すべては前の出来事から起きた(二)
「さあ、そこに立っていないで。」
「入ってこい。」
「話すべきことがたくさんある。」
..
今、目の前にいるのは人間の姿をした何かだ。だが、どう考えても人間ではないという感覚がある。
白い霧の中でぼんやりと浮かぶその黒い影は、絶えず身をくねらせ、少しもじっとしていない。
そして奇妙なことに、なぜかこの瞬間、
自分には……
ここに……一度来たことがあるような気がする。
…
「ふむ……」
「これは少し居心地が悪いようだな?」
「では少し変えてみようか。」
言い終わるや否や、周囲の空間が急に歪み始め、
白い霧が形を変え、色を変え、そしてすべてが……
草原?
花畑の中のティーパーティー?
最新技術に満ちた暗い会議室?
大海の真ん中?
目の前の空間が、絶え間なく変化し続ける。
…
ぱちっ.
周囲の空間は一瞬で、広大な空間の中の白い霧に戻った。
「ごめん。」
「普段はほとんど誰もここには来ない。」
「だからどうすればいいかわからなくてね。」
「だがいくつかの理由で、こうせざるを得ないんだ。」
…
その者の二色の目が突然輝いてこちらを見る。
「トガミ・ハル。」
「お前は……」
「弱すぎる。」
「受け入れがたいほどに弱い。」
…
「は?」
待て。今起きていることのすべてを理解しきれていないし、頭の中には無数の疑問が渦巻いているが、
でも、本当に?
こいつは俺をここに連れてきて、ただそれだけを言いたかったのか?
…
突然、その奇妙な者が自分のすぐ後ろに現れ、耳元で絶えず囁く。
「そうだ。」
「お前は弱すぎる。」
「俺が会ったどのハルよりも弱い。」
「今のお前の世界と比べて、」
「お前は名ばかりの主人公に過ぎない。」
…
急いで周囲を見回し、目を凝らしてその者の姿を探す。
一体あいつは誰なんだ?
何を言っているんだ?
いや。
もう、一番重要なのはそこじゃないかもしれない。
…
しばらくすると、すべてが異常なほど静かになる。
さっきの奇妙な者の姿も音も映像も消えていた。
今はもう少しも時間を無駄にできない。
急いで戦場へ戻る方法を探さなければ。
みんなは……
…
「出口も知らないのに行くつもりか?」
…
「出てこい!」
「結局お前は誰なんだ?」
「何が欲しいんだ?」
「そこに隠れて観察するな!」
…
…
再び、その奇妙な目が真っ直ぐ俺を見据える。
ただ今度は、顔に密着し、頭は動かせず、体が縛られたように動けない。
「やはり……」
「お前は誤差だ。」
…
「誤差……どういう……意味だ?」体を必死に振りほどこうとし、目を別の方向へ逸らそうとする。
…
「見せた方が早いだろう。」
♢♢♢
何が起きているんだ?
体が動かず、目を閉じることも、逸らすこともできない。
周囲はすべて闇で、その先に一つの光が鮮やかに輝いている。
♢♢
なぜ、何も聞こえない?
目の前にあるのは、紛れもなく先ほどまで自分がいた戦場だ。
霧は晴れ、飛行機が怪獣の周りを絶えず旋回し、
兵士たちが必死に戦い、あのムツゴロウの怪獣が奇妙な黄色い水たまりに沈みかけているのが見える。
黄色い水たまり?さっきまでは泥だったはずでは?
そして別の自分が、その黄色い水たまりに両手を浸し、鼻血を止めどなく流している。
両側では小型・中型の機体が、スナイパーライフルを怪獣へ向けて絶え間なく撃ち込んでいる、
地下基地で見たのと同じような大きな赤い機体が、怪獣の頭を地面へ押し付けようとしている。
♢
今度は何だ?
なぜみんなが黒い服を着て列を成している?
なぜ花輪が運ばれている?
あれ?みんなそこにいる。レンも、シノミも、イシカワさんも、コウカも……それに、父さん?
でもなぜ?
みんなが俯いて泣いている?
なぜ黒い墓石の方を見つめている?
しばらくしてようやく気づいた。
その中の一つに、自分の名前が刻まれていた。
トガミ・ハル。
…
ザザザ……ザザザ……
待て。これはどういうことだ?
周囲のすべてが徐々に断裂し、人々が次々と無数の形に歪んでいく。
空間が突然砕け始め、すべてが奇妙な白い空間に飲み込まれていく。
そしてすべてが幻覚かのように飲み込まれた瞬間、
奇妙な声が響く。
「心配するな。」
「次は……絶対にできる。」
「今度こそ……二人は離れない。」
「今度こそ……私は、もうあなたから離れない。」
…
…
ハァッ……ハァッ……
すべてが突然白い空間に戻り、まるで一瞬の幻覚だったかのように。
だが、なぜ、体が……?
感覚が、まるで……
あの出来事が、すでに起きてしまったかのように?
…
グルルル……
「オブザーバー!」
「説明しろ!」
「未来が自分自身を消滅させるなんて、どうやって可能なんだ?!」
気づいた時には、自分の腹の周りに黒く濃い雲のようなものが巻きつき、
それが背中の後ろへ長く伸び、電光が絶えず閃き、
最も高い場所には、一本の長い角を持つ竜の頭が黒い煙に包まれて浮かんでいた。
…
「来たか、ヴォルナックス?」
「久しぶりだな。そんなに怒るな。」
「それに、その名前で呼ぶな。」
「俺はカグヤが付けてくれた名前の方が好きだ。」
「ミライ。」
…
その竜の頭が突然奇妙な者に近づく。
「チッ!」
「勝手にしろ!」
「呼び方は俺の勝手だ!」
「だがこんなことが起きているなら……」
「お前があの弱っちいガキをここに呼んだのには目的があるんだろう?」
…
「そうだ。」
「最初から気づいていただろう、ヴォルナックス?」
「お前の末裔は、少しも普通じゃない。」
…
「言うまでもない。」
「タカシのガキも、自分の能力で薄々気づいていた。」
「俺たちは視点を共有したり、タカシのように未来を見ることはできないが。」
「このガキは、あまりに奇妙だ。」
その竜の頭が突然自分の顔に密着し、目を見開き、全身が絶えず電光を放つ。
…
「これは必然だ。」
「あいつは、まだ幼すぎる頃に強制的に時間旅行させられたんだからな。」
「しかもいつ崩壊してもおかしくないシステムでだ。」
「少し後遺症が残るのは当然だ。」
…
その竜の頭が突然、うねる実体の方へ視線を向ける。
「それだけじゃないだろう?」
「もしあいつの能力がそれに影響を受けているなら……」
「俺たちが簡単にあいつの体を借りられること、あいつがよく俺たちの記憶の幻覚を見ること、同期しようとしなくても俺たちに会えること……」
「そして、あいつの異能。」
「再構築。」
「人間どもが発見したあの金属の本質と何ら変わらない。」
「あいつに元から後遺症があったなら、この程度のことは不思議でもない。」
…
「一番奇妙なのは、さっきの光景だろう?」
「このガキが死んだ瞬間に、世界が自ら消滅する。」
…
奇妙な者の目が突然輝き、竜と自分を真っ直ぐ睨む。
「この世界は、自ら歪み始めている……」
「そして未来のあらゆる枝が、自らを消し始めている……」
「たった一人の人間が死ぬ、その瞬間に。」
「トガミ・ハル。」




