やるべきこと
メラメラ…メラメラ…
煙と炎に包まれた大地には、崩れた建物の残骸だけが残り、
砕けた武器があちこちに散乱し、すぐ後ろには黒く変色した死体が横たわっている。
すでに濁った水面に濃い赤が混じり、
薬莢の破片が道の両側に散らばっていた。
…
えーん…えーん…
そして、まだ残っている壁の陰で、
苔色の髪の少女が、血にまみれた手ぬぐいを、傷口に強く押し当てている。
青年の顔は黒く汚れ、
体中に傷を負いながらも、手はまだ、必死に槍を握りしめていた。
「やめて……」
「やめて……」
「約束したでしょう……」
「お願いです……」
「私をここに残さないで……」
「イカリ様……」
「お願い……」
…
なでなで……
青年の手が、青年の手が、必死に少女の髪へと伸びる。
「もう泣くな……」
「初めて……見る光景じゃないだろ……」
「あと数日もすれば……また戻ってくる……」
…
ひっく……
少女は目を細め、涙を浮かべながら青年から目を離さない。
「でも……今回は……」
「すべてが……壊れてしまった……」
「もう……体なんて……」
「残っていないのに……」
…
青年の手が徐々に遅くなる。
「それが……どうした……」
「所詮……人造のものだ……」
「たとえ……すべてが……破壊されても……」
「次に会う時……」
「たとえ数百年後でも……」
「たとえ……私でなくなっていても……」
「また……もう一度……」
…
ぎゅうっ……!
「嫌だ。」少女が青年の手を強く握る。
「私はそんなのいらない。」
「私を覚えてるだけのイカリ様なんていらない。」
「一緒に生きてきたイカリ様が必要なの。」
…
…
……はは……
青年が突然、顔を空へ向ける。
「そうか。」
「だから母も、先人たちも、決してそうしなかったんだな。」
「たとえ記憶が完全に残っていても……」
「その記憶を持つ者が……決して……」
…
ゆさゆさっ……ゆさゆさっ……
「イカリ様。」少女が何度も青年を揺さぶる。
「何を言っているんですか?」
「わかりません。」
「わかりたくない。」
「お願いです……どうか……残って……」
…
ゆっ……
残されたわずかな力を振り絞り、青年は槍を少女へと高く掲げる。
「私の時間は……ここまでだ……」
「私の過ちは……あの禁じられたものを使ったことだ……」
「だが、あの少年なら……必ずできる……」
…
少女が涙ぐんだ目で青年を見つめる。
両頬を伝う涙が止まらない。
…
青年が槍を少女の目の前に差し出す。
「もし……ウラノスの計算通りなら……」
「数百年後……あの少年が再び現れる……」
「それまでの間……お願いだ……」
「これを守って……そして……あの少年に渡してくれ……」
「必ず……二人で……また会える……」
…
「嫌です……」少女が槍を押しのけ、青年に体を寄せる。
「私はこれを持たない。」
「誰にも渡さない。」
「もし渡したいなら……」
「ここに……私と一緒に残って……」
「お願いです。」
…
「もう……だめだ……」青年が軽く首を振る。
「これが……私が払う代償だ……」
「だが……もし彼の言葉通りなら……」
「きっと……これが必然なんだ……」
…
「ハルが生きている限り……」
「必ず……遠くない日に……」
「あの少年が……お前を補ってくれる……」
「ハヤサキ。」
…
カツン……
.........................................................................
ガバッ!
頭の中で、映像が乱れながら駆け巡る。
周囲は今や普通の民家で、
家具があちこちに倒れ、無数の破片が散らばっている。
あの音が頭の中で絶えず響き、
目の前の景色が時折ぼやける。
…
コツ……コツ……
「目が覚めたか?」
突然、耳障りな声が近くで響く。
人影が徐々に目の前に近づいてくる。
水のボトルを差し出し、奇妙なほど見覚えのある目をしている。
まるで、その人が……
…
「イカリ様……」
一瞬、その人の姿が重なる。
無理だとわかっていても、唇が反射的に動く。
もしかして……
…
「十分休めたか?」
「終わったなら、戻った方がいい。」
「この場所には何かおかしいものがある。」
「これ以上深入りすると……」
私は話し続ける影を必死に見つめようとする。
イカリ様の姿が徐々に薄れ、残ったのは、
嬢様の飼い犬にすぎなかった。
…
バッ!
