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エピローグ:狸と蛇

「……と、まあ、これが事の次第で」

半七老人は、僕の湯呑みに茶を注ぎ足しながら、話を締めくくった。


「長吉の白状で、六部(長平)の宿も割れやした。ですが、そこはもぬけの殻。お照の家が危ねえと睨んで張り込んでおりますと、案の定、新兵衛の初七日しょなのかが済んだ晩、その長平が短刀をふところに、お浪さんを脅しているところへ踏み込みまして、召し捕った次第です」


長平は、もちろん死罪。

長吉は、子供であること、叔父にそそのかされたこと、そして「親の仇討ち」という情状が酌量され、遠島えんとうに落ち着いたという。


「お照さんと、例の定次郎は?」


「そっちは、とんと無関係(お門違い)で。まあ、実録じつろくなんてもんは、そう色っぽくはできちゃいねえもんです」

老人は笑った。

「ただ、あたしの味噌とすりゃあ、初めからその色っぽい方には目をくれず、善人(新兵衛)の方に、何か因縁があるはずだと睨み詰めたことくらいでやすかね」


「では、あの向島で河童を放り投げたという武士は?」



「そいつは、どこの誰だか、とうとう分かりません。今頃、どこかで『向島で本物の河童を退治した』と、一生の手柄話にしているかもしれやせんよ」


老人は、楽しそうに続けた。


「まったく、あの頃の向島は、今とはまるで違っていやした。いつぞやも申した通り、たぬきも出れば、狐も出る。河童だって、今のお話の通り、出やしたからね」


「蛇も、出たんでしょう」

僕が、約束の残り半分を催促すると、老人はまた、悪戯っぽく笑った。


「おや、まだ覚えていやしたか。……ええ、出やしたとも。ですが、こっちの蛇の話は、ちいとばかり、あいまいなところでしてね。まあ、そのつもりで、お聞きくだせえ」

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