたのかは関係ない。

 お前は魂の適性から、数ある星々の中でも、決して死なせるべきではないと判断された者の命を守る、要人警護の仕事に振り分けられた」


 ……え~っと、全く意味が分からないんだけど?


「これまでの人生の記憶は全て消去済みだ。明日から任務が始まる。

 とにかく、お前は派遣された国で、その国に実在している者の中に入り、守るべき者を命懸けで守るのだ」


 やっぱりこの人も、顔がはっきりと分からないけれど、声だけはしっかり聞こえる。そして偉そうだ。


「どうやって? 武器があるのですか?」


「いや、明日向かう星は人類が誕生して五千年という未熟な星だ。当然、使えるモノは石でも棒でも使って守るしかない」


 最初の任務地は、だいたいそんな感じの星だと男は言うが、やっぱり意味が分からない。


……あぁ、これは夢だ。夢に違いない。


「お前は今日から、マーシャ・ミロルと名乗れ。マーシャと呼ばれてもミロルと呼ばれても構わん。どうせ、直ぐ此処に戻ってくる。そしてまた、次の任務を果たすのだ」


 つい先程までの自分の記憶がないから、己がどんな人間なのか、何ができるのかさえ分からないのに……死ねってこと?


「自分の容姿や年齢、強ささえ分からないのに、戦え? 守れ?」


 ……いやいや、勘弁して。


「心配するな。お前は魂だけの存在だ。他人の体に憑依するから、どんな容姿で何歳なのかは、行かねば分からない」


 そう言い捨てて、上司だと名乗った男は去っていった。

 私は白いようなグレーのような何もない広い空間に、ぽつりと残され、念のため頬をつねってみたら痛い気がした。


 ……夢じゃない。でも、現実世界とは絶対に違うと思う。


「しまったー! なんで好きな数字を一とか二って言わなかったんだ私ー!」


 ふと六十六という数字を思い出し、自分のしでかしを後悔し頭を抱える。 

 仕方ない、後悔したところで運命は変わりそうにない。よし、落ち着こう。

 分かっているのは、自分の性別が女であることと、上司らしき者の言葉を理解できることから、幼児じゃないってことくらい。


 ぼんやりしていたら、今度は先輩という者が現れ、寮へと案内され、詳しい仕事内容を教えられた。

 ここに居るのは全て魂だけで、おぼろげながら生前の姿に見えるらしい。

 先輩曰く、貴方の身長は百六十センチくらいで中肉中背、知識レベルはまあまあだから、要人警護部に回されたはずだと言う。


「此処へ回される魂の特徴は、何回死んでも心が折れず、任務を全うする可能性がある鋼のメンタル持ちで、人一倍使命感が強い魂の持ち主らしいわ。

 私は今日、四十八回目の任務を終えたところよ。あと七回でお別れだわ」


 魂だからか、やっぱりぼんやりとしか目に映らない先輩は、諦めが肝心よと笑いながら言う。

 きっとさばさばした性格の人……いや、魂なんだろう。


「大事なことはね、任務で死にそうな目に遭うことじゃなく、如何なる時も義務を果たし、毎日きちんと報告することよ」


 渡されたマニュアルを読みながら、連絡方法について確認する。

【何があろうと、自分に割り振られた時間に、上司に状況を報告すること。また通信手段は、割り振られた特定周波数を声紋登録してあるので、自分の名前を言えば繋がる】


 ……う~ん、理解できない。私はダメな魂なのかな?


 そんなことを考えていたのは十回目くらいまで。

 十回目は、機械文明前の星の、どこぞの国の第二王女を守る任務で、私は剣を扱える護衛騎士として仕えていた。

 まあ、一か月で強制的に戻ってきたけどね。

 十五回目くらいだったか、とある星の教祖様の部下だった時は、質素な料理に質素な服を着て、料理人をしながら守っていたわ。

 まあ、僅か二か月で強制送還されたけど。グサッと剣で胸を刺されたからね。


 ……もう魂だけだから、死なないけどさ……


 この任務の何が辛いかって、それは毎日の報告よ。

 星々によって時間は異なり、一日が三十時間の星もあれば、二十時間の星もある。もうバラバラなのよ。

 だけど、連絡はマソルネ本部の時間に合わせる決まりだから、夜中に毎日連絡したり、戦いの最中だって連絡しないと怒られる理不尽。


「死闘の最中だったから、連絡できませんでした」


 ある時、魔獣と呼ばれる獣との戦闘中だったため、連絡が遅れた。


「それでも減点だ」

「ふざけるなー! 任務優先じゃろうがー!」 


 血も涙もない本部の評定に、何度文句を言ったことか。

 どんどん口は悪くなり、人相だって悪くなっている気がする……魂だけどさ。

 死ぬ思いをするのは怖くないけど、体の持ち主には申し訳なくて、何度も溜息が出る。

 護衛対象者の命を繋いで仲間にバトンタッチできた時は、心から安堵し、達成感があった。


 三十三回くらいまでは、入魂後、早くて三日、長くても半年くらいで強制送還か、たまに任務完了していた。

 まあ、時間や月日なんて、その星の時間でのことだけど。

 どれだけ時間が流れたのか分からないけれど、五十回目にもなると、武術、剣術、護身術、初級魔法、メイド、解毒剤作成、射撃、ナイフ投げまで、いろいろな仕事を積み重ね、結構戦えるようになっていた。


 ……願わくば、ぐっすり眠りたい。三時間でいいの……


 でも、五十回を超すと、敵が強いのなんのって、もう。

 本部がそういう仕事を回すから仕方ないんだけど、文明が発展している星になればなるほど、敵の武器も強力だし、移動手段も増える。

 ほぼ、政治絡みの護衛任務で、大統領だの、IT開発関連だの、果ては宇宙戦争中の任務まであった。


 文明が発展している場合、魂が入る体もそれなりの立場であったり、重要ポストを任されていることもあり、体の持ち主の記憶と魂を同期させるのが大変だった。

 幸せを感じられるのは寝ている時だけ。勿論、休日はあったけど気は休まらない。


 六十回目からは強制送還されることなく、任期を全うした。

 そして今日、六十六回目の任務を終えた私は、また、あの最初の空間に呼び出され、上司と対面していた。


「任務完了、ご苦労であった。約束通りこれからの生を選ばせてやろう。

 これから大きく分けて三つの質問をする。一つ目の質問内容は六つある。

 ゆっくりではなく、できるだけ即答しなさい」


「またなの? 考える時間もくれないの?」


 六十六回の任務で、私はメンタルつよつよで、口の悪い女になっていた。


「①、男と女、どっちがいい?」


「女で」


 この上司、人の話を聞く気なんて全くなかった。 

お読みいただき、ありがとうございます。

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