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静時の流れ - 潮騒の誓約  作者: Minateru
始まり – 試練を越える

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89/99

やるべきこと

メラメラ…メラメラ…

煙と炎に包まれた大地には、崩れた建物の残骸だけが残り、

砕けた武器があちこちに散乱し、すぐ後ろには黒く変色した死体が横たわっている。

すでに濁った水面に濃い赤が混じり、

薬莢の破片が道の両側に散らばっていた。

…

えーん…えーん…

そして、まだ残っている壁の陰で、

苔色の髪の少女が、血にまみれた手ぬぐいを、傷口に強く押し当てている。

青年の顔は黒く汚れ、

体中に傷を負いながらも、手はまだ、必死に槍を握りしめていた。

「やめて……」

「やめて……」

「約束したでしょう……」

「お願いです……」

「私をここに残さないで……」

「イカリ様……」

「お願い……」

…

なでなで……

青年の手が、青年の手が、必死に少女の髪へと伸びる。

「もう泣くな……」

「初めて……見る光景じゃないだろ……」

「あと数日もすれば……また戻ってくる……」

…

ひっく……

少女は目を細め、涙を浮かべながら青年から目を離さない。

「でも……今回は……」

「すべてが……壊れてしまった……」

「もう……体なんて……」

「残っていないのに……」

…

青年の手が徐々に遅くなる。

「それが……どうした……」

「所詮……人造のものだ……」

「たとえ……すべてが……破壊されても……」

「次に会う時……」

「たとえ数百年後でも……」

「たとえ……私でなくなっていても……」

「また……もう一度……」

…

ぎゅうっ……!

「嫌だ。」少女が青年の手を強く握る。

「私はそんなのいらない。」

「私を覚えてるだけのイカリ様なんていらない。」

「一緒に生きてきたイカリ様が必要なの。」

…

…

……はは……

青年が突然、顔を空へ向ける。

「そうか。」

「だから母も、先人たちも、決してそうしなかったんだな。」

「たとえ記憶が完全に残っていても……」

「その記憶を持つ者が……決して……」

…

ゆさゆさっ……ゆさゆさっ……

「イカリ様。」少女が何度も青年を揺さぶる。

「何を言っているんですか?」

「わかりません。」

「わかりたくない。」

「お願いです……どうか……残って……」

…

ゆっ……

残されたわずかな力を振り絞り、青年は槍を少女へと高く掲げる。

「私の時間は……ここまでだ……」

「私の過ちは……あの禁じられたものを使ったことだ……」

「だが、あの少年なら……必ずできる……」

…

少女が涙ぐんだ目で青年を見つめる。

両頬を伝う涙が止まらない。

…

青年が槍を少女の目の前に差し出す。

「もし……ウラノスの計算通りなら……」

「数百年後……あの少年が再び現れる……」

「それまでの間……お願いだ……」

「これを守って……そして……あの少年に渡してくれ……」

「必ず……二人で……また会える……」

…

「嫌です……」少女が槍を押しのけ、青年に体を寄せる。

「私はこれを持たない。」

「誰にも渡さない。」

「もし渡したいなら……」

「ここに……私と一緒に残って……」

「お願いです。」

…

「もう……だめだ……」青年が軽く首を振る。

「これが……私が払う代償だ……」

「だが……もし彼の言葉通りなら……」

「きっと……これが必然なんだ……」

…

「ハルが生きている限り……」

「必ず……遠くない日に……」

「あの少年が……お前を補ってくれる……」

「ハヤサキ。」

…

カツン……

.........................................................................

ガバッ!

頭の中で、映像が乱れながら駆け巡る。

周囲は今や普通の民家で、

家具があちこちに倒れ、無数の破片が散らばっている。

あの音が頭の中で絶えず響き、

目の前の景色が時折ぼやける。

…

コツ……コツ……

「目が覚めたか?」

突然、耳障りな声が近くで響く。

人影が徐々に目の前に近づいてくる。

水のボトルを差し出し、奇妙なほど見覚えのある目をしている。

まるで、その人が……

…

「イカリ様……」

一瞬、その人の姿が重なる。

無理だとわかっていても、唇が反射的に動く。

もしかして……

…

「十分休めたか?」

「終わったなら、戻った方がいい。」

「この場所には何かおかしいものがある。」

「これ以上深入りすると……」

私は話し続ける影を必死に見つめようとする。

イカリ様の姿が徐々に薄れ、残ったのは、

嬢様の飼い犬にすぎなかった。

…

バッ!