そのまま、私は奴の手から水のボトルを振り払った。
「私たちが親しいかのようにするな。」
「結局、お前も奴らに仕える卑しい人間に過ぎない。」
「知っていることはただ奪い尽くすことだけ。」
「そして後から高尚な顔をして、自分の罪に理由をこじつける。」
「世間の前で無意味な糾弾演説を繰り広げる。」
…
「大丈夫か……」
「もしかして……俺たちは……」
…
私は顔をしかめ、奴を睨みつける。
「答えろ、トガミ・ハル。」
「お前もその惨めな人類の一人に過ぎないのか……」
「それとも、奴らとは違う道を選ぶのか?」
「結局、なぜ、ただの学生に過ぎないお前が戦場に飛び込んだ?」
…
…
奴はそのまま固まり、顔を伏せる。
「俺は……わからない。」
…
「なら、なぜお前はまだ……」
…
「でも……わからないからこそ……」
「俺が大切に思う人たちが、まだ後ろにいるから……」
「だから……何があっても……」
「俺にできることは……」
「ただ前へ進むことだけだ。」
奴が突然背筋を伸ばして私を真っ直ぐ見る。
その目は……なぜ……
なぜ……あんなに似ているんだ?
…
…
「では、問う。」
「もし……人類全体を裏切ってでも……」
「お前が大切に思う一人を救うために……」
「お前はそれをやるか?」
「悪魔と天使の狭間で……」
「この世界で何になるつもりだ?」
「トガミ・ハル。」
…
「……」奴は再び沈黙し、体を動かさない。
だが今回は、視線が変わらなかった。
まだ……希望はあるのかもしれない。
…
よろっ……
私は体を起こし、外の方へ目を向ける。
「今のところは、認めてやる。」
「次に答えろ。」
「そして今は……」
「すぐに処理しなければならないものがある。」
次の答え次第で、
この槍はお前の頭を貫くか、それとも最後までお前についていくかだ。
…
「待ってくれ。」奴が手を伸ばそうとする。
「さっき目が覚めたばかりだろ。」
「無理は……」
…
カツン……
体はそれをよく知っている。今の私にはほとんど何もできない。
だが、このまま放置すれば嬢様がまた危険にさらされる。
それなら……
…
「よく聞け、そこのお前。」私は霧の方を指差す。
「霧の最深部、まさに私たちが近づこうとしていた地点に、
生きている人間など誰もいない。
あるのは、人魚どもが用意した高周波衝撃波発信機だけだ。
あれがある限り……
この地域では、音も、電子機器も、武器も、通信も……
ほとんどが無力化される。
近づくほど周波数が強くなる。
人魚どもでさえ、特別な装備なしでは近づかない。」
…
「待て。」奴が目を丸くして私を見る。
「何を言ってるんだ?
どうしてそんなことを知ってる?」
…
ふんっ……
再び力が失われ、視界がぼやけていく。
「そんなことが今さら重要か?」
「よく聞け。」
「あの装置がある限り……
お前たちは動けない。
何も聞こえず、何も見えない。
地面は徐々に侵食され……
遅かれ早かれ、ここにいる者はすべてあの魚の餌になる。」
…
「だが、あの装置に近づくのは……ほぼ不可能だ……」
「音の周波数以外にも……
怪獣があの辺りをうろつき……
人魚の見張りもいる……」
「だが……」
「それは……」
「普通の者たちにとっての話だ……」
…
ドサッ!
言い終える前に、体が支えきれなくなった。
ここまで持たせただけで、十分頑張った。
普通なら……
…
タッ、タッ……タッ……
「大丈夫だ……頑張ってくれ。」
「必ずここから連れていく。」
奴の影が視界の中でぼんやりと揺れる。
…
もういい。私のことなど放っておけ。
どうか、もう一度見せてくれ。
常識を打ち砕くあの稲妻を。
あの光を、もう一度見せてくれ。
竜の最後の末裔よ。