そのまま、私は奴の手から水のボトルを振り払った。

「私たちが親しいかのようにするな。」

「結局、お前も奴らに仕える卑しい人間に過ぎない。」

「知っていることはただ奪い尽くすことだけ。」

「そして後から高尚な顔をして、自分の罪に理由をこじつける。」

「世間の前で無意味な糾弾演説を繰り広げる。」

…

「大丈夫か……」

「もしかして……俺たちは……」

…

私は顔をしかめ、奴を睨みつける。

「答えろ、トガミ・ハル。」

「お前もその惨めな人類の一人に過ぎないのか……」

「それとも、奴らとは違う道を選ぶのか?」

「結局、なぜ、ただの学生に過ぎないお前が戦場に飛び込んだ?」

…

…

奴はそのまま固まり、顔を伏せる。

「俺は……わからない。」

…

「なら、なぜお前はまだ……」

…

「でも……わからないからこそ……」

「俺が大切に思う人たちが、まだ後ろにいるから……」

「だから……何があっても……」

「俺にできることは……」

「ただ前へ進むことだけだ。」

奴が突然背筋を伸ばして私を真っ直ぐ見る。

その目は……なぜ……

なぜ……あんなに似ているんだ?

…

…

「では、問う。」

「もし……人類全体を裏切ってでも……」

「お前が大切に思う一人を救うために……」

「お前はそれをやるか?」

「悪魔と天使の狭間で……」

「この世界で何になるつもりだ?」

「トガミ・ハル。」

…

「……」奴は再び沈黙し、体を動かさない。

だが今回は、視線が変わらなかった。

まだ……希望はあるのかもしれない。

…

よろっ……

私は体を起こし、外の方へ目を向ける。

「今のところは、認めてやる。」

「次に答えろ。」

「そして今は……」

「すぐに処理しなければならないものがある。」

次の答え次第で、

この槍はお前の頭を貫くか、それとも最後までお前についていくかだ。

…

「待ってくれ。」奴が手を伸ばそうとする。

「さっき目が覚めたばかりだろ。」

「無理は……」

…

カツン……

体はそれをよく知っている。今の私にはほとんど何もできない。

だが、このまま放置すれば嬢様がまた危険にさらされる。

それなら……

…

「よく聞け、そこのお前。」私は霧の方を指差す。

「霧の最深部、まさに私たちが近づこうとしていた地点に、

生きている人間など誰もいない。

あるのは、人魚どもが用意した高周波衝撃波発信機だけだ。

あれがある限り……

この地域では、音も、電子機器も、武器も、通信も……

ほとんどが無力化される。

近づくほど周波数が強くなる。

人魚どもでさえ、特別な装備なしでは近づかない。」

…

「待て。」奴が目を丸くして私を見る。

「何を言ってるんだ?

どうしてそんなことを知ってる?」

…

ふんっ……

再び力が失われ、視界がぼやけていく。

「そんなことが今さら重要か?」

「よく聞け。」

「あの装置がある限り……

お前たちは動けない。

何も聞こえず、何も見えない。

地面は徐々に侵食され……

遅かれ早かれ、ここにいる者はすべてあの魚の餌になる。」

…

「だが、あの装置に近づくのは……ほぼ不可能だ……」

「音の周波数以外にも……

怪獣があの辺りをうろつき……

人魚の見張りもいる……」

「だが……」

「それは……」

「普通の者たちにとっての話だ……」

…

ドサッ!

言い終える前に、体が支えきれなくなった。

ここまで持たせただけで、十分頑張った。

普通なら……

…

タッ、タッ……タッ……

「大丈夫だ……頑張ってくれ。」

「必ずここから連れていく。」

奴の影が視界の中でぼんやりと揺れる。

…

もういい。私のことなど放っておけ。

どうか、もう一度見せてくれ。

常識を打ち砕くあの稲妻を。

あの光を、もう一度見せてくれ。

竜の最後の末裔よ。




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